同級生が性同一性障害だったら・・・そんなテーマが基本で、大学のアメリカンフットボールの仲間同志の友情とマネージャーも交えた片思いの関係・・・東野さんはそこにどうしても〝殺人〟も盛り込まれますから・・・どうなるんだろう・・・とはらはらどきどきしながら、一気に読み終えてしまいます。性同一性障害という
重~いテーマを専門的に追及され、興味本位でなく、その苦しみや現実問題の厳しさが丁寧に描かれています。男、あるいは女に完全になるために、どうしても必要な戸籍・・・それを求めて事件は展開していきます。
世の中にはいろんな苦しみを抱えながら、人は生きているんだな・・・と改めて感じさせられる一冊でした。

最愛の妻と娘がある日バスの事故に遭遇してしまう・・・病院で対面した父は妻が死に、娘は奇跡的に助かったことを知るしかし・・・助かった娘の中にいるのは妻・・・そんな信じられないようなストーリーを考え、展開していく東野さんの感性とシビアな観察力に脱帽しました。最愛の娘・・・最も美しい年ごろ・・・その中には夫婦二人の記憶を宿したいとしい妻がいる・・・父親の悲しいまでの娘に対する願望を見事に確信をついて、書き綴っていて、おもしろかったです。娘が成長し、若かりし頃の妻にそっくりになる・・・父としては心揺さぶられます。その美しい娘が「私の心はあなたの妻・・・抱いて・・・」ほぇぇぇ~~どえらい・・・!展開にびっくら~~!!!しかしそのまま体は歳をとり、父として中年を迎えている自分・・・そこにいるのは、はどう見ても
手中の玉=宝である娘・・・
DNAが誘惑に勝ちます。

妻に先立たれながらも、一人娘を懸命に男手一つで育てあげ、さぁこれから・・・という、さなぎが蝶に変身する前のような神秘的な年ごろの娘を・・・強姦して殺される・・・・・あまりに悲しい設定でした。
少年犯罪という重いテーマ・・・ 少年法に守られ、何年かすればまた社会に復帰することを約束された犯人・・・それを永遠に戻ってこない被害者の家族はどう受け止めていけばいいのか・・・殺された娘の復讐を誓い、自らが犯人を追い詰めていく・・・私も完全にその父に乗り移ってしまい、終わった時に、あぁぁぁこれで〝長峰さん〟にもう会えなくなるんだな・・・と寂しさを感じました。犯人を更正させ、罪を償うために社会に復帰させる・・・しかし突然に家族を奪われた遺族の永遠の暗闇は消えることはない・・・
つらい、つらい・・・テーマでした。