コロナワクチン生産過程で「ヤマサ」が“隠し味” mRNA合成に重要な核酸を製造 木村盛世氏「日本は開発体制を見直すべきだ」
新型コロナウイルスの感染抑制に大きく貢献しているのが「メッセンジャーRNA(mRNA)」ワクチンだ。
ワクチンは米国など海外メーカー製だが、生産過程で日本の消費者におなじみの企業なども重要な役割を果たしている。コロナ禍収束へ日本の技術が再び脚光を浴びそうだ。
日本国内で接種されているワクチンの大半は米ファイザーやモデルナ製のmRNAワクチンだが、
mRNAを合成するための重要な原料となる核酸「シュードウリジン」の製造を担うのが、
「ヤマサしょうゆ」や「昆布つゆ」で知られるヤマサ醤油(千葉県銚子市)だ。
うま味成分とされるシイタケの「グアニル酸」やかつお節の「イノシン酸」などさまざまな核酸化合物を研究する中で調味料以外の工業化にも着手。
1980年代には海外向けに試薬の販売を手掛けたが、その一つがシュードウリジンだった。
mRNAを構成する物質に「ウリジン」があるが、そのまま体内に入ると、自然免疫がmRNAを壊して抗体を生成するため、
必要なタンパク質が作られにくくなる。そこで、ウリジンをシュードウリジンに置き換えることで自然免疫を回避できるという。
この原理を発見したのが、ノーベル賞候補にも名前が挙がった米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ客員教授(66)らだった。
ヤマサ醤油の医薬・化成品事業部担当者は「今回のワクチンに使える数量と品質のシュードウリジンを作るのは世界でも数社しかない。
原料供給に関わることができたことは大変うれしく思う」と語る。
ほかにも化学メーカー大手のAGC(東京都千代田区)やカネカ(同港区)もコロナワクチンで重要な役割を果たす「プラスミドDNA」の製造受託を担う。
また、研究面でもmRNAの実用化に関わる原理で古市泰宏・新潟薬科大客員教授の貢献が伝えられた。
元厚労省医系技官の木村盛世氏(感染症疫学)は「部分的な技術をみても分かるように、
日系企業は感染症医療やワクチン開発で決して世界に後れをとっているわけではない。米国ではワクチン関連企業でも数十億円の補助金を出すと聞く。
大規模な開発プロジェクトを実施できない日本の体制を見直すべきだろう」と語った。
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