前回Shildon – Newport電化路線の記事で触れた、Newcastle近郊電車の話。
1904年に、NE鉄道がNewcastle近郊路線を600V第三軌条方式で電化し、電車を新造して近郊輸送を開始。切っ掛けは、Newcastleトラムが郊外路線を開業し、近郊区間の蒸機列車から通勤客をごっそり奪ったため。Tyne川北岸河口までの路線と、High Level Bridgeを渡って南岸河口までの路線を運行。川沿いに多数の港湾、造船所、工場があり、思惑通り、トラムから通勤客を奪い返すことが出来た。
https://www.lner.info/locos/Electric/ner_tyneside.php
英国の鉄道情報はなかなか日本に紹介されないが、近くに住み着いたお陰で、好ましいスタイルの木造ダブルルーフ電車の存在を知ることが出来た。増備車は丸屋根に変更。荷物電車だけOOでキットが出ているらしい。
因みに、同時期にLiverpool近郊で運行を始めたMersey Railwayにも、木造ダブルルーフ電車が居た。個人的にはこっちの方が好み。
https://www.emus.co.uk/zone/mersey/mersey.htm
LNERに統合後も電車運転は継続され、1934年に食パン顔の鋼製連接車が導入された。わざわざ連接車にするか?
https://www.lner.info/locos/Electric/lner_tyneside.php
Newcastle駅東側の、今は駐車場になっているスペースに、3面6線の電車専用着発ホームと1面の荷物電車ホームがあった。その電車ホームから、列車線を横断して各方面に電車を走らせるための分岐群がこちら↓。左方向はHigh Level Bridgeに繋がる。規格外の分岐、クロスを大量に敷設。ここまでやるか英国人。
上写真はNewcastle Castle屋上から撮影。現在の姿がググル地図で見られる。LNERの連接電車は、既に国鉄標準仕様の外開き扉電車に置き換えられている。
1960年以降、地域産業の衰退と共に沿線の工場群は閉じられ、通勤需要も激減。車両、設備の老朽化により1967年に電車運行は廃止され、ローカルDCに置き換えられた。Newcastle駅の電車ホームは潰され、鬼線路も極普通の配線になってしまった。
近郊電車路線は1980年に直流1500V架線電化のメトロ線として再編復活。地下線で市内に乗り入れ、Queen Elizabeth橋でTyne川を横断。空港やSunderlandにも延長されて便利になった。廃線跡を利用してDurhamまで延伸する計画もあるが、具体化していない。