SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

膵癌切除後の補助化学療法

2005-06-08 | 治療
 2005年5月に開催されたASCO(米国臨床腫瘍学会)において、ドイツとオーストリアの88施設の研究グループから、膵癌術後におけるGemcitabine投与の有効性を示唆する発表がありました。現在研究が進行中のデータですが、少し詳しく内容をご紹介したいと思います。 膵癌切除後にGemcitabineを1000mg/m2 Day1,8,15に投与し、4週間毎に6ヶ月間投与した群(n=179)と、非投与群(n=177)とに無作為に振り分けた大規模なランダム化比較試験(第3相試験)で、無再発生存期間はGem群14.2ヶ月、非投与群7.5ヶ月と前者で有意に延長した、というものです。Gem群の副作用の頻度が低いことも示されています。しかし、生存率では両群に差がほとんど無いことから本当にGemが術後の補助化学療法として有効であると断言することはできない内容です。またGem群の無再発生存期間の14.2ヶ月という数字は、私たち国立がんセンター東病院の最近の切除例とほぼ同程度で、再発までの期間を著明に延長したとはとてもいえない数字です。恐らく、Gemcitabineによる補助化学療法はわずかに膵癌術後の生存期間を延長する可能性はあると思いますが、生存期間を大幅に延長する可能性は低そうです。いずれにしても来年のASCOでの追加報告を楽しみにしたいと思います。