チーママの庭とウサギたち

チーちゃんのママことチーママです。植物とウサギと戯れ、マイペースでハンドメイドをしています。

エンセファリトゾーン

2008-10-16 23:44:32 | ウサギ
<ご注意>
この内容は、あくまでも素人で一飼い主が、獣医学雑誌を読んでまとめておりますので、完全だとは保証できません。  「かーさんは、そう受け取った」という事ですので、そのおつもりでお読み下さい。もっと専門的に詳しく正しくと思う方は、VEC23号をお読みくださるようお願いいたします。


過日取り寄せたVECを、昼休みになると読んでおりました。
もちろんお題は「エンセファリトゾーン症(EZ)」です。
以前から先生は「感染率は高く、神経症状が出たらEZの検討を」と言っておられましたが、それがここへ来てやっと他の獣医さんたちにも認められた気がします。
そこで、これくらいは飼い主さんも知っておいた方がいいかな?と思うところを、まとめてみました。


今回は20都道府県、36動物施設、337検体での評価です。
[結果]
・地域に差はなく、日本全国に広がっていると思われる。

・全対象ウサギのEZ抗体検査(EZにかかると出来る抗体反応を検査する)陽性率は6割を越えており、これは海外での報告と同じ。

・単独飼育より複数飼育の方が、感染率は有意に高かった。
 (有意に高いとは、その高い数理は絶対とは言えないけれど、ほぼ断定しても良いくらい、他と差がある時につかう言葉。統計に、絶対はないのよね。)

・単独飼育では、健康なウサギや他の病気のウサギより、神経症状のあるウサギの方が陽性率は有意に高かった。

・複数飼育では、神経症状のあるウサギだけでなく、健康なウサギや他の病気のウサギも、高い陽性率だった。 
(多頭飼いの場合は、1匹がEZになると、他の子も感染しやすい事を示唆している。)

・30頭(すべて無症状:健康)のウサギを飼っている施設で
 「以前から飼っていたウサギ>陽性17頭:擬陽性2頭:陰性2頭」
 「新しく来たウサギ>陽性2頭:陰性7頭」
 と、一緒に飼われているうちに、感染が広がった事が推測される。
 その後、陽性・陰性別々に飼育したところ、新たな陽性固体は出ていない。 (学校飼育動物だったのかしら?)


つまり、全国どこでもEZにかかる可能性はあり、特に1匹で飼っているウサギさんが神経症状を示した場合は、EZを疑う必要があるという事です。
そして、もう一つの神経症状を示すのがパスツレラ。
同じような症状(斜頸、眼振等)が出るので、それとの判別が難しい。
でも今回は、下記の症状が診られた場合は、EZの可能性が高い事を提示してくださったのがありがたいです。

[パスツレラには見られず、EZに見られる症状]
・姿勢による眼振の変化
・垂直眼振
・意識レベルの低下
・後躯(体の後ろ半分)のふらつき
・スターゲイジング(星を見上げるように、頭を上にそらす)


こうした症状の観察に加えて、レントゲンやCTで鼓室胞(鼓膜の後ろのお部屋)の状態確認をする必要があります。
パスツレラだと、このあたりに病変が見られることが多く、EZとの判別に役立ちます。
(もっとも、両方発症している可能性だってあるんですけれど:涙)

今まで聞いたお話では「しゃっくりをする」「体の横をビクビク引きつらせている」などというウサギさんが、後日EZだったと分かった事もありました。
特に若齢ウサギさんですと、「どこかおかしいのかな?」と様子を見ているうちに、急に状態が悪くなり亡くなってしまう(劇症)事もあり、飼い主さんは心を痛めます。年齢がいくほど、劇症は少なくなるようですが。
でもやはり、EZフリー(陰性)のシミユキが「始めて感染した時が怖い」ときち先生がおっしゃるので、我が家ではシミユキが他のウサギさんに接触するような事は避けましたし、飼い主が他のウサギさんを触った場合は、よく手洗いをして・・・と、用心していました。



では、今までは何故EZはなかなか認められなかったのでしょうね?
それは、一つにはEZと確定するには、脳や腎臓の生体検査が必要だった。
つまり、生きているウサギさんでは検査できない。
(人間なら、ちょっと大変だけれど、腎生検が出来るのですが。検査処置後の腎臓の出血を防ぐ為に、長時間じっとしていなくてはならないので、ウサギさんには無理ですね。それに臓器くまなく見ることは出来ないし。)
つまり死後に組織を摘出して検査してみなくてはならない。
自分のウサギさんを剖検(解剖検査)に出す飼い主さんは、ほとんどいません。
例え剖検しても、「組織の変性はみられるけれど、EZの虫体が確認できなかった。だからEZとは言えない。」というわけです。
でも考えれば、ただでさえ剖検に呈されるウサギさんは少ないのに、その中でも「EZではないか」というウサギさんは少ないのです。
そして、EZの疑いをもたれていたウサギさんであれば、生前に駆虫薬などの投与をしている事も多いはず。
つまり、投薬して虫本体は駆除されて、残ったのは病気の痕(あと)だけ、という事も考えられるのです。
そのあたりも、今回の記事は踏み込んでくださっていて、本当にありがたかったです。

だたし、神経症状のほとんどがEZだというつもりは、決してありません。
「罹患率が高いから、神経症状=EZだ」と治療して、本当は他の病気だった。
というのでは、お粗末過ぎますからね。
でも今まではあまりにも「神経症状=パスツレラ」だったので、これからは「パスツレラかEZか、それとも他の原因かを、判定しなくては」という獣医さんが増えてくれると思うのです。
しょっちゅうブレーカーが落ちるのを「また家電の使いすぎ!どれかスイッチ切って!」と言っていたのが、本当は壁の中の配線が腐食しつつあった為の過電流だった、なんて言うのと同じです。
見当違いの原因を突っついたって、症状はひどくなるだけで、最後はどうにもならなくなりますものね。
もっと気軽に抗体検査をして、EZの可能性を検討して欲しいのです。


参考文献:ウサギのエンセファリトゾーン症の国内浸潤状況および血清診断の評価:大橋英二他
(つづく)

関連ページ 斜頸と眼振 前庭疾患

コメント (2)
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