SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

十二指腸腺腫

2007-05-31 | 治療
 皇太子さまが十二指腸腺腫の手術のために東大病院に入院するそうです。

 十二指腸といっても第1部から第4部まで25-30cm もの長さがありますので、ポリープがどこにできたのかはわかりません。報道では十二指腸ポリープとしては珍しい位置とのことでした。

 一般的に、十二指腸内で腺腫が多いのは乳頭部です。十二指腸乳頭部にはがんも多いのですが、腺腫という良性の腫瘍もかなり多く発見されます。この乳頭部腫瘍は良悪性の診断が難しいために、治療方針を決めるのが大変困難です。例えば、腫瘍の大部分は腺腫で、一部だけにがんが存在する場合を腺腫内がんといいますが、この腺腫内がんを正確に診断することは極めて困難です。

 今回皇太子さまが受ける予定の内視鏡的切除は、小さな十二指腸良性腫瘍に対してはかなり一般的に行われる治療法です。しかし、もう少し大きな十二指腸腺腫の場合には、開腹手術もしばしば行われます。反対に、非常に小さな腫瘍で悪性の可能性が全くなければ経過観察となります。

浅野武秀教授就任祝賀会

2007-05-30 | 雑感
 2007年5月26日に浅野武秀先生が帝京大学外科教授に就任した祝賀会に参加してきました。

 浅野先生は既に何度かこのブログにも登場していますが、私が千葉大学第2外科時代に研究面で直接毎日のように指導していただいた先生です。当時浅野先生は千葉大学第2外科の肝胆膵外科グループのリーダーであるとともに、通称「浅野ラットスクール」という研究グループで実験の指導も精力的に行っていました。ですから私も浅野先生とヒトの膵切除と肝切除も行いましたが、それ以上にブタ・イヌの肝臓移植や膵臓移植を多く行ったと思います。

 優れた医師であり研究者・教育者である浅野先生が、帝京大学という大きな総合大学の外科教授に就任することになり弟子としては大変うれしく思っています。

大腸がんに対する新規抗がん剤のアバスチンが発売されます

2007-05-29 | 治療
 大腸がん対する新しい分子標的薬剤であるアバスチンがいよいよ発売されます。

 アバスチンは本年4月18日に大腸がんの治療薬として既に認可されています。国内での少数例での臨床試験では認められませんでしたが、海外の多数例での臨床試験ではアバスチンによる消化管穿孔と消化管出血いう重篤な副作用が一定の頻度で認められました。従って、この薬剤の使用に当たっては、こうした重篤な合併症の発生を常に念頭において使用する必要があります。

各医学部に5人の地域定員枠

2007-05-13 | 雑感
 参議院選挙をにらんで地方の医師不足を解消する対策として、各医学部に5人の地域定員枠を設ける案が浮上しているそうです。

 しかし、現在の医師国家試験合格者数は7500-8000人ですから、地域定員枠の医師が全国で250人程度増えただけでは焼け石に水であることは明らかです。これらの地域枠の医師が地域で役立つ医師になるためには、卒業後にきちんとした教育を受ける必要がありますから、少なくとも最初の5年間程度は地方でも大きな病院で研修する必要があります。そうすると本当に医療過疎地で活躍できる期間はかなり限られます。ですから、もう少し抜本的に医師を増やす方策が必要だと思います。

進行膵がんに対するゲムシタビン+エルロチニブの効果

2007-05-12 | 治療
 2007年4月23日付けのJournal of Clinical Oncology電子版に、切除不可能な進行膵がんに対するゲムシタビン+エルロチニブとゲムシタビン+偽薬の国際的な第3相無作為化比較試験の結果が発表されました。

 結論からいえば、ゲムシタビン+エルロチニブ群の1年生存率は23%で、ゲムシタビン群の1年生存率は17%、ゲムシタビン+エルロチニブ群の50%生存期間は6.24月に対して、ゲムシタビン群の50%生存期間は5.91月であり、ゲムシタビン+エルロチニブ群が若干ではありますが有意に良好でした。ただし両群の生存期間の差はわずか1-2週間程度しかありません。しかし、これまでゲムシタビン単独治療をしのぐ治療法が無かったことを考えれば、この結果は小さいながらも確実な一歩といえるのかもしれません。