こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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見えない壁

2013-01-09 23:39:24 | 訪問看護、緩和ケア
初回訪問の時に、いつもいつも受け入れてもらえるわけではありません。

「俺は騙されないぞ!」初回訪問の時にそう言った患者さんは、今は私たちを待っていてくれます。

けれど、そんなにうまくいくことばかりでもないのです。

ケアマネさんと初めて訪問して「こんにちは。はじめまして。」と言って挨拶をした時の彼女の表情に、強い拒否があるのを感じました。

「ナニシニキタノ?」そう言っているような空気が、彼女の周囲から感じられます。

表情を消して、一瞥すると視線を外して目を伏せてしまう・・。

質問には、ごく簡単にそっけなく答えてはくれますが、たぶん本当の苦しみはわからないように押し込んでいるのでしょう。

きっと本当は、痛みや息苦しさや、身の置き所のないだるさが体を押し包んでいるはずなのに、何かに対する怒りや絶望が彼女に強固な鎧を纏わせているようです。

「疲れるから、もういいから。何もして欲しいことはないの。次々いろんな人が来て、もういい加減にして・・」

サービスの始まりには、確かにいろんな人がやってきて契約やら説明やら、初回訪問やらと忙しくなります。
具合の悪いときのは、本当に鬱陶しくて辛いのだと思います。

それでも、ご家族からのご希望もあり、訪問看護が始まりました。

在宅療養を決意するまでに、どんな辛いことがあったのか、どんなひどい言葉を聞かされたのか・・
医療者への不信感は、関わった医療者の知らないところで、一人の患者さんの心を閉ざしてしまったようでした。
また、彼女の身に起きたそれまでの悲しみや不幸も、その心をいじめ続けてきたようでした。


私ができることは、ここに私たちがいることを伝えるしかありませんでした。

「嫌なことはしません。ただ週に一度だけご主人が安心するように、主治医の先生と見守らせてください。そしてもし、何かお手伝いすることがあったら、いつでも声をかけてくださいね。」

そう言って、失礼することにしました。

レスキューの薬さえ、もしかしたらこれからも拒否していくのかもしれません。


何もしてほしいことはないです。
ただ、夫がそばにいてくれれば、最後までそっとしておいてくれればいいです。
もう、何も必要としない。


でも、人生の終わりのわずかの時間、怒りや不信の中で過ごして欲しくはない・・
穏やかで、優しい時間の中で過ごして欲しい。

なるべくふたりの時間を邪魔することなく、苦痛を我慢することなく、心が安らぐ時間をもって欲しいなと思います。

今は、つかず離れづ見守るときだと思っています。
もし、そのままだとしても致し方ないけれど、「助けて。」と言われた時には、すぐにそばに行ける。
それが私たちのできることです。