夢というものは、どんどん忘れて行ってしまうものだが、特別な夢、
非日常的な夢、例えば夢の中の時代が違う、知らない場所に居る、などの夢は
何度も何度も繰り返し思い出すことで(私はメモったり絵を書いておく)、
しっかりとその風景や感触が自分のものになってゆく。
夢とリアルが一致するような、不思議な感覚である。
それが何十年も経って、なんと夢の中で自分が居た場所へ導かれた。
下館の “蔵” 初めわからなかったけれど、そのお二階に上がる時「はっ」とした。
ああ。私はここを知っている。
去年の冬。ご縁としか言いようが無い。そして再び、今年も招かれた。
下館(筑西市)へ《歌Deli》第2回目となった「花とシャンソン」
会場は、懐石料理屋さんである《荒為》(あらため) の “蔵”
荒為さんは、築130年と明治時代から代々受け継がれた趣き溢れる佇まい。
和室。洋室。調度品。まるで時が止まっているかの様。溜め息がでる。なんと贅沢な空間。
此処へ来ると、「歴史」「本物」そして日本人であることの誇りを感じずにはいられない。
こちらのお庭の奥の “蔵” ここが素晴らしいホールとなっている。
去年は底冷えのする12月。燃えるような紅葉が庭を染めていた。
今年は紅葉の変わりに、たわわに実る柘榴:ざくろが迎えてくれた。
女将さんが「初摘みです」とくださった大きな実。宝石のような粒粒は、甘くて切ない懐かしい味。
遠い日に夢の中で手を着きながら上った急な階段の、あのなめらかな木の感触。同じだ。涙出そう。
「また来ました。今日も聴いてください」蔵の大きな梁の天井に向かって言う。
ありがとうございます。また呼んでくださって。
2ステージあっという間。最初緊張?何だか胸が苦しくて、辛かったのだが、
目には見えないひとの助けも有って、次第に自分を取り戻した。そして最後は、
皆さんの美声も一緒に響き、“蔵” も、“蔵に住むひと” も喜んでくださったにちがいない。
いえ、喜んでくださっていた。感じた。女将さんが
「蔵は生きているんです。呼吸しているんです。あなたはそれを感じているんです」
嬉しい。ほんとに嬉しい。お導きに感謝。こうしてここに存在してくださってることに、感謝。
「ありがとうございます。また来ます」
去年の蔵の写真
遠いけれど、行く価値は大有り。季節ごとに訪ねてみたい。
《食の蔵・荒為》茨城県筑西市甲929 Tel:0296-21-1357