「物乞う仏陀」で、ハンセン病と四国遍路に言及した記述に出会ってから、
私の、ノンフィクション作家、石井光太に対する印象は、ずいぶん変わった。
それは、民俗学者宮本常一の「忘れられた日本人」の中の「土佐寺川夜話」というエピソード、 . . . 本文を読む
200回目の石鎚入山の朝は、淡々と明けていった。 まるで日々の営為を繰り返すように。ハレやケガレといった非日常的要素を削ぎ落した 今日という一日が、また明日も訪れるであろうというルーティンワークのような。それは身勝手な人の感情移入をさらりと受け流した、とても平凡で凪の海のような朝だった。 . . . 本文を読む
冴えざえと銀世界を照らす月光ほど美しい光を知らない。 きらきら粒立った虹彩を放つ月下の雪面。 霧氷樹の枝先からも、月の雫の結晶のような透き通った金剛石の輝きが放たれる。 それは、魂の琴線を打つドビュッシーの「月の光」の旋律。 キーンと透徹した青白い光を浴びていると、静かに音が降ってくる。 微かに耳朶を震わす天上の音楽… . . . 本文を読む
年末年始は山へ入らない。 そういう風に、長く過ごしてきた。 たぶん母を安心させるための、私なりのルールだったのだろう。 でも、その母もいないわけだから、 このルールには、もう意味がない。 . . . 本文を読む