銀鏡神楽
2012-12-14 | 宮崎
宮崎県西都市の端っこ。米良の山奥深く、銀鏡神社の大祭に行く。
大祭は13日に始まり16日まで。その中で夜神楽は、
毎年12月14日から15日にかけて、夜通し繰り広げられる。
昨年6月、国立劇場「銀鏡神楽」出張公演を、父と一緒に観た。
12月の大祭の本物の神楽を観なくちゃね。一緒に行こうね。
と言ってたら、ぴったりその公演の1ヶ月後に父は逝ってしまった。
今年、前後は過密だったが、どうしても行こうと決めていた。
父の形見のカシミアのセーターを着て、行く。
生憎の雨。半端無い雨。夜通しの雨。夜通しの神楽。
それでも祝子どん達の熱演は続く。
こんなに優雅な神楽が、こんな山奥に存在していることに驚く。
都の文化。能。雅なものが盛り込まれている。
この優美さが人を虜にする。逞しく、美しい。
銀鏡神楽を見ずして、神楽を語るなかれ。
松明の炎が、舞う者の姿かたちをより神々しく映し出す。
祭壇に奉納された猪の首は六頭。闇の中に浮かび上がる。
ござを重ねても重ねても、舞台に水溜りが出来る。
真っ白な足袋が雨水を吸って、変色して行く。
寒さの中、祝子どん達の頬は上気し、吐く息は白い。
容赦ない雨。張り巡らせた屋根のシートが、すぐに雨の重みでたわむ。
大きな竹で下から突いて、祭壇の脇へ水を逃がす。
これを、一晩中。一晩中繰り返すのだ。
そして神楽も一晩中なのだ。雨でも鈍らない太鼓や笛の音。
人間業とは思えない。全てが、この世のものとは思えない。
夢、幻、そして現の間で、私は気を失いそうになっていた。