隊長が、これまでに鑑賞した「映画」を紹介するシリーズの第184作品目は、『ブエノスアイレス』をお送りします。
『ブエノスアイレス』(原題:春光乍洩、英題:Happy Together)は、1997年5月公開の香港映画。(日本公開は、1997年9月)
尚、「隊長のブログ」では、香港映画を、これで11作品を紹介したことになります。詳細は、こちらの 記事一覧をご参照下さい 。
監督・脚本・製作:香港出身のウォン・カーウァイ(王家衛)。
ウォン・カーウァイ 監督作品の記事一覧は、こちらをご参照下さい 。
撮影は、オーストラリア出身のクリストファー・ドイル(Christopher Doyle)。
クリストファー・ドイルの映画作品一覧は、こちらです 。
出演者:香港のトニー・レオン(梁 朝偉)、同 レスリー・チャン(張 國榮)、台湾出身の張震(チャン・チェン)、ほか。
トニー・レオンが出演する映画を、これで四作品を紹介したことになります。詳細は、こちらをご覧下さい 。
レスリー・チャンは、1994年の 『さらば、わが愛/覇王別姫』 を取り上げています。
あらすじ:物語の舞台は、香港からちょうど地球の裏側に当たる南米・アルゼンチン。旅を続ける香港出身のゲイのカップル、ウィン(レスリー・チャン)とファイ(トニー・レオン)は、激しく愛し合いながらも別れを繰り返してきました。
二人は、関係を修復するため、アルゼンチンとブラジルの二国にまたがる世界最大の滝「イグアスの滝」へ向かいますが、途中で道に迷って言い争い、そのままケンカ別れしてしまいます。
その後、フェイは、ブエノスアイレスの首都・アルゼンチンのタンゴバーでドアマンとして働いていましたが、そこへ白人男性とともにウィンが客として突然現れます。それから、ウィンは何度もファイに復縁を迫り、そのたびにファイは突き放します。ある日、嫉妬した愛人に怪我を負わされたウィンが、ファイのアパートに転がり込んできたことから、やむなく介護を引き受けます。
やがて、怪我から快復したウィンはファイの留守中に出歩くようになります。一方、転職して中華料理店で働きはじめたファイは、同僚の台湾出身の青年チャン(チャン・チェン)と親しくなります。
そんな中、ファイのもとからウィンは去って行き。。。
感想:映画の冒頭、モノクロの映像が流れます。今ほどLGBTへの理解が深まっていなかった公開当時、男同士の激しい愛欲シーンが流れるから、モノクロ映像にしたのでしょうか。
巨匠・ウォン・カーウァイ監督、そんな単純な理由ではないでしょうが、隊長の予想通り、轟轟(ごうごう)と流れるイグアスの滝を映し出す時にカラーに転換。そして再びモノクロ映像に戻ります。最終的にカラー映像になるのは、怪我をしたウィンの治療先の病院からの帰りのタクシーの中の二人のシーンからです。
モノクロとカラー映像を切り替える手法は、古今東西の映画監督が使用しますが、一番効果的に使われていたと思うのは、チャン・イーモウ監督の 『初恋のきた道』 ですね。
ウィンとファイが男同士で、タンゴを踊るシーンは、見ごたえがありました。レスリー・チャンと、トニー・レオン、どれだけ練習したことでしょう。
ロケに使われた、歴史を感じさせるタンゴバー。映画の中でも台湾からの団体観光客が数多く訪れ、ファイが店の前で記念写真を撮ってやるシーンがありましたが、実在する1967年開店の「BAR SUR(バールスール)」と言うタンゴバーです。この店は、タンゴのディナーショーで有名です。
『ブエノスアイレス』公開当時の1990年代後半は、この店を訪れるのは、台湾人観光客が多かったのでしょうが、日本人観光客の姿もあったのではないかと思います。それが、コロナ禍で出入国制限が広がる直前までは、中国人団体観光客で賑わっていたのではないでしょうか。
隊長は、同じ様な現象を、ローマのカンツォーネ・レストランで体験しました 。
テレビの旅番組 『朝だ!生です旅サラダ』 、2016年1月の放送では、俳優の佐々木蔵之介さんが、この映画を観てからどうしても訪れたかった「BAR SUR」を訪れ、女性ダンサーとタンゴを踊ったみせてくれました。
さすが役者さん、それなりに見えましたが、レスリー・チャンと、トニー・レオンのダンスにはとても及びませんでした。
タンゴ同様、「イグアスの滝」も象徴的に使われています。二人で行くことがかなわなかったファイが、一人でイグアスの滝の横に佇む姿は、物悲しく見えました。尚、隊長が訪れた時は、こんなでした 。
香港出身の設定のファイと、台湾出身のチャンの絡むシーンも面白かったです。トニー・レオンが広東語で話しかけ、チャン・チェンが北京語で答える。二人の間に意思疎通が出来ていたのでしょうか。また、二人の間には“恋愛感情”があったのか、それとも友情が生まれたのか。。。
映画の中で使われる音楽は、タンゴの楽曲を含め、どれも素敵です。『恋する惑星』、『天使の涙』、そして『ブエノスアイレス』を、隊長はウォン・カーウァイの「青春三部作」と勝手に呼んでいるのですが、この三作品で流れる1960年代の欧米のヒット曲が印象的です。
『恋する惑星』の「夢のカリフォルニア」。
『天使の涙』の「Only You」 。
『ブエノスアイレス』では、タートルズの「ハッピー・トゥゲザー」が、エンディングで流れます。
ウォン・カーウァイさん、この曲がよっぽど好きなのでしょうね。映画の英題を「Happy Together」としてしまうのですから。
この曲が流れるエンディングは、台湾の台北MRTにファイが乗車しているのフェイのシーンなのですが、何故エンディングが、フェイの故郷・香港ではなく台北だったのでしょうかね。
1997年の時点で、ウォン・カーウァイは、将来、香港の一国二制度が危ういものになることを見越して、自由の象徴として台湾をエンディングの場所として選んだと考えるのは、うがった見方でしょうか。
これまでに、「映画」の記事の中で、外国映画の邦題(日本語タイトル)の付け方の良い作品と、悪い作品を挙げていて、それを一覧にしています が、本作は良い例だと思います。
原題の「春光乍洩」を訳すと、“漏れ出る春の光”、意訳ずると“木洩れ陽”でしょうか。これを、邦題にしても訳が分からないですよね。英題の「Happy Together」は、曲名そのものだし。ここは、日本人には誰でも知っている都市名の『ブエノスアイレス』とすることで、観客の想像力を刺激することに成功したのではないでしょうか。
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Film1~170 省略
Film171 2020/5/27 『新幹線大爆破』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a05c7fb4bdde448a6ac068829713a2e8
Film172 2020/5/30 『武士の家計簿』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/c1727c5b28072705d7793137631eb822
Film173 2020/6/3 『海の上のピアニスト』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/3491181045bd9c239fc8e3ef96366c7d
Film174 2020/6/6 『殿、利息でござる!』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/e131cd797c842f40b76cbe3e2675d5ae
Film175 2020/6/9 『レッドクリフ PartI』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/6594ca1db18dfc6c76dad708788b60fc
Film176 2020/6/13 『超高速!参勤交代 リターンズ』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/8b756035874f2baae157760d494484ab
Film177 2020/6/17 『レッドクリフ PartII-未来への最終決戦-』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/384e9228c40aa1ca5df2b5445e15cbcf
Film178 2020/6/21 『イップマン 継承』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/2a258dc354dc3c00524c6ac6f712d953
Film179 2020/6/24 『緋牡丹博徒』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/282e2a81b08e1f2f32884b116798f971
Film180 2020/6/27 『日日是好日』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/144841da95f0071cb993a5ed962db3bb
Film181 2020/7/1 『妻への家路』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/57e6b9505869083ba45669ab482392df
Film182 2020/7/5 『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/6cabb876713f746740fd7161430c3414
番外編 2020/7/7 『良い邦題、悪い邦題』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/5ea8aa4c56656e55bbdb8cfa491773aa
Film183 2020/7/10 『シチリア!シチリア!』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/9dd270ca7755cc3711f4fd37ff9208c5