東京博物館の神護寺展をみた後、時間があったので通常展をぶらぶらしていて、たまたま、松林桂月という人のの山居図という絵を見た。
六曲一双の水墨で、最初は墨色といい筆遣いといい、ゴツくてあんまり好きじゃないな、と思った。中央に、やけにリアルに小さな家が描かれていて、白髪白髯のお爺さんが静かに窓辺に座っている。
玄関は開かれていて、漢詩が書かれた掛け軸がかけてある。
あー、この家、いいねー
でもこの絵の見どころ、多分そこじゃない……
と、思いながら前を通り過ぎ、フロアを軽く一周して(途中で焼き物の壺に、竹と雀が描かれたのがあった。雀がすごいリアルで、え、これ、うるさそう……と思った)、ちょっと疲れたので、真ん中のソファに座ったら、先ほどの山居図の真ん前だった。少し引いた位置からみた山居図は、墨の濃さや、筆のうるささが全く気にならず、本当に山の中のようだった。
離れて観るものだったか……
と、あらためて目を走らせると、中央、右隻と左隻にまたがって、白い道が描かれていた。その道に従って目線を動かすと、件の山居に導かれて、開かれた玄関から中にすうっと吸い込まれた。
あ、お邪魔します……
残念ながら一瞬のことで、中の様子まではわからなかったし、お爺さんともお話できなかったけど、またちょっとした不思議体験ができて面白かった。
こういうの、わくわくしちゃう。
『雨柳堂夢咄』みたいじゃん。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます