待ちわびていた映画「四日間の奇蹟」の初日、いそいそ見に行った。総入れ替え制の映画館でなかったので、2度続けて見てしまった。はまる性格なのである。
だって、吉岡さん主演だもん。好きな俳優さんを徹底的に身びいきして、映画の感想を書くことほど楽しいことはない。
100万部を越す浅倉卓弥のベストセラーの原作はもちろんのこと、公開の1ヶ月ほど前から、公式ページやファンサイトを熱心に読み、関連本も買って、映画を見る前から、事前情報を、やり過ぎるくらい、ばっちり仕入れた。待てなかったのだ。
月刊「シナリオ」に掲載された完成台本と、ビジュアルストーリーブックの撮影台本、さらに実際の映画で、それぞれ何が削られたのかがわかってしまったくらいである。
こんな私だから、この作品の最大の課題であった障害がありながらピアノに天才的才能を示す14歳の少女、千織に、彼女をかばって瀕死の状態になる28歳の真理子の心が宿るという奇蹟を、二人の女優が演じることが、違和感なくスムーズに受け入れられた。
真理子と千織の入れ替わりを、映像的には、真理子になったり、千織になったりしながら見せるという佐々部監督の手法を、原作を読んでいず、事前に余計な情報の入っていない人が見ても受け入れられるかどうかが、この映画の要であり、チャレンジだ。
これは、活字の世界ではなく、セリフに頼らない映画ならでは実験的手法だと思う。
佐々部監督は、一貫して「人間」を撮る監督であり、俳優の演技力を信頼する。ラブ・ファンタジーに属する映画であるが、CGIなど極力使わず、俳優のリアルな心の動きを主軸に、画面を重ねていく。
千織役を演じる尾高杏奈は、ピアノが弾けるということを前提に、サバン症候群の少女を演じることに加えて、28歳の真理子を演じないといけないという大変高いハードルを課せられた。
佐々部監督は、真理子役の石田ゆり子に、真理子が宿った状態の千織のパートも、全部セリフを覚えて演じてもらって、ビデオに撮った。そしてそのビデオを尾高杏奈が見て、真理子のクセやしゃべり方、姿勢や目線の動きを学ばせて、演出するという方法をとった。まあ、何とご苦労なことだと思うけれど、1000人からの応募のオーディションで選んだとはいえ、演技的に未知数の尾高杏奈のために、最大の努力を払ったということだろう。