SURGERY NOW note

がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。

個人的2007年ニュース

2007-12-31 | 雑感
 今日で2007年も終わりです。そこで、2007年の私個人のニュースを考えてみました。

 一つめは、外科腫瘍学では最も権威のある米国医学雑誌Annals of Surgical Oncologyに膵管内乳頭粘液腫瘍 (intraductal papillary mucinous neoplasm) に関する論文が掲載されました。私は、膵管内乳頭粘液腫瘍に関しては1999年にAmerican Journal of Surgeryに論文を書いてから常に興味をもって研究してきましたので、今回の論文掲載は大変うれしく思っています。

 二つめは、早稲田大学国際情報通信研究科の河合先生、盛川先生と共著で「医学3Dコンテンツの最先端」というDVD付きの書籍をカットシステム社から出版しました。この書籍には株式会社フローベルのご協力により、映像を立体視できるプリズムも付属していますので、手術映像やCG動画も立体視することができます。多くの方のご協力で日本ではこれまでに無い画期的な本になったと思います。

 三つめは、月刊ニューメディアの天野氏と河合先生などと協力して「医学3Dコンテンツ研究会」を開催しました。この研究会の特別講演として東大薬学部の池谷先生に「脳の不思議」というタイトルで講演していただきました。

 その他にも膵がんに関する英語の論文が載りましたし、2008年に掲載予定となった膵充実性偽乳頭腫瘍 (solid pseudopapillary tumor) に関する論文もあります。また2007年には消化器外科ナーシングの医学用語の連載をしましたし、2008年には消化器外科ナーシングの医療系ニュースのコラムを書くことになり、既に2007年12月発売された1月号から始まっています。

 最後にニュースというより日常的なことですが、2007年に100例近い外科手術を術者または教育的な第1助手として行いましたが、手術後の入院死亡例が1例もなかったことは大変良かったと思います。来年もさらに手術件数は増えると思いますが、手術関連死亡の無いように努力したいと思います。

2007年サイエンス誌科学10大ニュースに海馬の研究

2007-12-28 | 雑感
 2007年12月米科学誌サイエンスは、今年の画期的な科学的成果「breakthrough of the year」を発表しました。注目のiPS細胞が2位でしたが、9位に脳の海馬が記憶と想像力に果たす役割の解明に関する研究が入っていました。海馬は記憶だけでなく想像力においても重要な役割を果たしているらしいのです。

 今年は脳研究者で特に海馬の専門家である池谷裕二先生と知り合いになる機会があり、そのお話と本から記憶に関する海馬の働きを初めて知りました。海馬は、新しくものごとを記憶する上で大変重要な働きをしています。一方、古い記憶は主に大脳皮質に蓄えられているそうです。

 記憶といえば昔こんなエピソードがありました。今は年のせいか全く物覚えの苦手な私も、中学生の頃は記憶力が結構良かったと思います。しかし、私が高校生(または大学生)になってから中学校の同窓会に行った時には既に中学時代の出来事の記憶はあまり残っていませんでした。ところが、中学時代は物覚えがあまり良くなくて勉強も苦手だった私の友人が同窓会に来ていて、中学時代の出来事をものすごく細かいところまで沢山覚えているのに本当にびっくりしたことがあります。つまり私の友人は、試験前などに新たに記憶することは苦手で勉強は不得意でしたが、一度記憶したことは長期間正確に蓄積することのできる優れた脳の持ち主だったのです。私は、新たに記憶することと古い記憶を保存することには、それぞれ別の部分の脳がかかわっていることを最近知り、なんとなく納得したのでした。

フィブリン糊でC型肝炎に感染

2007-12-16 | 雑感
 手術で使うフィブリン糊によってC型肝炎に感染した患者さんが、国などに対する損害賠償請求訴訟に加わったことを最近のニュースで知りました。読売新聞によると、これまで日本の外科手術で約7万9千人にフィブリン糊が使用されていて、それによるC型肝炎感染者が千人以上いるという推計もあるそうです。

 今回問題となっているフィブリン糊は旧ミドリ十字社(現在は会社を田辺三菱製薬が引き継いでいる)が発売したフィブリノゲン製剤で作られた非加熱製剤です。現在主に使用されているフィブリン糊(商品名ボルヒール、ベリプラスト)またはフィブリノーゲンを含んだシートであるタココンブ等は加熱処理・ウィルス除去膜により既知のウィルスは除去されているのでC型肝炎感染の報告はこれまで1例もありません。しかし、プリオンや未知のウィルスの感染は完全には否定できないとされています。私も千葉大病院勤務時にはベリプラスト・ボルヒールを使用していましたし、現在はタココンブをたまに使用しますので最初このニュースを見た時は「どきっ」としましたが、これらの製品の安全性を確認してほっとしました。

PCの指紋認証

2007-12-15 | 雑感
 みなさんの中でも指紋認証で起動する設定のPCをお使いの人がいると思います。私のノートPCの1台も指紋認証で起動する設定なのですが、広島の学会で何度やっても認証されずになかなかPCが起動しなかったことがあります。幸い約20回目目くらいでやっと認証されたのでPCが起動し何とか発表することができました。シンポジウムでの発表でしたのでかなり焦りました。その後も自宅で使っているとほとんど問題ないのですが、外に持って行くと調子が悪い傾向があります。持ち運ぶ時の振動などが原因なのでしょうか?今でも原因は不明です。

タケダヤングフォーラム

2007-12-11 | 雑感
 2007年12月9日タケダヤングフォーラムという講演会に行ってきました。講師は東大薬学部准教授の池谷裕二先生と東大医学部准教授の坂井克之先生でした。

 池谷先生は個人的にも面識がありますが、坂井先生は今回初めて知りました。今回の講演会で興味深かった内容の一つは、睡眠中に脳の神経細胞は覚醒時以上に活動していて、しかも夢の中では記憶した内容を20倍とか100倍のスピードで繰り返しているらしいということです。この早送りが記憶の定着に働いている可能性があるそうです。すなわち寝ることは学ぶことなのです。

 もう一つは直感についてです。直感とは感覚的に瞬時に物事を感じ取ることですが、その理由が説明できないことをいいます。直感は繰り返しの学習によって無意識に脳が活動して判断しているらしいのです。例えば羽生さんのような強い棋士になると直感で最善の手が瞬時にわかるそうですが、最善である理由は直ぐにはわからないことがあるそうです。直感は実力なのかもしれません。