水芦光子の原作を三隅研次が監督。
三隅監督にこんな女一代記もの?があったとは知らなかった。
石川県の金箔屋に嫁入りした妙子(若尾文子:美!)は
先代が亡くなった後もその妾を平気で出入りさせている
旧家の常識に唖然とするが
婚礼まもなく
夫(福田豊士)と女中のせい(中村玉緒)の「現場」を目撃して
ショックを受ける。
姑も半ば黙認状態で、
しかも相手は妊娠していることを知って絶望!
妻妾同居の奇妙な物語の始まりです・・・
憎いはずの妾に
「お前、いい子を産みなさい」などと、
聖女のような顔で言ってしまう
文子様の本心がまったく謎なところがこの作品のミソです。
(ここで ムカムカする女性は何万人も存在すると思います!)
返す玉緒も玉緒で、
「私は奥様が好きです。旦那様よりもっと好きです。
ずっとお側にいさせていただきたいです」
などと言うじゃありませんか!!
(筆者のムカムカここで大爆発!!)
しかしそのやりとりの後、庭先に気味の悪い蛇が出現するところから
美しい文子様の心中にも魔物が棲んでいることを暗示させます・・
図々しく、ねっちり、しぶとい妾を
中村玉緒が好演しています。
さすが鴈治郎の娘ですね。
ぼんやりして見える妙子(若尾)とは対照的に
踏まれても生えて来る雑草のように
生き延びるための知恵に長けてると申しますか
生命力があるといいますか・・
美人じゃないけど男好きがするっていうのかわかりませんが
したたかなようで良く気がつく働き者で・・・・・
情が深くじっとりと湿った女なんですね。
せいの子が事故で亡くなった折、
遠くから眺めている妙子の口元に浮かぶ
微笑は、劇中で歌われる
「人の心はケンケン ケモノであったとさ~~・・・♪」
という物騒な子守唄を思い出しぞっとするシーンです。
この曖昧な表情はさすが若尾文子!
店の元従業員で後に成功する天知茂は
妙子に思いを寄せながらもせいの世話もするなど、
貧乏からたたき上がっただけあってフクザツな男です。
こういう風に
登場人物全員、ひとくせあると申しましょうか
ただの善人ではないことを見せるところが
この作品の深みというか、いやらしさだと思いました。
舞台は冬の金沢。大雪の日に人の死を重ねることによって
ドラマチックな効果を生んでいますが
なんで男はこんなに勝手なんだ!と筆者終始ムカムカ(爆)
女も女だし、許すからいけないのだ!と激昂!
しかし三人はしっかりと妙な絆で結ばれているような風情なのが
大人の事情といいますか
私のような世間知らずの子供(嘘)には理解しがたい、深いところだと思いました。
あれこれあった挙句、み~んな死んでしまって
最後に残ったのは妙子。
あまりメジャーではない作品ですが、
若尾文子は終始着物姿。
透き通るような白い肌にぷっくり唇でこのうえなく美しいから若尾マニア必見!
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