SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

新臨床研修制度での研修病院

2006-05-27 | 雑感
 新臨床研修制度のもとで、実際に新人医師はどこの病院で研修しているのでしょうか?今年4月から研修を開始した新人医師の進路が千葉大の同窓会通信に掲載されていました。

 千葉大の場合、かなり多くの卒業生が都内の病院で研修をしていました。実際の人数は、東京都33人、千葉大以外の千葉県26人、千葉大20人、神奈川県6人、茨城県2人、栃木県1人、東北3人、中国四国1人、九州1人で、東海・近畿・北海道は0でした。もともと千葉大は都内出身者または都内の高校の卒業生が多いのも影響していると思います。私が卒業した頃は80%以上が千葉大で研修したのと比べると隔世の感があります。このうち何人が外科に入るのでしょか?小児科や産婦人科だけでなく、外科も若手医師にとって魅力的な職場に変わっていかないと近い将来に若手外科医が激減する可能性があると思います。

新臨床研修制度について

2006-05-15 | 雑感
 4月中旬に大学の同級生6人で同窓会をしました。その構成は内科2人、外科2人、耳鼻科2人で、耳鼻科の2人は開業しています。その時、現在の新しい臨床研修制度も話題になりました。

 現在の臨床研修制度の問題点としては、大学病院の研修医の数が地方大学を中心として激減したこと、産婦人科・小児科の入局者が減少したことなどが挙げられます。人材不足で逼迫した大学の医局は地方の一般病院から医師を引き上げるため、地域医療が崩壊の危機に瀕しているところもあると報道されています。しかし、これまで安月給かつ劣悪な労働環境で多くの研修医を雇っていた大学病院にも問題があったことは間違いありません。新臨床研修制度により研修医の労働環境が改善したメリットは十分あったと思います。大学の研修医の給与も一般病院の研修医の給与と同程度とし、特に産婦人科と小児科ではなんとかして労働環境を改善しなければこの傾向は今後も当分変わらないと思います。それだけでなく、高いレベルの医療と魅力的な研修システムを提案することも極めて重要と思われます。

日本肝胆膵外科学会

2006-05-14 | 学会
 5月11-12日と日本肝胆膵外科学会に参加しました。5月11日は特別講演、膵腫瘍に関するセミナー、ポスター発表、プレナリー(優秀演題)発表、膵消化管吻合についてのワークショップを聞き、5月12日は肝内胆管癌についてのワークショップ、膵癌に対する化学療法のセミナー、ポスター発表、膵臓外科の歴史に関する講演、膵癌に対する外科治療の発表などを聞きました。

 私が聞いた演題の中で最も興味深かった発表は、従来抗がん剤が効きにくいとされている肝内胆管癌も新しい抗がん剤やその併用療法により効果が認められたという発表です。ただし少ない症例の報告でしたので、今後は科学的な無作為化比較試験で肝内胆管癌に対する抗がん剤の有用性を検証する必要があると感じました。

 私はステージ4a膵癌に対する外科治療成績について発表しました。その発表の要点は、ぎりぎり手術可能な段階であるステージ4a膵癌に対して拡大リンパ節郭清や門脈合併切除などの拡大手術や術中放射線治療を施行しても、生存率は改善されなかったというものです。結局、手術の工夫だけでは進行膵癌には太刀打ちできません。膵癌の治療成績を向上するためには、新たな化学療法(+放射線治療)を手術に併用することが絶対に必要になってくると思います。