銀河のサンマ

何でもあり

記憶の移動

2020-10-14 | ものかたり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

届いたダンボールを開けると野菜が詰まっていた。

1つ1つ手にとると、ふわっと記憶が移動するように遡っていく。

採ってい?と畑で祖父と茄子を下からのぞき、鋏で切った瞬間の香り。

芋ほり遠足で、土まみれになっても芋1つ掘れなくて泣いた日。

祖母が畑の南瓜を裏返すとナメクジがついていて叫んで逃げた私。

お土産の松茸を、どんな味やか?と家族で興味津々、囲って炙った日。

初めてマスカットを食べ、不思議な味と食感に笑った母と私。

大根葉に塩ふりすぎっ!と容赦なく叱られた日。

90で椎茸もつくりはじめたの?と驚いて庭裏へ走り見に行く私。

遡る記憶の感触、食感、嗅ぐ、体感、感情すべて巻かれ包まれる。

それはとても温かい。

さて記憶の移動から戻ってきた私は、俎板をおろしエプロンをつける。

糠漬けをしようかしら、と小茄子を手にとる。

有難くも調理でき、料理をする喜び溢れ、涙がぽつりと俎板へおちた。

 

 

 

 

 

 

※朝食風景

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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夢の中へとびこむ

2020-09-27 | ものかたり

 

 

 

 

 

 

 

 

今朝5時のおかあさんは夢の中。

笑うことが少ないおかあさんは夢の中。

きっと、ろくな夢しか見てないと思う。

魘されたり、泣いて驚いて目を覚ますことが多くなったとか。

仕方ない、私の出番のようね。

私はおかあさんの夢の中に飛びこむ。

みつけた、お母さん夢の中でボーッと立ってる(笑)

私の日常だった、あの頃みたいに、お母さんの胸の中に私はとびこむわ。

あっ! 

おかあさんは驚き直ぐに、満面の笑みで、珊瑚!とあの頃のイントネーションで私をよんだ。

という事は・・・と呟き、おかあさんは今は夢の中と気づいてくれたわ。

だって、私、一昨年、死んじゃったものね。

でも本当?! 私が本当の珊瑚か確認する為、おかあさんは自分自身を遠くに置き、私のオーラを読みとってくる。

私は生前と同じ私のオーラをフェロモンの様な勢いで放出したわよ。

わぁっ。久しぶり、珊瑚!珊瑚!珊瑚ーっ!

おかあさんは、私をグチャリと抱き、私の後頭部の匂いを嗅いだ。

後頭部は、おかあさんの皮脂で逆毛になっていくけど、覚悟しなくちゃね。

あー、珊瑚の匂いー、珊瑚っ、珊瑚っと連呼し私を抱く。

そして突然、夢の中で、おかあさんの昔の知り合いが登場しての。

これ私の知恵。

溺愛された私は、夢の中で私だけ登場すると、おかあさん永久に目を覚まさない気がしてね 苦笑。

知り合いと話の最中、おかあさんの肩、胸、首の後ろを、生前同様くるくる回る。

ちょっと子供が居るから、今は無理。珊瑚が好きだからさ。

おかあさんは知り合いの話をアッサリ断って、私を抱き込むわ。

これは想定内。

少し窮屈なので、おかあさんの胸から降りようとすると、はいはい、とおかあさんは再び抱きなおす。

おかあさんは全身の細部を敏感にさせ、私を感じ抱きしめて止まない。

それは、おかあさん自身、目覚めると終わりだとわかっているから。

私は、生前より強く抱かれているのを我慢しているけど揉まれているくらい強いの。

おかあさんも少し自分が強引なのを承知でいるようだけど、本能が無理らしい。

そこで、またひとり知り合いを登場させてみたわ。

少し話が長くなって、おかあさんは話しているうちに、突然、相手に放ったの。

少しは珊瑚のこと考えてっ! 

おかあさんの感情は怒りだった。

相手は私がみえないよ・・・

と呟いたものの、おかあさんは夢の中の私の一時さえも邪魔されたくなかったよう。

珊瑚、珊瑚って、おかあさんは再び連呼し、私を抱く。

おかあさんを楽しませ笑わせたかったけれど、おかあさんは怒りを発した。

私の知恵は失敗し、私は、ひょいとお母さんの胸から降りて、朝だよと去った。

おかあさんは、ハッと気づき意味がわかったような顔をしてた。

その後の様子はシメジとブナ姉さんに聞いている。

目が覚めた、おかあさんは落ち込んでいるかと思いきや、嬉しそうにしていたという。

私の懐かしい匂い、形、肌、毛質、毛艶、オーラ全てに満たされて

「あなたたちは、抱っこさせてくれないもん」とベッドから立ち上がり台所へ向かったそうなの。

お姉さんたちのジュレ、ちゅーる、カリカリは出たものの、普段の缶詰がメニューから抜けていたらしいわ。

それも気づかず、にたーっとした顔で、ししゃもを焼きながら

ね?ししゃもは赤身、白身? ねえ?!と呟き、あぁ、魚卵類ねっ♪と、ひとり頷いていたという。

おかあさん、それくらいが丁度よいの。

おかあさんは、赤身、白身か迷ってるくらいの頭で生きてくれた方が私、安心するの。

ね、おかあさん。

 

 

 

 

 

 

 

  今日のおかあさん。

 

おかあさんは正夢、夢の言伝、ただの夢の見分けをしています。

正夢は、ぼんやり受けとめて、ゆっくり起き、考え込む姿が見受けられます。

言伝は、ヒントの様なものが来るので、直ぐ起きて解読し始めます。

ただの夢とわかれば容赦なく頭で操作し、切り捨て次の夢へ入っています。

どれも寝ているあいだ表情にでるので、私は、ほったらかしています。

今日のような夢は・・・秘密です。

おかあさんは、1日、珊瑚を思いだしニタっとしておりました。

ブナより。

 

 

 

 

 

 

 

 

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銀の玉の露あそび

2020-07-18 | ものかたり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


カイモの葉の中の玉の露。

銀に輝く玉の露をコロコロ落とさず最後まで持っていれるのは、だーれ。

梅雨終わりの旺盛に咲くカイモの葉たちは競うように銀の玉の露で遊びだす。

少しの風くらいへっちゃらよ。

あなた余り押さないで。

この土地ちょっと狭いのよー。

やだやだ、コロコロ転がるわ。

カイモの葉たちは笑う。

ところでね、言い伝えを聞いたことがあるの。

なにかしら。 

カイモたちは葉を寄せ合う。

ある子がね、私たちの葉で傘になると聞いて隣の畑に行ったって。

あ、聞いたことあるわ。

隣の畑の大きなカイモの葉を鎌で切って、土砂降りの中、傘にしたっていう話でしょ(笑)

そうそう。

何でも絵本の中の動物が、カイモの葉を傘にしてたのを見たんだとか。

動物ってカエルだったらしいわよ。

それを、ある子が真に受けてチャレンジしたんだって(笑)

ふふ、らしいのよ。 

さすがに土砂降りで、雨なんてしのげないわよねー。

そうなの、そうなの。

人間の子供が入れるものですかぁ(笑)

急いで土砂降りの中、隣の自分の家まで走って帰って、ずぶ濡れで叱られて風邪ひいたとか(笑)

土砂降りでするかしら? 

子供だったのよー。

子供だったのねー。

いや、可笑しなチャレンジャーなのかも(笑)

でも大きくなるまでに3度したらしくて。

あはぁ、知ってるー。

懲りずに(笑)

思春期になってもチャレンジして制服ぐっしゃり。

帰るなり、脱ぎなさーぃ!!って風邪ひいて、やっと止めたらしいの(笑)

いつも土砂降りの時を選ぶらしいわね。

思春期も子供だからかしら?

いや可笑しなチャレンジャーなのよ(笑)

可笑しなチャレンジャーに成長したのね(笑)

あ、ほらほら、私たちを写真撮るんだって。

やだぁ、笑うじゃないっ!

言い伝えの子って、もしかして目の前のカメラ構える子じゃない?

どうして言うのよっ。

わかってても言わないのぉ、大きな葉を仰いで笑うじゃない(笑)

聞こえてたら、どうするのよっ(笑)

聞こえるはずないでしょ(笑)

やだ、笑うわっ(笑)

うっかり葉を仰いで笑っては駄目よっ(笑) 銀の玉の露が零れるじゃないっ。

そうよ、私たち銀の玉の露を最後まで持っていれるのは、だーれ。してたのよ(笑)

笑うわよ、ほら、真剣な眼差しでカメラ持って私たちをみてるわっ。

私たちを真剣に見てる顔を真剣に見ては駄目、この子だもの(笑)

笑って揺れちゃ、駄目よ。

銀の玉の露、ゆらゆら。

ほらっ、澄ました顔して揺れないで。

ほらっ、揺らさないで。

ほらっ、銀の玉の露を持ったまま美しく緑豊かな表情で。

さ、さ、この子が言うわよっ!

はい、チーズっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※昨日の朝の散歩道

 

 

 

 

 

 

 

 

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桜の下のランドセル

2020-03-19 | ものかたり

 

 

 

 

 

 

 

満開の桜で入学式

キミがえらんだランドセル

太陽あたってピッカピカ

満開の桜の下を歩くキミ

母は桜のような喜びと桜のような切なさが交じり合った

あの時のランドセルの重さをキミは覚えているだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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菜虫化蝶

2020-03-15 | ものかたり

 

 

 

 

 

 

害虫とよばれる青虫は這って白菜を齧りながら私に言った。

私ね、ヒラヒラ可憐な白い蝶になるため今を乗り越えるの。

やがて青虫は蛹になった。

蛹の中は液体のように溶けていると聞いたことがある。

季節は過ぎ、少しずつ淡い緑が萌えはじめる。

蛹から目が覚めた蝶は立派で可憐な姿の蝶だった。

おはよう、ひさしぶり。お目覚めいかが?とたずねると

蝶が蛹の殻からフッと離れ、私に言う。

あら、おはよう。私は蝶。あなたは誰?と不思議そうな目をした。

私の周りに春がいっぱい、とくに黄色い菜花が好きだわ。と蝶は嬉しそうに去っていく。

蛹の中で青虫が溶けて液体の様になるとき、害虫よばれの白菜を這い齧る青虫時代や蝶を夢みた記憶も溶けて無くなってしまったようだ。

蝶は今を謳歌し可憐さは輝かしくもみえる。

無事孵化した仲間と合流しヒラヒラ舞う姿を私は見届ける。

ただ潜在的に残る記憶もあるのだろう、白菜も今きみが好きな黄色い菜花もアブラナ科じゃないか、と突っ込みたくもなった。

少し肌寒くポケットに手を突っ込み家の中へもどる。

さて16団子をつくる用意でもしようか、台所へ向かう。

 

 

 

 

※ 写真と文は関係なし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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