天津ドーナツ

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「聞き違い?」「言い違い?」 …元NHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2011-09-25 19:13:03 | ドーナツの宝
*  「君が言い間違えたのだよ!」
 「いいや、あんたが聞き間違えたのだ!」
 さて、どっちの責任だろうか。
 
 昔、NHKの現役だった頃、アナウンサーの仲間の研究会で「聞き違い」「言い違い」のどちらが多いかという統計を取ったことがある。
 もちろん私的な集計だし、サンプルにしても、たまたまテープに取ってあったトーク・対話・討論番組(民間放送を含む)を対象とした数字だから、正しい根拠とは言えないかも知れないが、その数字をみて、改めて驚いた。
 
 なんと、数人で聴取し判定した結果、146のすれ違い対話例のうち、どちらに責任があるとも断定できない(同音異義語や異音異義語が絡んでいる場合を含む)のが「48」で、あとは「86:12」という圧倒的な比率で「聞き違い」の負けだった。
 「聞き違い」のほうが「言い違い」の7倍強と言うことになる。
 聞き手の「聞き違い」、「勘違い」、「空耳(うっかり聞き)」の何と多いことか、反省とともに、大いに慨嘆したことを覚えている。
 
 「聞き違い」での例を少しあげると・・・。
 ・例えば、与党と野党(ヨトウとヤトウ)を聞き違えて、討論がしばし空転した。
 ・圏外と圏内、県外と県内(いずれもケンガイとケンナイ)という聞き違いも、日常的なレベルで起こっている。
 ・「ヨとヤ」は、口を開かずに喋る人の90%が、“聞き手”にわからない。(実験結果)
 ・「ガとナ」も紛らわしい。ことに「ガを鼻濁音で発するときの「ガ」は(実験によると85%)が聞き違える。
 
 そのときの研究会での討論の主題は、当然のことながら、漢字と読みの問題に移っていったことを思い出す。その結論は・・・
 「日本語では、文字面での区別は出来ても、発音と聴取の間でのディスコミュニケーションが、実に多く、これはひとえに、文字伝達に偏りすぎた文化的な欠陥である」
 
 ま、堅い話は、いずれきびしく取り上げますが、ここでは、息抜きに、少し馬鹿な話を・・・数少ない「言い間違え」の内、「異音異義語」のヒット作をご紹介します。

* ・・・ある民間放送の釣り番組。キャスターは大変有名なベテラン俳優だ。
 「えーと、この相模湾での磯釣りはですね・・・なんと『なまイワシ』を使うんですよ。はい・・・」
 ・・・聞いていた私の独り言。
 「なにナマイワシだ。当たり前だろ、煮たイワシだの、佃煮なんぞを使う訳ないだろうが・・・ははあ、「生きイワシ」を読み違えて喋ったな・・・」
 
* ・・・ある民間のラジオ、若い女性・・・ 番組の予告編らしく、一節を読んでいるらしい。
 「シタテニンを追っメアキらしいのがニニン、ナカヤマミチをアガッテゆきます」
 ・・・寝そべって聞いていた私は、跳ね起きた。
 「なんだと! おいおい・・助けてくれよ・・・まともに読めば、「ゲシュニンを追ってメアカシらしいのがフタリ、ナカセンドウをノボッテゆきます。だろうが!・・・でもね。こりゃ異音異義語の所為も確かにあるよね。けど、参ったなあ・・・本文は、多分、
 「下手人を追って目明らしいのが二人、中山道を上って行きます」って書いてあったんだろうけどさ、「きっと、このこのタレントさんは、タップリ絞られたか。クビになっただろう・・・ヤレヤレだぜ」
 
 では、ここで異音異義語を少し・・・
空間 あきま・くうかん
一方 いちかた(炭坑)いっぽう ひとかた
一行 いっこう いちぎょう
一期 いっき いちご
一見 いっけん いちげん
一時 いちじ いっとき
一文 いちぶん いちもん
一寸 ちょっと いっすん
大事 おおごと だいじ
大勢 たいせい おおぜい
御礼 おふだ おさつ
大人気おとなげ だいにんき
仮名 かな かめい
生魚 いきうお なまさかな・或いはナマウオ
強力 ごうりき きょうりょく
金星 きんせい きんぼし
国立 くにたち こくりつ
下手 したて しもて げしゅ
地味 じみ ちみ
初日 しょにち はつひ
・・・
・・・
 あるは、あるは・・・ものすごい量だぜ。これでは、第2外国語として日本語を学ぶ人には、負担が多すぎる。ご苦労だなと。。。