北野幸伯氏のメルマガより
私の妻は、父親がウクライナ人、
母親がロシア人です。
つまり、ウクライナ人と
ロシア人のハーフ。
しかし、生まれた時は、
ウクライナもロシアもソ連の一部だったので、
「ハーフ」という意識はありませんでした。
ところが、ソ連が崩壊し、
ウクライナとロシアは、
別の国になりました。
そして今、父の国と母の国が戦争をしている。
なかなか、メンタル的に厳しいようです。
そんな妻には、「こまった癖」があります。
自転車のカギをかけないのです。
なぜかけないのかと聞くと、
「日本人は他人の物を盗まないから」だそうです。
彼女は、今から22年前、
日本の大学に留学していました。
その時、長年日本に住んでいるロシア人から
「僕は長年日本に住んでいるけど、
自転車のカギをかけたことは一回もない。
この国に泥棒はいないんだ!」
と自信をもっていわれたそうなのです。
ちなみに、ロシアのマンション近くに
駐輪場はありません。
自転車はありますが、
みんな乗って帰ってきたら、
自宅マンション内に入れます。
なぜ?
わかりますね。
盗まれる可能性がとても高いからです。
だから、妻がはじめて日本に来た時、
「街中に自転車が山ほどある。
なぜ盗まれないのか?」と
不思議に思ったそうです。
▼ついに自転車が盗まれたが・・
5月はじめ、妻の日本信仰を
崩壊させる事件が起こりました。
自転車が盗まれたのです。
もちろん、カギをかけていなかったから
盗まれたのです。
その後、バタバタしているうちに
時間が過ぎ、2週間過ぎてしまいました。
彼女は、自転車が必要な時は、
私のものを使っていました。
すると先日、息子が通う
スイミングスクールから
電話がかかってきました。
なんでも「ある男性が、
北野さんの自転車を見つけたので
とりに来てほしいといっている」と。
どういう話でしょうか?
ある男性は、学生さん用の
アパートを所有しています。
そのアパートの駐輪場に、
「チャイルドシートつきの自転車」があった。
男性は、「変だな」と思い、
住人の学生さんたちに、
自転車のことを聞いてまわりました。
そして、この自転車は住人のものではない
ことが判明しました。
よく自転車を見ると、
スイミングスクールのシールが貼ってあり、
会員番号が書いてありました。
その男性は、スイミングスクールに電話し、
会員番号を告げました。
そして、スイミングスクールから私に連絡があった。
私はその男性に電話して、
先日めでたく自転車が戻ってきたのです。
この話、ロシア在住28年の私にとっては
驚愕のできごとです。
もちろん、外国でも、
こういう話がゼロとはいいません。
しかし、日本では、こういう話をしばしば聞くのです。
その後、妻は自転車のカギをかけるように
なったのでしょうか?
以前は、「盗まれないから」といって、
カギをかけていなかった。
今は、「盗まれても戻ってくるから」といって、
カギをかけていません。
私は、モスクワ暮らしが長く用心深くなりました。
一方、妻は、日本人よりさらに
「平和ボケ」になったようです。
何がいいたいかというと、
「日本はいい国だ」ということです。
写真は今年のデンドロビウム