SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

膵癌診療ガイドライン

2017-07-23 | 治療
京都の膵臓学会の時に、膵癌診療ガイドライン改訂委員会があり参加しました。今回は2019年の出版を目指した改訂です。

膵癌の診療も日進月歩ですので、3年で標準治療もかなり変わります。外科手術はそれほど変わりませんが、化学療法の進歩が早いので、化学療法と手術を組み合わせた治療には大きな変化があります。例えば化学療法をしてから手術をする、術前化学療法は最近増えています。そうした、新しい治療法の変化に対応した診療ガイドラインを目指しているのです。

切除不能膵癌に対するコンバージョンサージャリー

2017-07-22 | 治療
2017年7月22日に金沢で開催された日本消化器外科学会で切除不能膵癌に対するコンバージョンサージャリーについてのセッションの司会をしました。

コンバージョンサージャリーとは、当初は切除不能であったがんが化学療法などにより縮小して切除可能となった場合に根治を目指して行う手術の事です。膵癌に対する最近の化学療法の進歩により、切除不能から切除可能になる人が増えました。胆道癌などでも時には切除可能になることがあります。

しかし、治療期間、放射線を加えた方が良いのかどうか、どのレベルまで縮小したら手術をすべきなのか、どのタイミングで手術するのがベストなのかなど不明なことが非常に多いのです。今後もさらに議論をして、疑問を解決していかなければならないと思います。

膵管内乳頭粘液性腫瘍に対する診断と治療

2017-07-14 | 治療
2017年7月14日に京都で開催された日本膵臓学会で膵管内乳頭粘液性腫瘍に対する診断と治療のセッションの司会をしました。

膵管内乳頭粘液性腫瘍は膵癌に比べるとおとなしい腫瘍ですが、進行して大きな浸潤がんになってしまうと膵癌と同じように肝臓や腹膜に転移して治療が困難になります。

ですから、大きな浸潤がんになる前、つまり非浸潤癌や小さな浸潤癌の段階で切除することがベストです。そうすれば高率に完全治癒します。浸潤癌の場合でも切除により約半分の人は治癒します。

第80回千葉県外科医会で膵癌の外科治療の進歩について講演

2017-07-03 | 治療
2017年7月1日千葉市で開催された第80回千葉県外科医会で「膵癌に対する外科治療の進歩」について講演しました。東海大学病院の膵癌切除例400例以上のデータを基にして、血管合併切除の効果、切除可能境界(borderline resectable)膵癌の治療の難しさ、そして最近増えている化学療法著効後のコンバージョン手術について述べました。

今回検討してみると、門脈だけに浸潤が疑われたBR-PV膵癌は動脈接触の疑われるBR-A膵癌よりも生存率は有意に良好ではあるのですが、90%以上に門脈合併切除が必要ですし、R0切除率も約60%程度と低いためもあって、必ずしも十分に良好とはいえませんでした。

神奈川西部NETフォーラム

2017-07-03 | 学会
先週金曜日に厚木で「神奈川西部NETフォーラム」という勉強会を行いました。NETは、神経内分泌腫瘍のことです。今回は講師として国立がん研究センター東病院肝胆膵内科医長の池田公史先生と北里大学消化器内科教授の木田光広先生の二人をお招きしました。

池田先生は、最近進歩著しい神経内分泌腫瘍の薬物療法について豊富な経験に基づいて大変分かりやすく整理して解説されました。NETの治療薬には、エルロチニブやスーテントなどの分子標的薬、ソマトスタチンアナログ製剤、細胞障害性のSTZなどがあり使い分けには一定の基準がないのが現状です。

木田先生はNETの超音波内視鏡診断の最前線について画像を中心にして分かりやすく講演されました。特にNETのエラストグラフィという組織の硬さを示した画像は初めて見ました。大変刺激を受けた勉強会でした。