Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

The Catcher in the Rye / 夏の終わりの物語

2018-09-02 | Walk on

 

月が替わって9月の暦をめくると、突然、ひんやり空気が変わっていた。

寝苦しかった夜の粘つく暑気が去って、肌寒いくらい。

そう、その日を境に、夏が終わっていたのだ。

夏の終わりの物語を、いつか書きたいと思っていた。

本や映画では、この題材は幾度も繰り返し描かれてきた。

感傷の琴線を震わす永遠の物語なのだろう。

サリンジャーの「The Catcher in the Rye ライ麦畑でつかまえて」もそんな一冊だろう。

主人公のホールデン・コールフィールド少年が妹フィービーに語る有名な一節を引いてみよう。

 

ただっ広いライ麦畑のようなところで、

小さな子供たちが、いっぱい集まって、何かのゲームをしているところを、

僕は、いつも思い浮べてしまうんだ。

子供はいっぱいいるんだけど、他には誰もいない。

つまり、ちゃんとした大人みたいなのは一人もいないんだよ。

僕の他にはね。

それで僕は、そのへんのクレージーな崖っぷちに立っているわけさ。

で、僕がそこで何をするかってというとさ、

誰か、その崖から落ちそうになる子供がいると、

片っ端から、捕まえるんだよ。

つまりさ、よく前を見ないで崖の方へ走ってくる子供なんかがいたら、

どっからともなく現れて、その子をさっとキャッチするんだ。

そういうのを朝から晩まで、ずっとやっている。

ライ麦畑のキャッチャー、僕はそういうものになりたいんだ。

 

あの有名な一節に近いイメージの風景に出会った。

散歩の帰りの色づいた田圃だった。

其処に奇妙な案山子が、いくつも立っていた。

マネキンの首を据えた案山子は、異様で「キモイ」という印象だった。

黄金色の稲穂が色づく西日の風景の中で、その案山子たちは目を惹いた。

後日、読んでいた本の中でサリンジャーの有名な一節と出会い、

ライ麦畑の子供たちと、この案山子たちがリンクした。

その夕刻に田圃を訪れると、案山子たちは金子國義の描く少年たちのようだ。

デフォルメされた金子國義のギニョール。

奇妙にグロテスクで蠱惑的なオブジェたち。

地獄めぐりのサリンジャーの物語に相応しい素材。

この世界に溢れる無意味で理不尽な(邪悪な)ものたちから、子供たちを守る名もなきセンチネル(歩哨)として。

案山子は、そういう役割(存在)なのかもしれない?

従来の案山子とは違う新世代案山子を、いくつか目にする。

下段のカイト(凧)としての鳥案山子も、そんな存在だろう。

この田圃には吊るされたカラス(鴉)の人形も風に揺れていた。

雀ばかりか、鴉も実った稲穂を狙うのだろうか?

もう一つはプロペラの廻る風見鳥の案山子。

新世代の案山子たちは、とても遊び心に満ちている(笑)

 

アレサ・フランクリンの葬儀でスティービー・ワンダーがパフォーマンスを披露。

偉大なアレサの葬儀に相応しい動画

 


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4 コメント

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想像力が表現の源(みなもと) (ランスケ)
2018-09-05 00:20:51
ニュース映像やSNSの動画を観ると、今回の台風21号の怖ろしさを実感します。
風速40mを越えると自動車が横転し建物の一部が崩壊する。
それに満潮が重なると津波のように浸水することも。
まさに都市型の災害でした。
京都駅の屋根の一部が崩れ落ちる動画もありました。
タンカーの関空道路への座礁映像が衝撃的。
これが四国を直撃しなくて幸いでした。
西日本豪雨で被災した南予の吉田は、まだ復興には遠い状況です。

気候変動の時代、スーパー台風と云われる900hPaを下回るような超巨大台風の日本列島への上陸が予想されています。
これは観測史上最大の室戸台風に匹敵する規模です。
風速80mという数字の意味を想像するだけで恐ろしい。

9月になって、やっと夏の猛威が治まりましたね。
身近な素材の中で表現するということは、想像力の産物です。
色づいた田圃にも想像力を働かせば、世界文学クラスの物語を写真表現することも可能です(笑)
今回は、かなり大風呂敷を広げました。
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秋のにおい (misa)
2018-09-04 21:35:32
「今季最大級の台風」は流行語大賞ノミネートの勢い?
幸い今回も何事も無きで雨戸も閉めずでしたが大阪の二人の娘は地震のように揺れて怖かったと言います
しかも関空がえらい事になってますね

確かに今月に入ってエアコンの要らない時間が長くなりました
本来はこれが当たり前だったのですが全ての学校にエアコン設置などと言われるまでになったのは温暖化の一言でしょうね
夏は暑いのが当たり前と呟きながら旅先の足湯ならぬ足水に暫し浸っておりました

金子國義の描く少年たち・・・まさにそのとおりですね
この光景をそこに持っていく手法はさすがです
登山の無い今回の九州はどこか物足りなさを感じていたのですがあまりにも視点の狭さに己を恥じました
あなたにはいつも反省させられてしまう
返信する
2018年日本の視覚化 (ランスケ)
2018-09-03 23:12:07
我ながら大胆なことをしてしまったと後悔しています(笑)
あのカルトな人気を誇る「ライ麦畑でつかまえて」を視覚化してしまったのですから。
サリンジャーが映画化を許さなかった青春文学の金字塔です。

大胆ついでに言ってしまうと、
それほど原作のイメージを損ねなかった視覚化だと思っています。
おそらく、この本が出版された1950年代よりも子供たちの置かれた状況は、より無意味で理不尽な無言の圧力に晒されていると思います。
「正直、公正」と自民党総裁選のスローガンを公表すると、
「それは安倍首相への個人攻撃である」と非難される今の日本です。
そういう社会を写真に写すと、こういう不気味な映像になると思います。
2018年現在日本の、The Catcher in the Ryeの視覚化です。
返信する
 (鬼城)
2018-09-03 08:08:17
田んぼの景色、一気に変わりました。相変わらず(失礼)読書家ですね。かかしの風景を「The Catcher in the Rye」を引用するとは・・・何か孤独感を感じます。涼しい秋、実りの風景から広い山野へ・・・私も涼しくなってきたので動きやすくなりました。歳を考えずに頑張りましょう。(爆)
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