女社長のブログ《伴海日記》

おかげさまで今年は10周年を迎えます
伴海エンタープライズ株式会社の社長であり歌手
浜砂伴海の日記

武士を訪ねて

2012-02-27 | 素敵

新川崎の黒沢家訪問。2年ぶりだ。 

中村流抜刀道、戸山流居合道八段の、黒沢丘吾氏。 

2年前の五月、不思議なご縁で巡り会った。

彼はその時87歳であった。

駅まで車で迎えに来てくださり、

私の差し上げたCDをすぐにカーステレオでかけてくれた。

言葉少ななご老人、と思いきや、

瞳は輝き、何しろその佇まいが素晴らしかった。

一本筋の通った、そして重心が確実に丹田にある物腰。

周りの空気を清めるような、オーラがあった。

抜刀術、居合道といっても、私にはピンと来なかったが、

壁に掲げてある刀を見たとき、体にびびっと走るものがあった。

真剣による、まさに真剣勝負の世界だ。

静かな老人の後ろに、熱い炎のようなものが見える。

漠然とだけれど、底知れぬ魅力を感じて、

そのあとも逢いたい、逢いたいと思いながら月日が経った。

 

そして去年、彼は脳梗塞で倒れた。

今はリハビリをしながらご自宅で療養なさっている。

献身的な奥方の姿には、後光が射している。

愛し尽くすこと。そして笑顔。心が洗われるようだ。

無口な丘吾さんは、後遺症でさらに言葉が少ない。

けれど握手すると、その腕力のつよいこと。

再会第一声は、「お父さん残念だったな・・・」

不自由な滑舌で言葉をかけてくれた。

ご自身も生死をさまよったのに、

こわばった表情の中に優しさが溢れている。

退院までのリハビリは想像を絶する。努力の賜物。

黙々と武道の修行を積んで来た姿が重なる。

丘吾さん。なんと清々しい。

私は身を清められる思いで彼を見つめる。

ああ。私は平成の世に、武士に会えたのだ。

 

奥方お手製のご馳走に、目も心もお腹も大感激。

美味しい、美味しいと頂くけれど、丘吾さんは召し上がれない。

皆の話をじっと聴いている。やがて、

疲れたご様子に奥方が寝室へ車いすを押して行く。

ベッドに横たわる丘吾さん。けれど、

変わっていない。何も変わらない。

彼は一生武士なのだ。

側の壁の上の方に、刀が掛かっていた。

また体がびびっとした。懐かしいような、怖いような。

何度も、何度も、手を握った。

何度も、何度も、握り返してくれた。

そのお体がさらに回復なさいますよう。

お料理、心がこもってとても美味しゅうございました。

またたくまの、(なんと)7時間であった。

ありがとうございました。
 
お二人に、また逢いに行きます。
 
祈っています。

 

 

 

お二人の手はしっかり結ばれて。