遂に出た!生物学的な話題。
これを最後まで読んでくれそうな人って生物部員以外はエントロピーさんぐらいしか思いつきませんが、ここにあげている文章はある英語論文を日本語で分かりやすく紹介するホームページからの引用を私がさらに内容を省いたり分かりやすく書き換えたもので、アゲハチョウの幼虫の目玉模様について書いています。(画像はクロアゲハの幼虫だけど)
多少手間がかかったのでみんな読んでくださいよ、最後まで。
昆虫は、外敵から身を守ったり、獲物を捕えたりするために、さまざまな方法で自らを他に似せる「擬態」を行なっています。
擬態に関する研究は、生態学・行動学的な面から進められていますが、擬態紋様を作り出す分子メカニズムについては、これまでほとんど明らかにされていません。
皆さんはアゲハの幼虫を飼ったことがあると思いますが、アゲハの幼虫は最後の脱皮で体表の紋様を大きく変化させます。
若齢幼虫は、鳥のフンに擬態した紋様をしていますが、終齢になると全身が緑色になって周囲の草木に成りすまします。
身近なアゲハの幼虫を材料に、若齢幼虫と終齢幼虫を比較することで、擬態紋様のできるメカニズムについて研究している人がいます。
黒い色素はメラニンであると予想されましたが、これは昆虫の外骨格を作る細胞が合成すると考えられます。
黒い領域を決定する機構としては、メラニンの基となるものの合成が皮ふの細胞の黒い紋様の部分だけで行われるという可能性と、メラニンの基が黒い紋様の部分だけで皮ふの細胞に取り込まれるという2つの可能性が考えられました。
昆虫ではドーパミンという化学物質がメラニンの主な基質であると報告されています。
ドーパミンはチロシンからドーパを経て合成されますが、その合成に深く関わるTHとDDCという遺伝子をクローニングして、その遺伝子が利用される領域を調べたところ、どちらも将来黒くなる部分でのみ強い反応が見られたとのことです。
さらに、このときにドーパミンを別の物質に変換するebonyという遺伝子についても調べたところ、面白いことにebonyは赤くなる部分でのみ強い反応が見られたそうで、このebonyはショウジョウバエでは黒い色素を黄色に変換するのに使われていますが、この実験からアゲハでは赤い色素の合成に関わっている可能性が高いと考えらます。
メラニンを作る酵素は、紋様の部分で強く反応することが分かりましたが、それではメラニンの基の取り込みを調べるべく、まだ色の付いていない皮膚をとりだして、チロシンが含まれる培養液で培養し、黒や赤の紋様がほぼ完全に再現することに成功。
培養液に、THやDDCを抑える操作をすると着色は全く起こらなくなり、THやDDCが着色に必須であることを突き止めたそうです。
ここで、さらにドーパミンを加えると、皮膚は一様に黒くなり通常の紋様はほとんど見えなくなることが分かり、よってメラニンの基の取り込みは紋様ごとにあまり違いはなく、紋様ごとに酵素が合成される場所が局在することが、紋様の領域を決めるのに重要であるとわかるとのことです。
終齢になるときにTHとDDCの反応が変化することが、黒い紋様が変化するのに関わっていると考えられますが、それでは、THとDDCの2つの遺伝子だけが変化すれば充分かというと、実際には多くの他の遺伝子も関わっているらしいことが、その後明らかになってきました。
それでは、THやDDCの発現が終齢直前で変化するメカニズムはどうなっているのでしょうか?
それについては、その後の解析から、幼若ホルモン(JH)が重要な役割を果たしていることが分かっているそうで、黒や赤の紋様だけでなく緑色の着色や、若齢幼虫の表面に見られるイボ状の突起構造に関わっていると予想される遺伝子なども現在までにいくつか見当が付いているといいます。
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擬態に関する研究は、生態学・行動学的な面から進められていますが、擬態紋様を作り出す分子メカニズムについては、これまでほとんど明らかにされていません。
皆さんはアゲハの幼虫を飼ったことがあると思いますが、アゲハの幼虫は最後の脱皮で体表の紋様を大きく変化させます。
若齢幼虫は、鳥のフンに擬態した紋様をしていますが、終齢になると全身が緑色になって周囲の草木に成りすまします。
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黒い色素はメラニンであると予想されましたが、これは昆虫の外骨格を作る細胞が合成すると考えられます。
黒い領域を決定する機構としては、メラニンの基となるものの合成が皮ふの細胞の黒い紋様の部分だけで行われるという可能性と、メラニンの基が黒い紋様の部分だけで皮ふの細胞に取り込まれるという2つの可能性が考えられました。
昆虫ではドーパミンという化学物質がメラニンの主な基質であると報告されています。
ドーパミンはチロシンからドーパを経て合成されますが、その合成に深く関わるTHとDDCという遺伝子をクローニングして、その遺伝子が利用される領域を調べたところ、どちらも将来黒くなる部分でのみ強い反応が見られたとのことです。
さらに、このときにドーパミンを別の物質に変換するebonyという遺伝子についても調べたところ、面白いことにebonyは赤くなる部分でのみ強い反応が見られたそうで、このebonyはショウジョウバエでは黒い色素を黄色に変換するのに使われていますが、この実験からアゲハでは赤い色素の合成に関わっている可能性が高いと考えらます。
メラニンを作る酵素は、紋様の部分で強く反応することが分かりましたが、それではメラニンの基の取り込みを調べるべく、まだ色の付いていない皮膚をとりだして、チロシンが含まれる培養液で培養し、黒や赤の紋様がほぼ完全に再現することに成功。
培養液に、THやDDCを抑える操作をすると着色は全く起こらなくなり、THやDDCが着色に必須であることを突き止めたそうです。
ここで、さらにドーパミンを加えると、皮膚は一様に黒くなり通常の紋様はほとんど見えなくなることが分かり、よってメラニンの基の取り込みは紋様ごとにあまり違いはなく、紋様ごとに酵素が合成される場所が局在することが、紋様の領域を決めるのに重要であるとわかるとのことです。
終齢になるときにTHとDDCの反応が変化することが、黒い紋様が変化するのに関わっていると考えられますが、それでは、THとDDCの2つの遺伝子だけが変化すれば充分かというと、実際には多くの他の遺伝子も関わっているらしいことが、その後明らかになってきました。
それでは、THやDDCの発現が終齢直前で変化するメカニズムはどうなっているのでしょうか?
それについては、その後の解析から、幼若ホルモン(JH)が重要な役割を果たしていることが分かっているそうで、黒や赤の紋様だけでなく緑色の着色や、若齢幼虫の表面に見られるイボ状の突起構造に関わっていると予想される遺伝子なども現在までにいくつか見当が付いているといいます。
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