郷が杜備忘録

旅行や読書と日々の行動の記録。
日常のできごとや思い出の写真が中心。 たまに旅行の記事も投稿します!

簡素なる国(中村敦夫著)

2022-08-27 | 読書

中村敦夫さんの本を読んだ。

中村さんは、木枯し紋次郎で有名、俳優、小説家、報道キャスター、参議院議員などとして活躍した。

この本は、2011年4月の発行。2007年から同志社大学大学院で講義した内容をまとめたもの。

内容は、中村さんの見てきた自分の生きた時代と世界はどのようなものであったのか、その本質を明らかにしたいと思って書いたもの。

それは、近代社会の内実でもあり、「近代の終焉」にも行きつくものであった。

産業革命から始まった近代は、経済成長至上主義を掲げ、20世紀には爆発的な発展を遂げましたが、21世紀に入り急激な衰退の道を

歩んでいます。

この状況を人類を閉じ込めている「4面の壁」ととらえ、4つのテーマ「戦乱の拡大」「環境破壊」「人口爆発」「近代経済の崩壊」

として説明されました。

その結果の中村さんの答えは「貪欲と競争」から「小欲知足」への価値観の転換、「グローバリズム」から「ローカリズム」への

価値観の転換でした。

第1時限は、「時代と個人史」で中村さんの経歴等の紹介です。

ここには独特の経歴が書いてありました。中村さんは1940年の東京生まれ、しかし1944年に福島県に疎開、そのまま小中学校時代を

過ごし、地元の高校に入学するも、1年目に東京の受験校に転校。受験地獄と管理社会に組み込まれるのを嫌い、東京外国語大学マライ・

オランダ語学科に入学、しかし1960年大学を中退し新劇の劇団に入るため俳優座養成所研修生試験に合格。その後奨学金付き留学試験にも

合格し、1965年にはハワイ大学の研修に行きました。そのうち、1972年の「木枯し紋次郎」の話があり、一躍スターになったという

ことです。

その後小説家、報道キャスター、参議院議員などを経験しますが、国会議員になって様々な勉強をしたなかで、政治家として2つの基本的

認識が必要だと気づいたといいます。

1つ目は「地球・世界レベルの問題で、人類は今どういう状況にあるのかという正確な把握」、2つ目は「日本という国の本質は何か、

最重要課題は何かという理解」ということです。このような認識を今の政治家の人たちは持っているでしょうか、はなはだ疑問です。

第2時限から第5時限は、先の「4面の壁」の検討、第6時限、7時限は日本の現状、第8時限から第11時限までが、

これからを考えるために参考となる思想などが述べられています。

この中で、第8時限、シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」、第9時限「仏教とエコロジー」、

第11講、南方熊楠(みなみかたくまぐす)の生き方、が参考になりました。

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旅する文学(静岡編)

2022-08-21 | 読書

このところ、夏の暑さとコロナの拡大で、ブログへの投稿も少なくなっている。

毎月10件を目安としていたのだが、先月書きかけの記事を投稿直前で誤って消してしまい、

気持ちが乗らなくなり落ち込んでいたためでもある。

また、コロナ感染者拡大のため外出も少なくなり、仕事と自宅往復ばかりであった。

そのため、題材に欠いていたので、朝日新聞土曜日の読書欄を参考にして、図書館から本を借りてみることにした。

第1回目は、4月号の記事から「旅する文学(静岡編)」ということで、本をピックアップした。

この記事は、文芸評論家の斎藤美奈子さんが書いていて、「物語の舞台や有名なシーンなどで知られる土地に焦点を当て、日本文学を旅する」ということであった。

静岡編で取り上げられていたのは、

1.金色夜叉(尾崎紅葉)

2.婦系図(おんなけいず)(泉鏡花)

3.伊豆の踊子(川端康成)

4.しろばんば(井上靖)

5.イニシエーション・ラブ(乾くるみ)

6.黄金夜界(橋本治)

であった。

とりあえず読んでみようと思い、1番と2番を借りてみた。

金色夜叉は、文庫本で上下の2分冊であった。こんなに量があるとは思わなかった。

前編、中編、後編、続編、続続、新続の6編からなっていて、有名な熱海の海岸の像の話は、

前編にあった。

この小説は、明治30年から読売新聞に掲載されたという。

したがって、フリガナはあるとしてもことばがわからず読みにくかった。あちらこちらを読んでみたが

読みにくさに降参。

泉鏡花の婦系図は、文庫本で1冊だが、中は前編と後編に分かれていた。

新聞の記事で知ったのだが、この小説は前歴スリのドイツ語翻訳官早瀬主税(ちから)が、恋人との仲を裂かれたことで、上流の者たちへの復讐を誓う物語ということであった。

こちらも明治41年からのやまと新聞に載ったという。こちらも明治時代の言葉なので、読みにくい。

静岡との関連は、ラストで静岡の名門一族当主との対決が市内の名所久能山で行われたという。

しろばんばは昔学校の教科書にあったような気がする。少し覚えているが、今後もう一度読んでみたい。

5番目、6番目の本にも挑戦してみたい。

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金融庁戦記(大鹿靖明著)

2022-08-13 | 読書

金融庁戦記を読んだ。

この本は、2021年10月の発刊。副題は「企業監視官・佐々木清隆の事件簿」である。

私がこの本に関心を持ったのは、古い朝日新聞を見ていて「企業監視20年」という大鹿氏が書いた連載記事を見たからである。

その後たまたま図書館に行ったらこの本があり手に取ったということである。

 

ここ最近政治の劣化が言われて久しかったが、あわせて経済界における劣化もすごく、大手の企業も続々不祥事が表面化している。

それらは、1990年代のバブル崩壊に始まり、不良債権の処分などから、企業の業績がおかしくなっていったのだと思う。

2009年のリーマンショックでも、日本は少なかったとはいえ影響を受け、その後も震災復興や災害対策にうろうろしているうちに、

経済は勢いを取り戻せず、落ち込んだままであった。

この間世界は大きく変化してゆき、デジタル化によりGAFAなどが大きな力を持ってきたなか、その変化に追いついていけなかったと思う。

その間をぬって新興企業や外国企業が侵出し、法律の隙間をぬっていろんな悪事を働いてきた。

そしてそれを防ぐべき、監査法人や社外取締役も役割を果たせなかったのではないかと思う。

そのような今までの事情を、東大を卒業して大蔵省に入省した佐々木清隆が内部事情を語ったものがこの本である。

 

佐々木氏の入省したのは1983年で、中曽根内閣で、蔵相は竹下登であった。配属は大蔵省銀行局調査課であった。

ちなみに前年の82年入省組は異色で、片山さつき氏や福田淳一氏、佐川宣寿氏がいたという。

佐々木氏は他の秀才とは違った経歴で、立教中から開成高校に入っていて、中学校でキリスト教や英語にの馴染み、ESS部で

海外生活にもあこがれていたという。

 

この本は、1983年頃から2021年のまでの金融関係の不祥事や事件について書かれていた。

私が働いていた時期とも重なり(金融関係ではありませんが)今まで詳しく知らなかった内実も知ることができ参考になった。

 

その中身というのは、大蔵省の接待汚職や外資のクレディ・スイスの暗躍、ヒルズ族の栄枯と鎮圧、監査法人の解体、租税回避地の

私書箱957号、東芝の不正会計、オリンパスの飛ばし、仮想通貨、スルガ銀行や山口FGの問題などいろいろあった。

それらを見てくるにやはりリーダーの姿勢、そしてそれを監視する部署の姿勢と全体を取り仕切る監督箇所や国の責任というのが

大きいと思った。

リーダーは嫌な声にも耳を傾けなければならないし、不正には厳然と対処しなければならない。

不正のごまかしをするとか、うその発言をするとか、諫言する部下を異動させるなどするのは、リーダーとしてやってはいけないことである。

そして、「頭が腐れば尻尾も腐る」といわれるような状況は早くに解消しないといけないと思っている。

 

最後に読書とは別だが、3日前に4回目のワクチンを受けてきた。もう受けたくはなかったが、これだけ拡大してくると心配になってきた。

次の日は副作用で熱も出て一日だるかった。こちらの感染症対策も3年目になるのでそろそろ落ち着いてもらいたいと切実に願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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