特殊清掃「戦う男たち」コメント公開

戦友の意見交換の場として公開しています。

花一輪(公開コメント版)

2008-03-17 07:46:27 | Weblog
先日、とある現場でのこと。
そこは、道の狭いエリアで建物の前には車は停めておけず、少し離れた有料駐車場に置いておいた。

私が作業を終えて現場を離れる頃には、陽は傾き肌寒い夕風が吹き始めていた。
駐車場までの道をゆっくり歩いていると、前方の道端に小さな黄色が目についた。
近づいてよく見ると、それはアスファルトを割って芽を出した一輪のタンポポ。
土埃で汚れてはいたけど、一仕事を終えて心身ともに疲れていた私には、それがヤケにきれいに見えた。

花屋の店先に並ぶ華やかな花々もきれいだけど、無機質なアスファルトに咲く花にも独特の美しさがある。
固いアスファルトを突き破る生命力・孤独に負けない彩色・土埃にもへこたれないで立つ姿は、私を、柄にもなく花を愛でる気分にさせる力強さがあった。


ある日の夜、仕事の問い合わせが入った。
電話をしてきたのはアパート大家の女性。
その穏やかな話し方と声からは、女性が結構な年配者であることが伺えた。

依頼の内容は、遺品・不要品処分。
〝アパートの住人が亡くなったので、残った家財・生活用品を処分してほしい〟とのこと。
詳しく訊いてみると、故人は高年の男性で、部屋で孤独死。
ただ、発見が早かったらしく、緊急の要請でもなかったため、私は、翌日の仕事の合間を見て現場を見に行くことにした。





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