こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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家族の決断

2010-01-07 22:31:07 | 訪問看護、緩和ケア
もう何年も、寝たきりのお母さんと暮らしている息子さんがいます。
ケアマネさんも訪問看護師も、ヘルパーもずいぶん変わったようですが、ここ数年は今のケアマネ、看護師、医師、ヘルパーで落ち着いています。

お母さんは、ほとんど全介助ですが、小規模多機能の今のスタイルで、デイと在宅をうまく使って、とても穏やかに過ごしていましたし、皮膚のトラブルやちょっとした変化には、往診医と訪問看護でいつも問題をクリアしてきました。

いろんなことが、微妙なバランスで保たれている。
そんな感じでした。

でも、時は待ってはくれません。
いつか、・・・ましてご高齢のお母さんとのお別れは、近い将来にやってくるのです。

昨日、そのお母さんが急変しました。
急激な麻痺と意識レベルの低下、食事も水分も受け付けなくなりました。

選択肢として、まずは病院へ運び、検査や治療を行うこと。
もうひとつは、高齢でほぼ寝たきりであったお母さんの、唯一の楽しみの食事が取れなくなった今、在宅で静かに自然に看取るということ。

寝たきりの家族を介護する時、仕事をあきらめて介護に専念される方が多くいます。
それが長くなれば、介護する事が生活そのものになるわけで、その介護する対象の家族が亡くなることは、仕事を奪われることでもあるのです。

あるていどの年齢で、突然その家族を亡くすことは、自分の存在価値を見失うことになりかねない一大事でもあります。

もちろん愛する家族ですから、失いたくない。

でも、今日息子さんは決心しました。

「今までお母さんは幸せだったかな?」
「そうですね。穏やかないいお顔ですね。毎日ぴかぴかに磨き上げれていて、こうして足を洗っても、垢一つ出てこないし、ご飯もいっぱい食べて、大事に大事にされてきましたね。良くやってきましたね。お母さん幸せですね。」
「そうだよな。もうずいぶん頑張ってくれたよな。」
「そうね。びっくりするくらい頑張ってきましたね。」
「これ以上頑張らせるのもね・・。いまさら痛いことや辛いことさせたくないし、
もういいよ。ここで自然に任せるよ。看護師さんとヘルパーさんには、あと少し、最後まで付き合ってくれる?」
「もちろん。長いお付き合いになりましたね。最後までお手伝いしますよ。」
「小規模多機能はやめて普通の居宅にするよ。介護保険がんがん使ってここで見送るから。よろしくお願いします。」

そんな会話がありました。

もしかしたら、「なぜ治療をあきらめるのか!?」「介護放棄にならないのか?」
と怒る人もいるかもしれませんが、私たちはあきらめたわけでも放棄したわけでもありません。

その人の尊厳を守りたいだけです。
ご家族の思いを支えたいだけです。

あと少し、母と息子の時間が、穏やかに過ごせることを応援します。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
小規模を (gitanist)
2010-01-08 00:16:14
やめて通常の居宅介護支援に変えるとなると、ケアマネも今まで関わってた人も変わっちゃいますよね?
ちょっとそこが心配なんですが・・・。現状の小規模だと、訪問が充実していないとは思うんですが、最後頑張れないかなぁ・・・。
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同じ事業所なんです。 (こぶた部屋の住人)
2010-01-08 08:43:20
小規模と居宅とヘルパーは、同じ事業所なんです。
事業所内でのケアマネやヘルパーは変わりますが、もともとやってくれていた瀬谷の母と呼ばれる人なので、息子さんの信頼も厚く、そこはOKです。
ただ、確かに小規模の問題は多くあります。
訪問看護も、お泊まり中は医療保険じゃないと入れないんですよねー。
褥創の時は、特別指示書を良く出してもらいました。それに、小規模でほとんどの単位をもってかれちゃうんで、小規模以外のサービスが使えなかったりしますよね。
でも、ここの小規模は瀬谷の困難事例をまとめて受けちゃうほどのNPOがやっていて、阿吽の呼吸で組める事業所ですので安心です。
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はじめまして (あみん)
2010-01-08 18:39:20
はじめまして
いつも拝見しています

他人事とは思えないですね
近い将来、我が家にもやってくること
そう思うととても胸が痛くなってきます
介護が終わった時自分はどうなってしまうのか?
いつも不安に思います

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ありがとうございます。 (こぶた部屋の住人)
2010-01-08 22:47:42
介護生活をされているんですね。
介護は、口でいうほど楽じゃないですよね。
ご家族を介護されている皆さんには、本当に頭が下がります。
これからの事、不安は大きいと思いますが、どこかで終わる時が来るのは、避けられない事ですね。
でも、それも含めて自然の流れの中で解決していくのではないでしょうか?
前を向いて、進んでくださいね。
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