みなさまこんにちわ。
NEURAL GP networkのGP researchのコーナーを書きましたので転載します。
全体の管理者(兼)GP Research プロジェクトリーダーの燃える闘魂 です。
このコーナーでは研究面の情報も提供いたします。
今回は総合診療医のメンター&メンティーのお話です。
実は島根の総合診療のAcademic activity(研究面での貢献)は本当に高いです。
僕らNEURAL GP networkでは臨床医が日々の診療で遭遇した疑問をリサーチクエスチョンとして、実際に研究してアウトプットしたり、また学びになる症例は一生の教訓としてCase reportとして楽しく発表することを目標に活動を行っています。
ビジョンは”研究業績”の為の研究ではなく、臨床現場や政策に応用するための研究なので、現場の疑問がとてもおもしろいです。
研究に関しては、鉄は熱いうちに打て!ということで、現場の総合診療医の高い志の”鉄”は、鍛えて鍛えて”鋼”になるように、シマネのみんなで一生懸命がんばり始めました。
やっぱり僕の経験的に後期研修医の間にまず英語でCase reportから始めておくと、PubMedの使い方や効果的な検索の仕方を習得できるので非常に学習効果が高くなると思います。間違いありません。
Case reportを一度投稿する過程を練習しておけば、原著論文の投稿プロセスはほぼ同じですので国際誌投稿への心理的バリアも殆ど感じなくなると思います。
アウトカムを出すために何が一番重要かということを考えると、海外の研究でも多数エビデンスがでております。それは、研究においてはMentorshipが一番重要であり、Mentor(メンター)もMentee(メンティー)も意識してMentorshipを考えると良い相乗効果が生まれます。1)
教えてもらえる事を当たり前と思わないこと、感謝できること。また適切な姿勢と距離感をとれること。優秀なメンターはほぼ100%激務です。多くの場合、病院内外、県外、国外と色々なメンティーに対してメンタリングを要求されるからです。
そして、やはり優秀なメンターとメンティーから構成されるネットワーク網が重要であることがわかってきています。これはエビデンスとして面白い論文でした。)2
一般書では、やはりSanjay Saint先生の書籍が素晴らしいです(徳田先生方が翻訳されていますので是非)。)3 下記
是非、お読み下さい。Sanjay Saint先生は僕の尊敬しているホスピタリスト、医療の質/安全、メンタリング、臨床研究の分野で米国を牽引する素晴らしい米国のリーダーです。
研究の全ての工程は、経験的にも適切なメンターがいればかなり心理的肉体的負担を少なくすることができます、結果的にあっという間に成果を出す事ができます。
総合診療医における研究ではメンターが、とても重要だと感じる今日この頃、僕がお世話になってきたメンターの先生達にはやはり育てて頂いた感謝の気持ちしかありません。
初回はこの辺で、次回からこのコーナーでは我々シマネの総合診療医達が臨床現場で頑張って実施して発表した研究成果をなるべく楽しく分かりやすく紹介していこうと思います。
- Vineet Chopra and Sanjay Saint. Six Things Every Mentor Should Do. Harvard Business Review, 2017 March.
- Chaiyachati, K.H. et al. The Association Between Mentor-Mentee Network Features and Publication Productivity Among Early Career Academic Generalists. J GEN INTERN MED 34, 346–348 (2019).
- 医療者のための 成功するメンタリングガイド. 徳田安春(監訳) 医学書院, 2020.12月
チームビルディング
これまで僕が若い頃から一番大事にしてきた内容です。
組織運営やチームのマネージメント、また笑顔で人が集まるための秘訣をGlobis経営大学院の田久保先生に教えていただきます。
一人で2倍の分を成長することは、ある一定の年齢になると難しいです。
でも、ネットワークや仲間、チームがあれば2倍どころか、4倍も16倍も簡単に可能です。
世界中の同じような頑張っている人とつながると、どんどん可能性が広がるというのもネットワークで説明できるように思います。
このマネージメントやリーダーシップの内容は翌日から必ず現場でお役に立つとおもいますので医療者はこの機会にみなさまご参加いただけますと嬉しいです。勿論無料で日本の様々な医療組織がよくなることを考えて外部開放します。
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職場で他診療科や上下関係、他職種、または同僚がなかなか上手に動いてくれない!そうお悩みの事も多いかと思います。
そこで、全ての医療職/学生を対象にグロービス経営大学院研究科長 田久保善彦先生に、【チームを造り、成功させる秘訣】のエッセンスを教えてもらう機会を作らせていただきました。
下記から、田久保先生の事前レクチャー(8分程度)を6本を見れますので、参加される方はぜひ事前学習されて望まれると当日さらに深い学びが得られると思います。
参加者は"志"のある方ならばどなたでもOKです。
みなさまのご参加を本気で待っております!!
(島根県の総合診療医はこの機会に一緒に学びをお願いします)
9月22日夕方18時からZOOMで開始致します。
申し込みはこちらから (URLを配布致します)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeI_7R3SipJBlIzu9kjEZdi5s065dz6EYe9QIVagI5EhIaEwg/viewform
なぜ島根なのかも、全く分からないと聞かれるので、これからこれまでの事やこれからの事を少しずつ少しずつ小出しにしていこうと思います。
ベテラン先生に聞きにくい医師のお金の話をYoutuberのなおき先生が教えてくださります。私は全然絡んでませんが、もうそんな画期的なところまで・・・
学生研修医のみなさん、お問い合わせは!!
島レジプロジェクト-チーム ZERO- へ直接お願い申し上げます。
shimaresiproject@gmail.com
みなさまこんにちわ。
自分がEditor in chief をつとめるジェネラリストコンソーシアムの方に書いた寄稿をこちらにも載せておきます。
正直僕はこのCOVID-19が自分に与えたは影響は計り知れません。かなり大きな方針転換や覚悟を強いらされ、考えさせられた経験になっています。今日は、Status quo bias:現状維持バイアスについてです。コロナという、変わらざるをえない外圧を受けた時の人間としての挑戦と、感情の乱れを毎日俯瞰的に観察するようにしています。
COVID-19から学んだこと
COVID-19によるパンデミックはマクロレベルで我々人類の新しい生活様式を模索するようになったと至る所で叫ばれている。そして、私がフィールドとする大学医学教育改革の仕事でも同様の言葉が使われている。しかし、そもそも“新しい考え方”、“新しい試み”等、謳われている内容を深く省察してみなければならない。
例えば、インターネットを用いて、新しくオンライン授業に移行することできた。各講座の教育が見える化された。決定事項を伝える無駄な会議が大きく減った。医学生とオンラインでセミナーを全国レベルで開くことができた等々。よくよく考えてみれば、これらの多くはすでにCOVID-19が到来する前から一部ですでに理論的にまた技術的に確立され実施されてきたことばかりである。
それを採用してこなかったのは我々の判断である。
今更ながら新しくともなんとも無い、以前よりある考え方や技術的なものをCOVID-19のおかげで”何とか取り入れることができた”という陰の側面の方が大きいかもしれない。Evidence Based Medicineは我が国に普及してきているにもかかわらず、おそらく医学教育面に関してはいまだEvidence Based Educationが採用されているとは言えない。大学医学部は、本来有用なアイデア、合理的かつ有効な医学教育手法などは大学の現場で仮説を検証して、実証していくべきである。医学部は教育機関であり、医学教育研究の最大の実践場であるはずであるからだ。
人は簡単に変われ無い、よって私を含む大学教員も簡単に変われない。これは人類が生存するために、デフォルトとして脳は変わらない事を選ぶ傾向があるためだ(Status quo bias:現状維持バイアスと呼ばれている)。強烈なバイアスは、より強い意志とシステムの構築で教員の省察を促し、De-bias(バイアスの除去)することでしか対処できないと私は考えている。医療の質と安全の分野では米国 Institute for Healthcare Improvement からRCA2 (Root Cause Analyses and Actions)が2015年に発表されたが、最後のAの文字の意味はActionである。結局はどの領域でもActionが全く足りていないということがうかがえる。これは我々の日常教育現場にそのまま当てはまるかもしれない。教育の理論や評論はもういい、我々は実践してこそ価値のある現場にいるのだと常々感じる。COVID-19が私にくれたもの、それはシステムを大きく変革するチャンスであり、医学教育の実践(Action)へ舵取りを行う機会であったと思う。
1) Dedeilia A, et al. Medical and Surgical Education Challenges and Innovations in the COVID-19 Era: A Systematic Review. In Vivo. 2020 Jun;34(3 Suppl):1603-1611.
2) Kahneman, D, et al. (1991). "Anomalies: The Endowment Effect, Loss Aversion, and Status Quo Bias". Journal of Economic Perspectives. 5 (1): 193–206.
皆様こんにちわ。
新型コロナウィルスの猛威は今度は世界の至るところに拡散し、日本ではニュースになっていない国で惨劇です。ボストンも毎日500人レベルで新規感染者が出ているようで非常に今後どうなるか見えない状況です。
さて、医学部で授業をすることは楽しく、若い学生さんの勉強したいというエキスを吸って色々と人生楽しんでおります。例えば今年の、感染症チュートリアルでの感染症診断学と風邪のみかたの授業の回答を見て素晴らしかったので、シェアしたいと思います。
一般の方には、意外かもしれませんが、医師は臓器別に得意な領域を作って研鑽していくことが多いために、風邪のみかたを学生のうちに学ぶことはありませんでした。
(少なくとも僕らの時代は)
この風邪のみかたの講義は、毎年毎年、工夫して進化してきたのですが、今年の試験問題は、下記のように風邪の病態を考え、原因を考えて、鑑別診断を考えて、患者さんに丁寧に説明できる
というレベルまで期待して試験を作ってみました。しかしこの出来が素晴らしく、色々と一人一人チェックして(余力時間を使って3日もかかりました)学生さんの答えを引用させていただきました。
*注意:下記の答えは医学生さんが書いたものです。人間力が素敵ですね。このような実際の現場感覚を来年以降も試験に出し続けたいと思います。
記述問題
あなたは卒後2年目の初期研修医です。
特に既往がない62歳女性が37.8℃の発熱を主訴に夜間の救急外来に受診しました。症状は咽頭痛から始まり、軽度の鼻水、軽度の頭痛、膿性痰を伴わない軽い咳があります。あなたは咽頭の診察で特に問題となる所見が無く、下顎のリンパ節の圧痛が無いことを確認しました。
しかし、この患者は2週間前に孫が「溶連菌」であると近医で診断されたとのことで、自分も感染しているのでは無いかと心配し、抗菌薬処方を強く希望しています。
あなたは医師として(1)風邪とは病態的にどのようなものか、(2) Centor 基準、(3) 抗菌薬投与の必要性の有無とその理由について、実際の患者に説明するように論理的に説明してください。
(1)
風邪とは、鼻水、咳、喉の痛みや熱、頭痛、関節痛などが出る、ウイルスによる感染症です。ウイルスといってもたくさんの種類があって、例えばインフルエンザもウイルス感染症の一種ですが、もっと症状が軽くて放っておいても治るようなものをまとめて風邪と呼んでいます。今回のように全身色々なところに症状が出ている場合、風邪である可能性は高いと言えます。
(2)
お孫さんが溶連菌感染と診断されたということで、自分もそうなのではとご不安なのはとてもよく分かります。そこで、溶連菌の感染がないかを簡単に調べさせていただきます。喉の痛みを調べる際にはよくCentorスコアという基準が使われています。Centorスコアには次のような項目があります。
- 38℃以上の発熱があること
- 咳がないこと
- 喉のリンパが腫れていて痛いこと
- 扁桃腺が腫れて膿が出ていること
- 年齢が低いこと
これらの項目は、溶連菌による感染症で起こる症状と溶連菌に感染しやすい年齢を考えて決められています。これらの項目に2個以上当てはまっている場合、溶連菌に感染している可能性が高いのではないかと考えられます。今回の場合、この診断基準に当てはまっている項目はないので、溶連菌に感染している可能性は比較的低いと思われます。
(3)
とはいえ、ご心配に思われて「抗菌薬を」と言われるのも無理はないことかと思います。しかしお伝えしておきたいのは、仮に今回の症状が溶連菌ではなくウイルスによる風邪の可能性が低く、抗菌薬は全く効かないどころかむしろ体に悪い影響がでる可能性があります。
溶連菌のような細菌とウイルスは全く別の存在です。抗菌薬というのは細菌の体の特殊な構造を利用した薬なので、ウイルスを倒すことは基本的にはできません。また一方で抗菌薬は体の中の善玉菌も殺してしまうので、下痢などお腹が悪くなるような副作用が出ることがあります。他にも皮膚や腎臓、血液などに副作用が出ることもあります。
これが、風邪には抗菌薬が効かず、むしろ体を悪くする可能性があることが理由です。それゆえ、細菌に感染している可能性が低い場合は、むやみに抗菌薬を使うのをひかえる方が良いでしょう。今回は、Centorスコアの結果などから、溶連菌のような細菌の感染ではなくウイルスの感染が疑われるので、抗菌薬ではなく風邪に対する対処療法のお薬を使った治療から始めさせていただこうと思います。もし数日の経過で、症状が良くならなかったり、むしろ悪くなったりするようでしたら、再度診察・検査をさせて頂きます。ご連絡下さい。私はまだ研修医の身ですので、より詳しい先生に診ていただいて説明をしてほしいなどありましたら、何なりとおっしゃってください。