あるノート

段ボール箱から出てきた

四十年前のノート

数式のならんだ罫線枠をこえて

ところどころに赤丸

なんでこうなるの？の添え書き

若くてやさしかった先生の声が

頭の中にこだまする


ハミルトンの法則

ピタゴラスの定理

Ｘの二乗×Ｙの二乗イコール

答えは憧れ

甘酸っぱい教室の

未知の乳房と脚線を

頭の中で転がしていたあの日


忘れてしまった数式の中に

無垢をよみがえらそうとしても

もうもどれないと知る

深夜の片付け