「永遠の武士道」研究所所長 多久善郎ブログ

著書『先哲に学ぶ行動哲学』『永遠の武士道』『維新のこころ』並びに武士道、陽明学、明治維新史、人物論及び最近の論策を紹介。

北朝鮮人権法は何故徹底されないのか

2008-01-24 16:20:12 | 【連載】 日本の誇り復活 その戦ひと精神
【連載】「日本の誇り」復活―その戦ひと精神(二十八)〔『祖国と青年』平成20年1月号掲載〕

北朝鮮人権法は何故徹底されないのか
歪んだ「人権」教育是正の為の行動を

 私は、熊本の日本会議理事長と救う会副会長の任も担つてゐる。今回はその双方の立場から見えてきた、歪んだ人権教育是正の視点について提案を行ひたい。

 北朝鮮人権週間に先立つ平成19年11月31日、最高裁判所は、熊本市が行つてゐる熊本朝鮮会館への固定資産税減免措置を違法とした福岡高等裁判所判決を支持する決定を下し、幸山政史熊本市長の上告を棄却した。平成15年7月の情報公開請求以来、熊本市監査委員会・熊本地裁・福岡高裁・最高裁を巡つて争はれた4年5カ月の戦ひに終止符が打たれた。吾々が勝ち取つた勝利により、北朝鮮への経済制裁が更に進むものと思はれる。だが他にも、既に一点突破して全面展開を待つてゐる大きな成果がある。

 平成18年6月23日、国会は「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律(北朝鮮人権法)」を制定、即日施行された。この北朝鮮人権法は、①目的②国の責務③地方公共団体の責務④北朝鮮人権侵害問題啓発週間⑤年次報告⑥国際的な連携の強化⑦北朝鮮当局による人権侵害状況が改善されない場合の措置、の七カ条から成り、第3条には「地方公共団体は、国と連携を図りつつ、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとする。」と記され、第4条には「国民の間に広く拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題についての関心と認識を深めるため、北朝鮮人権侵害問題啓発週間を設ける」「2、北朝鮮人権侵害問題啓発週間は、十二月十日から同月十六日までとする。」「3、国及び地方公共団体は、北朝鮮人権侵害問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。」と銘記されてゐる。

この法律施行に伴ひ、18年9月26日には法務省が法務事務次官名で「平成18年度『北朝鮮人権侵害問題啓発週間』実施要領」を関係省庁に通知。それに基づき文部科学省は生涯学習政策局長及び初等中等教育局長名で各都道府県教育委員会教育長や各国公私立大学長などを始めとする十二機関に「平成18年度『北朝鮮人権侵害問題啓発週間』について」の通知を行つた。その結果、私の在住する熊本では、私の友人の小中学校教員や大学教官にも通知が届いた。

この法律は19年7月6日に改正され、政府の施策が北朝鮮の人権侵害問題の改善に資するやうに行ふ事と国際機関への働きかけについて追記された。その点の説明を加味して19年9月19日には「内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長」名で「各都道府県・政令指定都市拉致問題担当部局長」宛に「『拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律』の施行に伴う拉致問題に関する対応について」の通知が出され「法の趣旨を踏まえ、各都道府県・政令指定都市におかれては、地域の実情を踏まえつつ、積極的に拉致問題に関する啓発を行うとともに、啓発週間における事業実施に努められるようお願いする。特に啓発週間中の事業実施について拉致問題関連民間団体から支援要請があった場合は、可能な範囲で積極的に支援を行うことをお願いする。また、本通知について管内の市町村並びに関係機関及び関係団体にその周知をお願いする。」と積極的な取り組みを要請してゐる。

 だが、平成19年12月の北朝鮮人権侵害問題啓発週間の取り組みは、前年から殆ど前進してゐない。前年に学校現場で通知を見た私の友人は今年は見てゐないといふ。人権教育歪みの是正に積極的な広島県でも、教育正常化に尽力された県議を始め教育関係者の中に、この法律の認識は未だに共有されてゐない。毎年12月になると各自治体の広報誌には「人権週間(12月10日の人権デーを最終日とする1週間)」についてのイベントが大々的に掲載されるが、その中に北朝鮮人権侵害問題啓発の言葉を見出すことは殆ど無い。法務省のホームページを開くと、「第59回人権週間」に於ける「強調事項」16項目の最後には「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう」と記されてゐるが、地方自治体迄は全く浸透してゐない。

 熊本県環境生活部人権センターは平成19年10月~20年1月迄15回に亙つて、「共に生きる ハートメッセージ」と題する人権啓発ラジオ番組を毎週火曜日に放送してゐるが、そのテーマの中には「北朝鮮人権侵害問題」は入つてゐない。熊本県人権センターは北朝鮮拉致問題を完全に無視してゐる。

 熊本ではこの夏、県と自民党拉致議連と救う会熊本の三者で北朝鮮人権侵害問題啓発週間対応の為の協議が行はれたが、県の担当部局は国際課であり、人権センターは前面に出てこない。三者協議の結果、熊本県は漸く十二月二十一日に県庁地下大会議室で拉致問題の研修会を開催する事を決め、更には来年度予算に「北朝鮮人権問題啓発活動」を計上する事となつた。

 福岡県では県や市が会場を提供する講演会などの啓発活動が盛んに行はれ、愛媛県では県が独自の啓発ポスターを作成配布した。いづれも、各県の救う会による自治体への強力な働きかけによつて実現したものである。法律が出来たからと言つて安心してゐては意味が無い。法律を背景とする行政措置の徹底まで働きかけなければ自治体は動き出さないのだ。北朝鮮人権侵害問題啓発週間の取り組みによつて、人権教育の中に、国家主権の確立による人権保護といふ視点が確立し、これ迄反国家思想によつて歪曲されて来た人権教育の正常化が可能となるのである。この戦ひこそ戦後思想超克を掲げる吾々の着手すべき取り組みではないのか。

 左翼勢力は、同和対策措置法や男女共同参画基本法の様に、法律を作ればそれを盾にとつて自治体に「行動計画」を要請し、更には予算を獲得して推進機関設置を勝ち取り、そこに彼らの活動者を送り込む。そして、その周知徹底の為に、毎年「アンケート調査」の名の下の「徹底強制」を推し進めていく。それに比して吾々の側の戦ひはあまりにも手緩い。

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