中村敦夫さんの本を読んだ。
中村さんは、木枯し紋次郎で有名、俳優、小説家、報道キャスター、参議院議員などとして活躍した。
この本は、2011年4月の発行。2007年から同志社大学大学院で講義した内容をまとめたもの。
内容は、中村さんの見てきた自分の生きた時代と世界はどのようなものであったのか、その本質を明らかにしたいと思って書いたもの。
それは、近代社会の内実でもあり、「近代の終焉」にも行きつくものであった。
産業革命から始まった近代は、経済成長至上主義を掲げ、20世紀には爆発的な発展を遂げましたが、21世紀に入り急激な衰退の道を
歩んでいます。
この状況を人類を閉じ込めている「4面の壁」ととらえ、4つのテーマ「戦乱の拡大」「環境破壊」「人口爆発」「近代経済の崩壊」
として説明されました。
その結果の中村さんの答えは「貪欲と競争」から「小欲知足」への価値観の転換、「グローバリズム」から「ローカリズム」への
価値観の転換でした。
第1時限は、「時代と個人史」で中村さんの経歴等の紹介です。
ここには独特の経歴が書いてありました。中村さんは1940年の東京生まれ、しかし1944年に福島県に疎開、そのまま小中学校時代を
過ごし、地元の高校に入学するも、1年目に東京の受験校に転校。受験地獄と管理社会に組み込まれるのを嫌い、東京外国語大学マライ・
オランダ語学科に入学、しかし1960年大学を中退し新劇の劇団に入るため俳優座養成所研修生試験に合格。その後奨学金付き留学試験にも
合格し、1965年にはハワイ大学の研修に行きました。そのうち、1972年の「木枯し紋次郎」の話があり、一躍スターになったという
ことです。
その後小説家、報道キャスター、参議院議員などを経験しますが、国会議員になって様々な勉強をしたなかで、政治家として2つの基本的
認識が必要だと気づいたといいます。
1つ目は「地球・世界レベルの問題で、人類は今どういう状況にあるのかという正確な把握」、2つ目は「日本という国の本質は何か、
最重要課題は何かという理解」ということです。このような認識を今の政治家の人たちは持っているでしょうか、はなはだ疑問です。
第2時限から第5時限は、先の「4面の壁」の検討、第6時限、7時限は日本の現状、第8時限から第11時限までが、
これからを考えるために参考となる思想などが述べられています。
この中で、第8時限、シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」、第9時限「仏教とエコロジー」、
第11講、南方熊楠(みなみかたくまぐす)の生き方、が参考になりました。