最近、見ておきたい展覧会がたくさんあります。
しかし、12月に入り用事が多くなる季節でもあります。先週は忙しさがピークに達し、知人の個展にいけなかったりしましたが、今週はこまめに時間を作って大阪・京都で開催していた9つの展覧会をまわりました。
その中で、気になった2つの展覧会について記します。
まず、ひとつ目。
京都国立近代美術館で開催している「エモーショナル・ドローイング」展。
この展覧会には16人の作品が展示されていましたが私の心の奥底を刺激したのは、辻直之さんの作品です。出品作品は木炭ドローイングでのアニメーション2作。ストーリーがシンプルなものと、めまぐるしくストーリーが展開するものとの両極端な組み合わせの2作でした。
見終わった後、はっきりしない夢を見た時に感じる頭が重い状態になりました。正体不明の感覚が心の底に植え付けられたような気分です。
この作家さんの世界観をもっと知りたくなりました。“辻直之”さん、憶えておこう。
二つ目は、滝みつるさんの個展。
展覧会のタイトルは「封印された叫び ~いのちは風化を許さない」
滝さんは社会に対してのメッセージを言葉と写真を使った作品で発表されてこられた方です。今回は平面ではおさまらず、インスタレーションとして提示した作品でした。
会場の床にはグレーに塗装された無数の空き缶が転がっています。壁に展示されている作品を見ようすると、「ガチャガチャ」と空き缶に足がぶつかり、作品鑑賞を困難な状態にさせていました。しかし、作者にとってはこの困難さは意図するところ。空き缶が転がる状態は、ある人にとっては戦争中に遭遇した無数の死体につまずきそうになる状態の再現に見えたり、また別の人にとっては阪神淡路大震災の時の再現に見えたり、「これって手榴弾?」となったりするようです。
このような違和感を感じる空間の中で壁面の作品を見ると、撮影された写真(モチーフ)にも違和感を感じます。戦争遺跡の写真をベースに加工された画面は、「過去の時空」と「現在の時空」が混在した空間を作り出しているように感じました。
壁面には谷川俊太郎の文章がありました。
***********************
「死んだ男の
残したものは」
・・・・
死んだ彼らの
残したものは
生きている私
生きているあなた
他に誰も
残っていない
他に誰も
残っていない
***********************
Yoshie