ひびこれこうじつ

とりとめなく、日々の覚書です。

坂本繁二郎と青木繁

2022-10-12 12:14:32 | art

風邪を引いた。急に寒くなったから、体が追いついていないらしい。

肩から上が別人のようだ。

これ以上ひどくなりませんように。下火になったとはいえ、コロナはまだ姦しいし。

 

先日の坂本繁二郎の展覧会は、正確には、同郷の青木繁との二人展(というのだろうか、こういうのは)だった。

 

展覧会の最後の絵は、それぞれの絶筆だった。

坂本は晩年の月の絵の締めくくりとして、月の姿は見えず、暖色の雲の中に月光のみが浮かぶ、まろみのある絵。

それに対して青木は、荒れたタッチの朝日の絵だった。

長く生きて、描くことそのもののようになっていった坂本は、自分の人生を十分に生き、仙人のようになった。

それに対して溢れんばかりの才能を持て余して早世した青木は、さぞ悔しかっただろう。

 

一瞬そう思って、違うな、と思った。

 

坂本と青木がいると思い、長い人生と短い人生があると思い、仙人のようになった人を羨ましいと思い、早世した人を無念だろうと思うのは、私が、私がいると思い、時間があると信じ、長生きしたい、平安でありたい、いや、平安であるべきだ、という信念の投影だ。

 

坂本も青木も、柔らかな月影の絵も荒々しい朝日の絵も、それを見る私も、すべては一つであり、今ここにある。

 

多分私は、それがぜんぜんわかっていない。

でも、わかってなくていいんだとも思う。


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