みんみは、学校に行かなくても良い日が増えた
ようで、ママの家に帰ってしまう事が多くなりました。
とうちゃんは一人暮らし時代に戻って、
長い時間、風呂に入ってばかりいます。
水道代もバカにならないので、沸し直しで入る日
もよくあるんですが、お風呂の垢を洗面器ですくい
取るのがちょっと面倒です。
いつか立派な人物になろうと思いながら暮らして
いますが、道のりは遠く、今日も一日、何ひとつ
世の役に立つことも出来ぬまま日が暮れる……。
湯船に浸かりながら、ため息をつきます。
そんなときにふと思うわけですね、ひとり暮らし
の沸し直しの風呂に浮かんでいるのは自分の垢。
昨夜まで苦しさ、辛さを共にした自分自身の身体の
一部が、チラチラと湯船に浮かんでるわけか、と。
そうすると、湯船に半分沈めた洗面器にちょろろーって
流れ込んで来る垢が、「俺の屍を乗り越えて行け……」
みたいなこと言ってるかもなー、
みたいな気分になって来るんですよ。
「おまえならやれるはずだ!」とか
「俺たちのぶんも頑張ってくれ!!」とか
言うわけですよ、垢が。
それは、昨日の自分から今日の自分へ、そして明日の
自分へと引き継がれる命のバトンです。
実際には風呂の垢をすくっているだけですが、
なんか感動的な事をしているような錯覚に陥るんですね。
そして、よし、明日に備えて早く寝よう!
という決意のもとにさっさと寝るという毎日です。
いつ立派な人物になるのか、見当もつきません。