<ご注意>
この内容は、あくまでも素人で一飼い主が、獣医学雑誌を読んでまとめておりますので、完全だとは保証できません。 「かーさんは、そう受け取った」という事ですので、そのおつもりでお読み下さい。もっと専門的に詳しく正しくと思う方は、VEC23号をお読みくださるようお願いいたします。
今日は、斜頸・眼振等の前庭症状のあるウサギさんは、どのようなアプローチで治療していくか、というお話です。
前回書いたように、色々な検査の他にEZの抗体検査を利用して判断基準の一助にするわけですが、検査結果を待つうちにも、ウサギさんが気分が悪くて十分食べられなかったりして、衰弱しては何もなりません。
という事で、とりあえずは対処療法をしなくてはなりません。
<診察>
耳鼻科的診察検査。血液検査。EZ抗体検査(1回目)、レントゲン(耳の中の異常、歯の異常、腫瘍などないか等。
ここで耳に異常があったり、腫瘍がみつかれば、そちらの治療にはいります。
EZ抗体検査以外のものに異常が見られなかった時は、抗体検査の結果が出るまでは細菌性を疑って抗菌剤と、それぞれの症状を軽くするための対処療法をおこないます。
(※これには、かーさんはどうかなぁって思うのです。
もしEZだった場合は症状が進んだり、治療後の神経症状の回復が悪くなったりする可能性があるのですから。
見当違いの治療をしない事も大事ですが、どれだけの後遺症が残るかは、ウサギさん本人と飼い主には大問題ですからね。)
1回目の抗体検査の結果が出たら
低い数値>細菌性と考えて、今までの治療を続けます。
疑わしき>時間をおいて2回目の抗体検査をしますが、それまでの間は、状態によって今までの細菌性の治療に加えて、EZの治療もします。 2回目の結果で、数値が変わらなければ細菌性。高くなればEZ症として、駆虫剤の使用開始。
有意に高い数値>EZ症として、駆虫剤を使用。対処療法もします。
ということですね。
この間の注意点としては「栄養管理・安静・脱水症状に注意」です。
<栄養管理>
とにかく目が回っていたり、気分が悪かったり、不安だったりで、食べなくなるウサギさんが多いです。
牧草やペレットを食べない時は、ペレットをふやかしてみたり、野菜を与えたりと、少しでも食べられるものを考えて与えます。
でも食べられない時は、衰弱してしまうばかりですから、獣医さんの指示に従って、体力温存のために強制給餌と投薬が必要になります。
(強制給餌用の餌もありますが、食べつけないものは拒否するのがウサギさんですから、普段食べているペレットをミルやミキサー、すり鉢などで粉末にし、茶漉しでこしたものを、水や無塩の野菜ジュースなどで溶いて使う飼い主さんもいます。野菜ジュースは、少量であれば、野菜をみじん切りにしてよくたたき、だしを入れる袋などに入れて絞っても作れます。)
<安静>
静かで(時には薄暗い)「ウサギさんに極力刺激を与えない、安心できる環境」に置いてあげることが必要です。
今回は、ペットシーツの上に新聞紙を敷いて、その上に牧草を敷き詰めるといった事が書かれています。
何しろ床をフラットにして、ウサギさんが動いても怪我をしないようにする必要があるのですね。
感覚がおかしくなっているので、トイレに入ろうとして怪我をすることもあるので、そうしたものは全て排除です。場合によっては、動き回らないように、体が安定する様に、狭い箱に入れたり、ケージの中を狭くする必要もあります。
食欲が安定し、ローリングなどがなくなれば、早期に運動の再開をします。
(EZ症の時は、突然前に飛び出したり暴れたり、ローリングしたりという事があります。大変敏感にもなっているので、少しの刺激でも過剰に反応してしまう事もあると聞いています。かーさんは、壁面にもぶつかっても大丈夫な工夫が必要だと思います。斜頸がひどくて、片目が床やモノにこすれてしまうような場合は、タオルなどを丸めて体の向きを補正してあげる等の工夫も必要ですね。)
<脱水予防>
食べられないのですから、当然水分が不足します。体の中の水分が減ると、色々な臓器に負担がかかり、回復不可能な状態になることがあります。
強制給餌をしていても、絶対量が足りないこともありますので、状態を見て皮下補液や静脈注射で必要なものを補います。
(家でお世話している時は、背中の皮膚をつまんで離すと、脱水がある時は皮膚の戻りが悪くなる、張りが無くてダランとすると言ったことを見るようにと、教えてもらっています。これは食滞などの時にも役立つ、飼い主の出来るチェックポイントです。)
<ステロイド>
前庭疾患の場合は脳内に炎症が起きているので、炎症緩和を期待してステロイドを使いたいが、思ったほど効果が得られないので、副作用を考えてあまり与えない。
副作用は腎毒性、肝毒性、消化管潰瘍、免疫抑制によるEZ症や細菌感染症の悪化。特に高齢のウサギさんは、腎機能低下があるので、奨められない。
どうしても使う場合は、短期間・短時間排泄型のものを使用。筆者はプレドニゾロンを使用。
(この薬は、良く聞きます。)
ステロイドを長期使用する場合は、消化器がダメージを受けていないか、便潜血の検査を定期的にする。
(とは言うものの、実際にはステロイドを投与すると症状が良くなる、ステロイドが切れると症状が出るという話を、今までも飼い主さんたちから聞いてます。
こうなると、与えたくないあるいは与えても無駄という獣医さんと、少しでも症状を緩和したい飼い主さんとのズレが出来て、飼い主さんのストレスになるようです。
そして最終的にウサギさんが亡くなった場合、もしステロイドを与えていたら・・・という思いが、飼い主さんの心にシコリのように残ります。
なので、このあたりは飼い主さんとのインフォームドコンセントを大事にしたうえで、もっと検証してほしい所です。)
<抗生物質・抗菌剤>
細菌性が疑われる場合は、こうした薬が必要です。
ウサギには使えない抗生物質(腸内の細菌叢を壊し、致命的な腸毒性の症状を起こす。前庭系に毒性がある薬も。)がありますが、少なくともウサギさんを診る獣医さんなら、当然ご存知です。
前庭症状の治療の他に、斜頚で頭が傾き、目を傷つけたりするので、その治療のために使われることもあります。
<駆虫剤>
EZに罹患しても無症状の事もあるが、出来るだけ積極的に駆虫した方が良い。
オキシベンダゾ-ル、アルベンダゾール、フェンベンダゾールなど。アルベンダゾールは、骨髄抑制(骨髄の働きを阻害する)を起こすこともあるので、要注意。
(このあたりは、プロにお任せです! 一定期間投与後、症状が改善しても、抗体検査で再チェックしてもらいたいですね。)
<鎮暈薬>
異常行動を抑制するために、使うこともあり。
犬猫では使われているが、ウサギでは安全性が確立されていないので、十分なインフォームドコンセントが必要。
<眼科薬>
眼球を傷つけた時、何らかの炎症を起こした時などに必要です。
また、あまり瞬きが出来なくて、眼球が乾いてしまうこともあるので、保護のために処方されることもあり。
(EZ症の症状の一つにブドウ膜炎など、眼科的症状もあります。)
<消化薬>
もちろん食べられないことによる、消化器官のシステムダウンの予防と改善が目的です。
食欲増進剤や消化補助剤等を、体重低下が止まるまで与えます。
またストレスによる潰瘍やステロイドの副作用を、予防・改善するためにも必要です。
この他に、原因によっては(中耳炎等)手術も必要になりますし、脳圧を下げる為に投薬したりといった、症状にあわせた治療もあります。
<予後>
多くのウサギさんは、多少後遺症が残りますが(斜頚や麻痺等)、その状況に上手になれて、不自由なく暮らします。
(ただし治療に入るのが遅かったり、治療に手間取ると、後遺症も大きくなることがありますが、飼い主さんの努力で長生きする子も増えています。)
以上が、今回かーさんが雑誌から受け取ったことなのですが、ステロイドは「う~ん(――)」だし、EZの治療に入るタイミングがちょっと遅い気がするのですが。
後遺症を出来るだけ残さない方向に持っていくには、「だろう」の段階でも両方の治療を始めて欲しいなって思います。
もちろん経験の豊富な獣医さんが診て、「こりゃEZじゃないだろう」と見当をつけてのことなら良いのですが。
これからもっと沢山の獣医さんが、EZの治療に当たってくださると、見分けの見当もつけられる様になると思います。
何と言ってもかーさんは、獣医さんの経験則を大事にします。
でも飼い主としては、何にせよ症状の緩和に努めて欲しいのですよね。
まぁ、いろいろな薬を合わせて使って、お互いに効果を相殺しあうという事だってありますから、やはり普段から獣医さんとの信頼関係を築いて、よくよく相談することが一番大事かと思います。
最後の「おわりに」書かれていたことは、かーさんもまったく同意です。
つまり…
前庭疾患を診断するのはとても難しいけれど、末梢性前庭疾患なら細菌性中耳炎や内耳炎、中枢性前庭疾患なら寄生虫性のエンセファリトゾーン症の治療をする。
特定できない時は、抗生物質・抗菌剤、抗原虫薬の治療を行うしかない。
前庭疾患の治療は、とかく後手後手にまわりやすいので、出来るだけ早期に検査をして欲しい。
という事です。
本当にそうなのです。今までどれだけのウサギさんが「EZの検査は無駄」と言われ、斜頸・眼振・ローリングはパスツレラと言われ、ちょっとした症状に飼い主さんが気付いても「別に異常がない」と言われて、悲しい思いをしてきた事か。
こういう文献が出ても、「病院に来たウサギだから、陽性率が高いのは当たり前。飼いウサギ全体から見れば、罹患しているウサギはそれほど多くないはず」と言う意見も残ると思います。
でも飼い主さんがこういう病気もあるんだと言う認識を持てば、違ってくると思うのです。
最後に、我が家の先生の口癖ですが、
「決して諦めてはいけません。どんな時も、ウサギさんのために何かしらやってあげられることがあるものです。」
時として「これ以上はどうしようもない。年だから仕方がない。諦めてください」という獣医さんがおられるようです。
その意図するところが「飼い主さんがこれ以上苦しまないように」と善意から出た言葉だとしても、ほとんどのウサ飼いさんは深く傷ついています。
ウサギさんを支えるのは飼い主です。
そして飼い主を支えてくれるのが、獣医さんです。
その獣医さんが見放してしまっては、獣医学に素人の飼い主は、苦しむウサギさんを抱えて途方に暮れ、自分の非力に涙するのです。
それは何も、EZに限ったことではありません。
「何かしらする事がある。諦めないで」というのは、ウサギを良く診る獣医さんほどおっしゃいます。
針灸などの東洋医学だって、ホメオパシー医療だって、何が効くかは分かりません。
ただし、やたらなクチコミであれもこれもと、特にサプリメントなどを与えるのはやめましよう。
同時に治療している獣医さんたちは、ウサギさんが治療に反応した時だけでなく、思うような反応が得られなくても、それが何によってもたらされたか正しく把握できなくなります。
もし何か別のものを試す時は、かかりつけの獣医さんに申告したり、相談してからにしましょう。
少しでも闘病中のウサギさん達が、良くなりますように。
<参考文献> ウサギの前庭疾患の診断と治療:小沼守
(埼玉県 おぬま動物病院 院長)
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斜頚と眼震