![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/03/6b5a756add87bf1ff3d78de422911d51.jpg)
この映画はセリフの中にもちらっと出てくるサリンジャーをモデルにしたものだと思うんですが、そうでなければ主人公のフォレスター(ショーン・コネリー)が処女作だけで文学部の講堂に肖像画が掲げられるような偉大な作家になっているという設定に無理があると言われるでしょう。つまりおとぎ話のようなもので、「マイ・フェア・レディ」のイライザをロンドンの下町からブロンクスの黒人少年ジャマール(ロブ・ブラウン)に移し変えたといえばわかりやすいように思えます。
ただジャマール自身も天才少年ということになっていて、奨学金をもらって大学に入り、そこのイヤミな教授(マーリー・エイブラハム、サリエリを演じた人ですね)が口走る一節をまるでイントロ・クイズのように次から次へと作家名を当てていくというこれまたイヤミなことをやります。
イライザはなんの取り柄もないことになっていますが、映画の観客にはヘプバーンの美しさは明らかですから、男であるヒギンズ教授によって引き立てられる「理由」は客観的に保証されています。ところが、文才を映画で表現するのはむずかしいですから、文学クイズのようなことになってしまいますし、同性愛っぽいとまでは言いませんが、女っ気の乏しい映画になってしまいます。アンナ・パキン演じるジャマールの彼女は味わい深い(ということになっているはずの)エピローグには登場しません。
登場人物はサリエリ教授以外はジャマールにやさしい人ばかりで平板です。やっぱりおとぎ話はミュージカルの方がいいんで、こうした重厚な感じの造りは向いてないように思いました。