こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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不公平だと思うこと。

2013-01-30 22:35:25 | 訪問看護、緩和ケア
冬に入ってすぐ入院した、ある患者さんの訃報が届きました。

独居で気ままな彼は、人生の大半を思うがままに生きてきたのだと思います。

親戚中からは、とうの昔に縁を切られました。
気にいらなければ怒鳴り散らし、モノを投げつけ、病院に行けば早く診ろと受付を脅し、保護で入ったヘルパーは恫喝してあれこれと指示したりしていました。
やがて、障害を負った彼はドクターショッピングを繰り返すようになりました。
タクシーを呼びつけ、受診しては捨て台詞を吐いて次の受診をする。

もう、誰も止められませんでした。

そして、最後に入った入院先で、暴言を吐き続けたあげく、たったひとりで旅立ったのです。

でも、それは彼が望んだこと。
誰の迷惑もかえりみず、言いたいことだけをいい、気に入らなければ怒鳴る毎日の中で、それでも自分の意思を押し通した彼。
もし、日本に今の制度がなければ、確実に遥か昔に行き倒れていたはずの生涯。
でも、彼には住むところも与えられ、食事も医療も介護も、ドクターショッピングもすべて思うように国が与えてくれました。

彼を不幸な人とは思えませんでした。
最後は、暖かな病室で人生を閉じることができたのですから。

一生涯を働き詰めで来ても、わずかな国民年金で、医療も食事も最低限で我慢して、病気になっても介護サービスすらろくに受けられない人たちもいます。

医師にかかるのも、まずは生活費の残りを計算しなければ受診できないのです。

どんなに介護が大変でも、施設や入院はできないから、最低限度にサービスを導入するのです。

「この人の介護にお金をかければ、介護する私たちの、あすのご飯が食べられなくなる。」

と言わせているのは、一体なんなのでしょうか。


障害者手帳を持つ知り合いは、毎日出歩いていても、毎日ヘルパーを入れ放題。
家の中は、チリ一つなく綺麗に片付けられ、毎日干された布団が暖かく準備される日々。
障害ヘルパー枠のギリギリまで使う権利を持っているのです。

でも、なるべく自分で、誰の迷惑にもならないように、「お国に申し訳ないから。」と清貧を極めている人もいるのです。

最低生活の保証は、絶対に必要です。
それを否定しているのではあありません。
分別を持って、きちんとその中でまっとうに暮らしている人もたくさんいます。

けれど、年金暮らしの生活が、国の言う最低限度の生活レベルよりも下回ってしまうことが、どれほど多いかを知っているのでしょうか。

なぜ、必死に働いてやっと暮らしている人たちが、国の保護対象者よりも苦しいのでしょうか。

あまりにも不公平な現実を見すぎてしまって、どうにも怒りが収まらないのです。

社会の中でタブー視されてきた現場です。
けれど、現実をもっと検証していかなければいけないし、本当はそれをきちんと見極める機関を作らなければいけないと思います。

でも、今の現状は保護課も障害福祉課も、見てみないふり、言うがままで支払いをしているのです。
税金の垂れ流し状態です。

本当に、今助けなければいけないのは誰なのかを、誰も気にしていない現状で、この国の未来はどうなるのでしょうか。

少子高齢化が進むなか、やがて、私たちも働き続けた挙句、一番苦しい場所に置かれてしまうのかもしれません。

認定審査会のように、受給者の調査と審査会を行うとか、何か歯止めが必要なのです。

不公平な社会であってはならないと思います。