SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

注目の新抗がん剤(大腸がんと膵がん)

2006-02-24 | 治療
 大腸がんに対して、現在最も注目されている抗がん剤といえばBevacizumab(商品名アバスチン)です。この薬は血管内皮増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体製剤で、VEGFの働きを抑制することによりがんの増殖を抑制する働きがあります。2004年6月号のNew England Journal of Medicineに、転移を有する大腸がんを2群に分け1群は5-FU(5-フルオロウラシル)+LV(ロイコボリン)+CPT-11(塩酸イリノテカン)の3剤で治療し、もう1群は上記3剤にBevacizumab(アバスチン5mg/kg)を加えて生存期間を比較した大規模な無作為比較試験のデータが報告され、前者の50%生存期間15.6ヶ月に対してBevacizumabを加えた群では50%生存期間が20.3ヶ月と約5ヶ月間の延長を認めました。この成績から欧米では5-FU+LV+CPT-11+Bevacizumabまたは5-FU+LV+オキサリプラチン+Bevacizumabが大腸癌に対するスタンダードな治療法となっています。残念ながら日本では健康保険でBevacizumabの使用がまだ認められていませんので、一般には使用されていません。Bevacizumabは極めて高価で、1ヶ月100万円以上かかると言われていますので、健康保険というシステムで支払うこと自体が最適かどうかも議論のあるところです。 2005年11月のJournal of clinical oncologyに、転移性進行膵がんに対する、Gemcitabine(1000mg/m2)+ Bevacizumab (10mg/kg)の効果を検討した第2相試験の成績が報告されました。その結果は、有効(PR)が21%、不変(NC)が46%、50%生存期間は8.8ヶ月と極めて良好なものでした。従って、Bevacizumabは、今後の膵がんに対する化学療法および手術後の補助化学療法において極めて重要な薬剤になる可能性があると考えられます。