SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

GISTに対する薬剤スニチニブが保険承認されました

2008-06-23 | 治療
 消化管GIST腫瘍に関する発表が東葛地区消化器疾患研究会でも複数例ありました。私たちも手術することが多い腫瘍です。

 GISTとは、消化管壁内のCajar介在細胞という細胞由来の腫瘍です。日本では胃・十二指腸のGISTが多いと思いますが、欧米では虫垂・小腸のGISTが多く報告されています。

 米国NCCNによるGISTの悪性(ハイリスク)の定義は、腫瘍径10cm以上、顕微鏡400倍50視野に10を越える核分裂像、または腫瘍径が5cmから10cmの間でかつ顕微鏡400倍50視野に5から10の核分裂像を認めるものです。

 GISTに対する治療法は、悪性が疑われれば原則として外科的切除です。しかし、2-3cm以下の小さな腫瘍は経過観察とすることもかなりあります。切除できない、あるいは切除したけれども完全切除ではなく腫瘍が遺残した場合などは、イマチニブ(グレベック)による薬物治療を行います。この薬は非常に良く効きます。しかし、イマチニブ抵抗性の場合、次ぎに使用する薬はありませんでした。2008年6月、GISTに対する新たな薬剤としてスニチニブが保険承認されました。

東葛地区消化器疾患研究会

2008-06-22 | 学会
 2008年6月21日に船橋市で東葛地区消化器疾患研究会が開催されました。私も研究会前半の一部の司会を担当しましたし、国立がんセンターの若い先生の発表が後半にありましたので結局最初から最後まで参加しました。

 この研究会には消化器内科医と消化器外科医が参加していましたので、討議にも内科の視点と外科の視点との違いが出て、楽しく聞くことができました。普段外科では見ることの少ない大変興味深い症例呈示もありました。例えば、若い患者さんの結核性腹膜炎などは、外科では通常見ることはありません。その他にも内容の充実した教育講演・特別講演もあり大変勉強にもなりましたので、次回の研究会にも是非参加したいと思いました。

肝内胆管がん

2008-06-21 | 治療
 肝内胆管がんは、日本の原発性肝がんの中で肝細胞がんに次いで2番目に多いがんで、原発性肝がんの約4%を占めています。肝内胆管がんは進行がんが多く、腹膜転移、リンパ節転移、肝内転移、血管浸潤などを高頻度に認めます。

 治療としては、切除可能であれば外科的切除を試みます。しかし、リンパ節転移や肝内転移を認める場合には、切除可能であっても極めて高率に再発しますので、最初から切除しないとする施設もあります。切除不可能である場合には、良い治療法がありません。胆道がんに準じてゲムシタビンによる抗がん剤治療が行われることがありますが、その効果ははっきりしていません。その他には動注療法、放射線療法なども試みられていますが科学的根拠のある有効な治療法はありません。

 以前私は、肝内胆管がんに関する論文を書いたことがあります。 Aggressive surgical resection for hilar-invasive and peripheral intrahepatic cholangiocarcinoma その中では、肝門型の肝内胆管がんは、肝臓の末梢にある末梢型肝内胆管がんよりも再発が多く予後が悪いことを報告しました。つい最近、肝内胆管がんに関する別の論文を書きましたので、雑誌に載りましたらまたご紹介したいと思います。

国立がんセンター東病院が全面電子カルテ化

2008-06-19 | 雑感
 2008年6月より国立がんセンター東病院では全面電子カルテ化となりました。従来の紙カルテはほとんど使用しなくなります。

 これまでも検査や注射、診察の予約などのオーダーはコンピュータ入力でしたが、これからは医療業務全てが電子カルテ化します。ただし、患者さんへのインフォームドコンセントや手術所見などはこれまで通り手書きで作成し、スキャナーで取り込むことになります。病棟にも多数のコンピュータ端末が置かれて、医師も看護師も薬剤師も検査技師も全てコンピュータと向き合いながら仕事をすることになります。

ブリガム・アンド・ウィメンズ(Brigham and Women's)病院

2008-06-18 | 雑感
 10年前、私はボストンにあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham And Women's Hospital)(以下ブリガム病院)に留学しました。この病院はハーバード大学の本院のような位置づけの病院です。私の後輩は、ボストン留学中に奥さんがこの病院で出産しました。

 ブリガム病院のベッド数は約750床ですが、医師・レジデントが3000人、研究者が1000人、看護師が2800人勤務しています。この数は日本の常識では考えられない人数です。例えば国立がんセンター東病院(ベッド数約450床)の医師・レジデント数約150人は日本としては多い方だと思いますが、ブリガム病院と比較すると10分の1以下です。ブリガム病院の研究者と看護師の数も桁違いに多くて比較になりません。さらにブリガム病院では多数のボランティアや制服姿の警護チームなども活発に活動しています。もちろん医療従事者が多ければいい病院というものではありませんが・・・こんなところにも先進国で最低レベルである日本の医師数が関係しているのかもしれません。