現在行われている国会審議から目が離せない状態ですね。一昨日この記事で書いたように、首相官邸の斜向かいのレストランで食事をし、体調を崩して自嘲している場合ではありませんよね。「そんな暇とエネルギーがあったら、デモ*に参加しなさいよ」という自戒に、本来は立っていなければならないような政局です(^_^; それくらい、今の日本の安全保障は大きな岐路に立っていると思います。そんな思いで、今日の衆院特別委員会の国会審議を聴きました。
これについては長くなるので、この記事内で後述します。まずは、それに関連して最近の東京新聞に掲載された記事を引用します。引用したい記事は山ほどあるのですが、メガネの度が合わなくなったミセス・ローガン(老眼)には限界があるので、2つ3つ...。
昨年の7月1日に安倍政権が解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を閣議決定した折りに、こちらの記事で全国紙と地方紙の報道内容の温度差を紹介しました。そして今回、5月14日に安全保障法制関連法案を閣議決定したときの新聞各社の社説や論説にも、同じように全国紙と地方紙の温度差があることを、東京新聞が24日付の朝刊で報じています。「地方紙 大半が警鐘」というタイトルの記事内で、「全国紙の賛否が割れる一方で、ブロック紙・地方紙の大半が批判的な立場で論陣を張っている」と。掲載された各社の社説・論説の見出し(14~16日)を引用します。
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ブロック・地方紙
北海道新聞 | 平和主義を捨て去るのか |
東奥日報(青森県) | 与野党で根源的な議論を |
デーリー東北(同) | このまま通していいのか |
岩手日報 | 焦点は野党の抑止力 |
河北新報 | 日米同盟偏重に疑念拭えず |
秋田魁新報 | 平和主義の曲がり角だ |
山形新聞 | 根本から議論が必要だ |
福島民報 | 国会で徹底的な議論を |
茨城新聞 | 前提問う根源的議論を |
下野新聞(栃木県) | 前提を問い直す議論を |
上毛新聞(群馬県) | 根源的な議論を進めて |
神奈川新聞 | 一本一本の熟議求める |
山梨日日新聞 | 軽視された国会 本領今こそ |
信濃毎日新聞(長野県) | 戦争に道を開く転換点 |
新潟日報 | 平和の意味問い論戦せよ |
北日本新聞(富山県) | 平和国家の曲がり角だ |
北国(石川県)・富山新聞 | 戦火交えぬための備えに |
福井新聞 | これが平和守る道なのか |
静岡新聞 | 国民置き去りにするな |
岐阜新聞 | 根源的な議論が不可欠だ |
中日(愛知県)・東京新聞 | 専守防衛の原点に返れ |
京都新聞 | 十把一からげは乱暴だ |
神戸新聞 | 「不戦」の誓いが守れるのか |
日本海新聞(鳥取県) | 根源的な議論不可欠 |
山陰中央新報(島根県) | 根源的な議論が必要だ |
山陽新聞(岡山県) | 国民の疑念を拭えるか |
中国新聞(広島県) | これで国会を通すのか |
徳島新聞 | 「平和国家」が変容する |
愛媛新聞 | 「平和のために」まやかしだ |
高知新聞 | 時の政権次第にならないか |
西日本新聞(福岡県) | 「平和法案」本紙対見極めよ |
佐賀新聞 | あいまいさ残さず議論を |
長崎新聞 | 急がず、反対の声聞け |
熊本日日新聞 | 国会で問題点を洗い出せ |
大分合同新聞 | 根源的な議論を |
宮崎日日新聞 | 平和国家の評価変えるのか |
南日本新聞(鹿児島県) | 政権の暴走に抗議する 平和と語れば語るほど |
沖縄タイムス | やり方が強引で乱暴だ |
琉球新報(沖縄県) | どこに歯止めがあるか 危険な法案は廃案にせよ |
全国紙
朝日新聞 | この一戦を越えさせるな |
毎日新聞 | 大転換問う徹底的な議論を |
読売新聞 | 的確で迅速な危機対処が肝要 |
日本経済新聞 | 具体例に基づく安保法制の議論を |
産経新聞 | 国守れぬ欠陥正すときだ |
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2つめは、5月20日付朝刊の「私説 論説室から」です。
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「よみがえる国家総動員」
先の大戦でたいへんな思いをしたのは「外地の兵隊さん」だけではなかった。国家総動員法のもと、国民とその持ち物が政府により徴用され、やがて空襲が始まった。
安倍晋三内閣が国会提出した安全保障法制にも「国家総動員体制」が明記されている。存立危機事態、すなわち他国を守るための武力行使が追加された武力攻撃事態法、特定公共施設利用法の両改正案を読めば分かる。
他国の戦争であっても時の政権が日本存立の危機であると判断した場合、首相が対処基本方針を定めることになる。この方針に従い、港湾、飛行場、道路、海域・空域、電波について、自衛隊と米軍など他国の軍隊の利用が優先される。
自衛隊や他国軍への協力が義務付けられるのは中央省庁や都道府県庁、市町村役場だけではない。協力が責務とされる指定公共機関として日銀、日本赤十字、NHK、民放、通信、電力、ガス、商船、航空、JR、私鉄、バスなど152社・機関が並び、改正案にそっくり引き継がれた。国民は「必要な協力をするよう努める」とされている。
武力攻撃事態法、特定公共施設利用法は、日本が武力攻撃を受けた際の対処策のはずである。これを「他国の防衛」にまで広げるのだから「銃後の国民」も無関係ではいられない。たいへんな思いをするのは「戦地の自衛隊さん」だけではない。 (半田滋)
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28日付の東京新聞朝刊では、アフガン戦争とイラク戦争に関連し、インド洋やイラクに派遣された自衛官のうち54人が自殺していたことを、防衛省が27日の衆院平和安全法制特別委員会で明らかにしたと報じています。同省は「自殺はさまざまな要因が複合的に影響して発生するので、派遣任務と自殺の因果関係を特定するのは困難」としているようですが。
また、同日付朝刊で、「2001年の米中枢同時テロ後、アフガニスタンとイラクで長い戦争を戦い続けた米国では、度重なる前線行きで心に傷を負った米兵の自殺問題が深刻。近年では1年間に自殺する兵士の数が、同時期の戦士者数を上回る事態に陥っている」と報じています。「米陸軍公衆衛生司令部の統計などによると、陸軍現役兵の自殺数は04年から08年までに80%増加。12年には最悪の年間320人に達した。戦場での経験に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)が主な原因だ」と。
安保法制は11もの法案からなり、国民には複雑でわかりにくいですよね。でも、なぜこれだけの法整備が必要なのか...その理由は単純ですよね。本来なら憲法を改定(敢えて改定と表現します)しなければ実現できないことを、別の手段に代えて強引に進めようとしているからに他ならないでしょう。憲法改定という本来の手続きを踏まずに安全保障の体制を変え、実質的には憲法を変えるのと同じことをしようとしているという、まさに姑息な方便をとっているからこそ、これだけ複雑で多くの法整備が必要になるのではないでしょうか? そして、今、国民投票で憲法改定について国民に諮らないのは、国民が反対するだろうという危惧が政権にある証左ではないでしょうか。
さらに、11の法案のうち10本を「平和安全法制整備法」という一括法にとりまとめ、しかもたった1回の国会で通そうとしている...てっとり早く多数決で押し切ろうとしている魂胆が見え見えです。なぜそんなに急ぐのか...時間をかければ、国民が法案について知恵をつけ、反対の民意が高まるかもしれないし、国際社会からの批判も高まるかもしれない...急いでいるのは、その可能性を政権が危惧し、焦っている証左ではないでしょうか。
それら姑息な方便や焦りを覆い隠すためなのでしょうか...安倍首相はやたらと長く抽象的な答弁を繰り返したり(27日の衆院平和安全法制特別委員会では、質問にはまともに答えず長々と答弁することを繰り返し、議長に9回も注意を促されたそうですね)、それとは逆にやたらと具体的・限定的な例をしつこく挙げたり(ホルムズ海峡での機雷掃海の例など)、例によってまやかしの言葉を弄したり(「切れ目のない」「木を見て森を見ない」など)という言動に終始しているように、私には映ります。これが、首相ご本人が言うところの「本質的な審議」なのでしょうか?
その実際の中身はというと、今日の国会では...
他の大臣に向けられた質問に、首相がしゃしゃり出て答えたり、答えようとしたり...
逆に、首相自身が質問されているのに、他の大臣に答弁させてみたり...
他の大臣たち、つまり岸田外務大臣や中谷防衛大臣が質問されると、秘書官が後ろから飛び出してきて
資料を見せたり耳打ちしたり...大臣はその資料を読み上げるだけだったり...
中谷防衛相は、野党の具体的な質問に窮すると、「総合的に、客観的に、合理的に判断する」という答弁を繰り返すだけだったり...
これらのどこが本質的な議論なのか...??? 多くの新聞社が望んでいる「根源的な議論」とはほど遠いと感じました。
こんなおそまつな与党の国会答弁をもってして、「審議しました」という既成事実にされ、1回限りの国会で多数決で押し切られ、実質的に憲法改定されてしまっては、たまったものではありませんし、とても立憲主義に基づいているとは思えません。
さらに、安倍首相は先日の党首討論で、民主党の岡田代表の質問に対し、「我々が提出する法律についての説明は全く正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」と言い放ちました。また、共産党の志位委員長の質問に対しては、「(志位委員長が指摘したポツダム宣言の部分を)つまびらかには読んでいないので承知していない」と、恥ずかしげもなく公言しましたよね。これほどまでに傲慢で、これほどまでにおそまつな歴史認識に立っている人間が、一国家の首相だという事実に改めて愕然としましたし、そもそもこんな人に「本質的な審議」ができるわけがないと思いました。
「国民の生命と安全を守る」を何かにつけて声高に宣言し、そのためと称していろいろな政策を民意を無視して強行してきたにも拘らず、過日の邦人人質事件では2人の自国民の命をテロリストから守ることができなかった...。福島の避難民の帰還を促し、賠償打ち切りを提案するなど、実質的に見捨てようとしている...。言葉とは裏腹に、実際には国民の生命と安全を守ることができていない政権が、他国のために武力行使して何を守るというのでしょう? そもそもの目的が不可解だし、不思議です(^_^;
私たち国民は、政権の息のかかったメディアの報道だけではなく、いろいろな手段でなるべく客観的な情報を収集・精査し、首相の国民愚弄策に惑わされることなく、政権のもくろみの本質を見失わないようにしなければならないと思います。
* 「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」(安全保障関連法案に反対する複数の市民団体の合同組織)主催による国会包囲集会(戦争法案反対全国大集会)が、6月14日(14時~15時半)と24日(18~20時)に予定されています。こちらのパンフの3枚目で実行委員会の行動予定が、2枚目で呼びかけ文が見られます。
共産党の志位委員長の質問(過去の具体的な事例証拠をもってして、理路整然と順次詰問していきました)には溜飲を下げた&今や高校で日本史が必修になっていないという驚愕の事実を最近まで知らなかったtakuetsu@管理人でした(^_^;