美術室

2006年10月29日 | 人生は旅である。
はるか昔、私たちが高校生だったころ。

その日、もうすぐ学園祭が始まるというのに、私は所属のブラスバンド部の練習をサボって美術室に遊びに来ていた。

中井君はいつ出来上がるか判らない油絵に、筆で絵の具を加えていた。ひょっとしてもう出来上がっていたのかもしれないけど。
福嶋君は後輩の女の子にデッサンの指導をしていた。
仲田君はギターをポロリポロリと弾いていた。
僕は、美術部員でもないのにベニヤ板をまるくくりぬいて現代彫刻のようなものを作っていた。
秋の陽は早々と傾き、教室全体が紅葉色に染まっていく。

"将来"というものが自分にもやってくることを、わかり始めていたあのころ。
美術室は窓の外の時間の流れとは関係なく静かにそこにあった。

コーラビンと、かっぱえびせんの空袋と、油絵の具の香り。

そんな空間がある学校で青春を送ってもらいたいと思っています。