水産北海道ブログ

北の漁業と漁協がわかる情報満載です

外国人労働力に支えられる日本漁業の現状と方向性

2015-05-15 15:57:45 | ニュース

 漁業における担い手、乗組員不足が深刻化する中で、外国人漁業技能実習制度の活用が進んでおり、制度の拡充を機に新たなニーズも表面化している。
 人口の少子高齢化に伴う日本の漁業および労働市場の構造変化を基礎に、外国人技能実習制度の形成過程から現在までをとらえ、課題と方向性を分析した『外国人労働力に支えられた日本漁業の現実と課題―技能実習制度の運用と展開に必要な視点-』(佐々木貴文・三輪千年・堀口健治)が「東京振興」第568号として発行された。海外で操業する漁船に外国人を乗船させる「漁船マルシップ」方式からパイロット事業を経て2010年に法改正によって本格実施された「漁業技能実習制度」。現在は毎年300人を受け入れ、沿岸・沖合漁業に約900人の技能実習生が従事している。これに遠洋における外国人漁船員を含め、年間3千人~4千人の外国人が従事し日本漁業を支えているという。
 著者たちは、すでに産業を支える水準まで達している外国人労働力の実態を踏まえ、今後の議論の方向性として人数を制限して就労ビザを単純労働者に発給する制度を新規導入するか、現状の技能実習制度をベースとした拡充という二つの選択を問う。どうも政府の意向や業界の要望では後者の方向に行くようである。
 北海道の沿岸漁業においても法務省・厚労省が明らかにした制度見直しの枠組みに沿って新たな漁業技能実習生の受け入れを検討している。全国的にはすでに巻き網、イカ釣り、かに・えびかご、まぐろはえ縄を対象に13漁協が監理団体として実習生を受け入れている。
 北海道で要望の高い漁業はイカ釣りで、業界団体が希望調査を実施したところ、41隻・61名ものニーズがあった。このうち、漁協に未加入あるいは兼業船を除く21隻・27名が制度上問題のないケースとされる。近く説明会を開き、それぞれの漁協が監理団体として登録するかどうかの可否を判断してもらうことになっている。
 国の拡充策は、実習期間の延長、人数枠の倍増、対象職種の拡充(複数職種の同時実習)とされ、2015年度中に新制度への移行を表明している。具体的な内容が不透明な中、新制度への移行前夜の状況をこの論考はリアルに伝えている。すでに「実習生の雇用は、人件費の削減より労働力の確保が重要な目的」とされ、韓国や台湾との競争が激化する中、「選ばれる日本」をめざす漁業における労働力政策の視点が求められているようだ。

(写真は、三輪千年氏)

食加研が研究成果発表会 魚介風味の「チルドポテト」など試食、市場調査も

2015-05-15 06:51:14 | ニュース

 道総研の食品加工研究センターは14日、東京ドームホテル札幌で「27年度研究成果発表会」を開き、これまでできなかった試食、市場調査の環境を整え、イカやサケを使ったペーストで魚介風味を出した「チルドポテト」などを参加者に提供し好評を博した。成果発表会は、口頭による研究発表をはじめ、ホッケの高品質なフィレー、チーズホエイで臭いを消す技術(ホエイホッケ)などのポスター展示、魚醤やサケ節の商品展示も行われた。

道食品産業協議会 新会長に松永日生バイオ社長、田中専務退任

2015-05-15 06:16:17 | ニュース

 (一社)道食品産業協議会の平成27年度定時社員総会が13日午後3時から札幌市かでる2・7で開かれ、26年度事業報告・収支決算、定款の変更などを原案通り承認したほか、任期満了に伴う役員改選を行い、郷和平会長が退任し日生バイオの松永政司社長が新しい会長に就任し、田中富重専務が退任し、後任に道経済部出身の矢倉武志氏(6月1日就任)を選任した。

 役員改選では、19人の理事が選出され、会長、副会長3名、専務理事を互選した。新会長に 就任した松永社長は「食の安全・安心が第一で、高付加価値化、6次産業化をめざしたい。高橋知事が提唱する1,000億円の食品輸出を含め、全面的に道とタッグを組んでやりたい。また食関連の団体と連携し、協調していく。何よりも当協議会の足腰を強くし、会員数を増やし事務局体制も強化したい」と抱負を述べた。
 退任した田中専務は道立水産試験場出身で「20年近く、会員の皆さんに支えていただき、環境は激変したが、次の体制に引き継ぐことができた。長い間の協力に感謝したい」と語った。

日ロサケ・マス交渉スタート 厳しい環境での操業条件協議

2015-05-12 06:13:25 | ニュース
 水産庁によると、5月14日(木)からロシア200海里内の日本漁船によるサケ・マス流し網漁業の操業条件を決める「ロシア連邦の200海里水域における日本国の漁船によるロシア系さけ・ますの2015年における漁獲に関する日ロ政府間協議」がモスクワで開催される。
 日本側は遠藤久水産庁資源管理部審議官を団長に外務省、水産庁、道庁、出漁団体、ロシア側はバンドゥーリン連邦漁業庁科学教育局長を団長に外務省、連邦漁業庁、連邦保安庁国境警備隊らの関係者が出席する。
 昨年の交渉は、4月21日~25日モスクワで開かれ、漁獲割当量6630トン、うりベニザケ2886トン、シロザケ3485トンを確保した。出漁隻数は38隻(小型船20隻、中型船18隻)、1隻当たりの漁獲割当量は小型19トン型150トン、同29トン型164トン、中型190トンとなっており、入漁料は約20億円だった。操業期間は6月1日~7月31日までと前年解禁日(5月上旬)より遅くなった。
 今年の交渉をめぐっては、ロシア連邦議会下院でサケ・マス流し網の禁止法案が審議中で、今後の協定の枠組みへの影響が心配されている。ロシア側は流し網は禁止するが他の漁法で獲るのは可能としており、ただちに日ロのサケ・マス交渉を廃止するといった意向は持っていないと業界では見ている。今回の交渉期限は一応5月22日(金)までとされ、出漁日の関係から早期妥結が求められる。

2015年『水産北海道』5月号 TPP合意前夜の北海道漁業

2015-05-10 10:56:03 | 月刊水産北海道

 今月の表紙は、海明けとともスタートした北見管内の毛ガニ漁。漁獲、価格が好調で、被写体となった沙留漁協では、丁寧な処置が流通の評価につながり「海明け一番がに」のブランドで大手スーパーの北海道企画のメイン商材として活用されている。
 さて、貿易自由化を飛躍的に進化するTPP交渉は、日米二国間協議が成立の焦点となっており、断続的な交渉が続いている。日米の大筋合意が近いとの流れが一層強まる中で、全漁連は水産物への影響を改めて4,600億円とする試算を発表した。
 その根拠が、交渉妥結により関税率がゼロになり、なおかつ牛肉・豚肉の関税が20%下がった場合のシミュレーションで、日本漁業の年間生産額1兆4,000億円の約3分の1に相当するというもの。これ以前にTPP交渉に日本が参加した時点で、水産庁は関税の即時撤廃による水産物への影響を2,500億円としていた。全漁連は消費市場における魚と魚の置き換えが大幅に進むと予想し、2,100億円を影響額に上乗せした。
 残念ながら全漁連の試算に対する反響は少なかった。水産ジャーナリズムは別として一般マスコミではほとんど黙殺されたようだ。実は水産物の貿易自由化の意味については、国民への適確な情報提供が不足していることが改めて印象づけられる結果となった。
 絶好調が続いてきたホタテ漁業に大きな暗雲が垂れ込めてきた。北海道新聞がGW中の5月2日朝刊で「オホーツク沿岸 冬の大しけ ホタテ直撃」という記事を1面で大きく報じたからだ。昨年から今年にかけての低気圧に伴う大しけで、オホーツク海域のホタテ漁場に被害が出て、水揚げ計画が当初に比べ2割~5割も減少するという。センセーショナルな写真と記事で「ホタテバブル」にショックを与えた。
 関係者に聞くと、ホタテ漁場の被害は現在調査中の漁協も多く、道漁連や道庁の聞き取りも5月いっぱいでまとまる見込み。かつて平成16年の低気圧被害も回復に3年かかった経緯を考えると、減産が数年続くとの予想も出ている。
 5月号の主要記事では、系統団体の26年度概況と27年度計画、宗谷・留萌管内の漁協販売取扱高、水産基盤整備など公共事業の動向、旭川での漁協合同即売会、期待されるマサバの資源・流通事情、毛ガニかご漁漁獲状況など、面白い読み物満載、お勧めです。