天津ドーナツ

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ことば”のスケッチ・ブック 2 …もとNHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2011-10-23 09:19:34 | ドーナツの宝
先週につづいて、肩の凝らないスケッチ・ブックは、「読めない日本語の固有名詞」をとりあげましょう。
 私がNHKのアナウンサーになったころ、先輩に言われたことで、未だに忘れられないのは、「名前は“だろう"で読んではいけない。どんな優しい名前でも“確かめること"だ」という言葉でしたね。
 英語なら「Jack」と書いてあれば、「ジャック」と読めば、先ず間違いはない。だが、日本語はそうはいかない。
 “確かめなければ発音できない"言葉なのだ。また、そう思わなければ、放送で恥をかく。そう言い聞かされたものだ。
 
 先月、中山道(ナカセンドウ)をナカヤマミチと読み、下手人をシタテニンと読んだ、タレントさんの話を書いた。また別の日に、聞き間違いと読み間違いでは、圧倒的に“聞き間違い"が多いとも書いた。
 すると、ある方からメールを頂いた。
 「NHKでもアナウンサーが、よく間違えるではないか。先日、北海道の古い道のことを“ゴキブリ山道"と言っていたが、そんな道があるはずはなかろう。何かの勘違いか、読み間違いに違いない」
 そういうご主旨だった。
 そこで、少し調べてみた。
 どうやら“ゴキビル・サンドウ"と読んだのを、“ゴキブリ・サンドウ"と、聞き間違えられたと判明した。母音の“i ”と“u”が入れ違ったらしい。
 ご本人にメールをすると、「あのときは、ゴキブリ退治をしていたので・・・私の聞き間違えでしょう」と、笑い話になった。
 だが、この文字を皆さん、はたして読めるだろうか。
 「濃昼山道」<ゴキビル・サンドウ>
 :ちなみに、この山道、今は忘れ去られ、クマザサが生い茂り、幾つかの石垣が残っているだけの、古い道だそうですね。
 こうした名前は、間違いなく“調べなければ読めない"固有名詞の分類に入るでしょう。なにしろ普通では読めないのですから。
 
 勿論、軽率に間違えるアナウンサーがいない訳ではありませんね。
 私なども、新人の頃は鳥取放送局に赴任して、さんざ読み間違えをして、ご迷惑を掛けました。
 鳥取市の傍を流れる川は千代川(センダイガワ)川、その川の畔の町は、用瀬(モチガセ)に郡家(コウゲ)、少し離れた若桜郡(ワカサ)・・・それに、市内に聳える城趾の山は久松山(キュウショウザン)だし、中部の駅は上井(アゲイ)・・・誤読の種はどっさりありましたからね、いま改めてお詫びしmます・・・
 
放送で読み違えるときは、むしろ、普通に読める名前であって、違う読みをする場合でしょうね。
 佐藤さんという人で、サフジさんを知っていますし、田田と書いてタダと読みますと名刺を受け取ったこともある。
 有財さんという名詞を貰い、恐る恐る聞きました。あのユウザイさんですか?すると彼は「いや無罪なのですが、ウザイ奴だとお思い下さい」という。付き合ってみると、まったく「ウザクないサッパリした人」でしたね。
 こんな例は、それこそ、そこら中にゴロゴロ転がっているのが日本語です。
 新潟の五十嵐川はイカラン川ですし、東北の能代川にはノウダイ川もある・・・こうした、意外や意外という名前にぶつかれば、ご本人か、ご当地の人に聞かなければ分かりません。そこで、固有名詞とは、“確かめなければ発音できない言葉"と言うわけです・・・
 
 全く、持って、日本の漢字というのは、発音となると、肩の凝る、恐ろしいものでございますわ。

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