みなさまこんにちわ。
目下、診断エラー関連のオリジナル研究を同時に4つ報告するために日夜奮闘しております。
さて我が国でも診断エラーについての知識やその理解は相当普及してきたと思うのですが、
次のステージは”デバイアス”である思います。
診断エラーの原因としての認知バイアス(Cognitve bias)の除去やシステムエラーの回避が重要ですが、これは
もっとも難しい、認知バイアスをどのように減らすかの工夫についての論文です。
その名前は”SLOW tool”
日本語にすると 診断をする前に最後に一瞬だけチェックしよう!!
1 本当か?その理由は?
2 データを再確認しよう!何か足りないことは? 全て説明つくか?
3 もし反対の結果だったら?
4 最悪のケースは何か?他に何が考えられるか?
* O'Sullivan ED, Schofield SJ. A cognitive forcing tool to mitigate cognitive bias - a randomised control trial. BMC Med Educ. 2019;19(1):12.
これは下記のような背景からきています。
Slowing Down Availability bias, multiple
*これは焦っている時、またハッスルバイアスやMaslowの法則などの判断をしようとした時に有効だと思います
S – Sure? Overconfidence bias, hindsight bias
L – Look /Lacking/Link Multiple
O – Opposite Anchoring bias
W – Worst-case Scenario Search satisfying
特に僕が今行なっているStudyの中でも自信過剰バイアスover confidence bias, 確証バイアス confirmation bias, Availability bias、アンカリングバイアス anchoring biasなどはかなりコモンでしたので、確かにこれらをデバイアスするための戦略提案としてはもっとも根本的かつ簡単であり、良いかもしれません。しかし、実際の臨床現場では有効であるかはさらに研究する必要があります。
こういうCheck list Intervetinon をPre-Postで組み込む時は、そもそもそのチェックリストの妥当性を評価せねばならずなかなか難しいところですが、一つの草案としてとてもシンプルで良いと思いました。
みなさま、こんにちわ。
早くも、筆頭発表3演題、Supervise1演題が終わり帰ります。
僕は極力自分のリサーチ結果などを論文にするために国際学会に発表して、国内の学会では発表をしません。学会に出て勉強という意味では、PubMed、Google Scholarの方がよっぽど短時間で多くの情報を手に入れることができると考えていたので、あまり得意ではないのですね。。
でも、学会に参加するということで、最近考え方が変わりました。。
一つは、同じような研究をしている人たちとの議論できること。独りよがりのアイデアをさらにブラッシュアップさせるためには非常に効率が良いと感じます。
二つ目は、Net Working作りですね。何より、国内、国外で同じようなテーマで頑張っている人が出会い、国際共同研究などに持ち込むなど、人との顔の見える出会いは最も大事な要素のように感じます。
三つ目は、その土地を知ること。実はワシントンDCは3度目にも関わらず、国会議事堂や有名な博物館なども一度も行ったことがなく(それはかなり問題だと思います)。もしかしたら人生で最後かもしれないと考えるようになりましたの、その土地の文化や歴史や、食事などに集中しようという風に考えるようになりました。
ということで、国際学会DEM13thへ向けて新しいアイデアを実施できないか検討中です。
そして今回の内容をすぐに英文誌に投稿したいと思います。
なんとあの月へ行ったアームストロング船長のホンモノのスーツ。
アポロ11の博物館のビデオに感動しました。
皆様 こんにちわ
春になり、年号も決まり、これから自分はどうやって行きていくのか、次の年号が変わる時まで自分は何歳になっているのか(生きていられるのか?)
よくわかりませんが、勤務医として激しい働き方をしてきた自分はそろそろ体にポロポロとほころびが出てきていますので、メンタルと体力と両方を運動しながらマネージしていかないといけないと決意しております。
さて、ドクターズマガジンの連載4回目が出ていましたので、こちらにも生原稿を転載しておきます。
しまねからこんにちは Vol. 4
「医者こそ、もっと寝せなさい!!」
暖かい春の日差しを浴びて、草も木も研修医もすくすく伸びる4月。ココしまねは、一年で一番の輝きを放っております。そして今月末から恐怖のゴールデンウィーク10連休。当直やオンコールから避けられない読者の皆様ならその恐怖が納得いただけるかと思います。自分の経験でも年末年始などの長期連休は他の病院・医師が休む時期であるからこそ、ジェネラリストの出番であると信じて働き詰めでやってまいりました。そう、「医師が不眠不休で頑張る事≠患者さんにとって良い事」という事実を認識するまでは・・。
僕はバンコクに留学前の1年間関東中の様々な救急告示病院で患者さんの不利益にならない限り断らずに救急車を受け続けると言う事をしておりました。今思えば、勤務して欲しいという需要に不眠不休でも精一杯答えることが医師としてカッコいいと信じていました。どこからか声が聞こえてきます「坊やだからさ。若さゆえの過ちと言うやつだよ」と(シャアアズナブル風に).自分は寝ていないと不機嫌になるし、判断に影響が出やすく、本当に苦い思いもしてきました。驕りではなく、1日8時間のみの勤務だったら絶対にしないような判断ミスも数多くしてきたのではと思います。
前回まで、診断エラーの学術的なことをお話してきのですが、今回はそのような働き方と診断エラーの観点からの小話を。色々な職種の人と交流も増え、某航空会社のパイロットの知り合いができました。彼曰く、それはそれは厳しい睡眠と健康管理が義務付けられているそうです。それはなんでも【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】であるからだそうで、当たり前の義務であり権利であると。確かに飛行機に乗ることが多い自分としてもいつもあの強風と雪の出雲縁結び空港にいつも安全に着陸させてくださり感謝です!そこで、ふと気づきました、【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】って・・・僕らじゃん!! と言うか、診断の付いていないド緊急の業務や処置をすることが多いまさに医師の仕事ではないですか!何故医師は睡眠をとらなくても許されるのでしょうか?では、寝てないことと診断エラーはどうだろうと疑問が湧きます。2018年にLancetから働き方改革もビビる際どい論文が出てました。34時間以上の連続勤務をしている医師は休みをちゃんととっている医師より460%も診断エラーが多く、また前日の睡眠時間が6時間に満たない外科医はよく寝た外科医の170%も手技での合併症を与える可能性が高いそうです。ゲゲっ本当ですか!?ここまで多いのですか!!でも、過去のやらかした思い出は決まって連続勤務中であったので、確かに自分の反省や経験と一致してしまいます。こんな研究もあります、医師が患者に与える有害性の研究など背景的にもできなかった時代にNEJM(2005年)から連続勤務と医師の交通事故に対する前向き研究の結果が出ました。ここでは24時間以上の連続勤務をした後は車の実際に衝突事故が2.3倍も高く、事故直前のヒヤリハットが5.9倍も高くなると。比較的複雑な思考過程を要しない車の運転ですら、明らかに当直明けは超絶リスクな訳でありまして(この車の事故も経験があります)、これが認知バイアスや感情や疲労などをもろに影響を受ける臨床と診断であればなおさら危険と感じます。そう、十分な睡眠と診断エラーは直結しているのですね。経験的にも、感覚的にも、数値的にも。
不安になられたた病院経営や医療安全に携わる先生方大丈夫です!! 米国でのパイロット(笑) 調査では、研修医に対して16時間以上の連続勤務を制限した上に、次の勤務の前に必ず8時間以上の休息を取らせるようにした結果、重大なアクシデントは20%以上も減り、また診断エラーに関しては1/4-1/6にまで減少したそうです。昔、体育会系のマッチョな指導医によく言われた言葉で「寝れる時に寝ておけ、食える時に食っておけ!」と言うものがありましたが、これはまさに診断エラーの観点からとても大事です。指導医の皆様、研修医が昼間に寝ていても、「こいつはデキる!医療安全を考慮して居眠りしているのだね」と褒めてあげてください。まさに【寝る子は安全】なのですね。
パイロットさんに対する飲酒や睡眠と安全性の話題も大事ですが、十分な睡眠も取れずに疲弊しまくっている臨床医をたっぷり寝かせる事はもっと重要かもしれないと思います。だって僕らの仕事は【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】なのですから。働き方改革が我々医療者にとって、そして国民の皆様にとってどのような展開を見せるか。これからくる新時代が楽しみでなりません。
1) A sleep prescription for medicine, Lancet. June 8, 2018 http://dx.doi.org/10.1016/ S0140-6736(18)31316-3
2) Extended work shifts and the risk of motor vehicle crashes among interns. N Engl J Med 2005; 352: 125–34
みなさま、こんにちわ。
春の空気が新鮮で、少しずつ自分もエネルギーが満ちてきております。色々大変なことはあるのですが、数年以内に道を開くと決意して。
さて、今月もDrマガジン記事をUPしておきます。よろしければ御失笑ください。
------------------------------------------------------
あぁ、少しずつ心が躍りだす出雲の春が近づくとともに、「いとしさと、せつなさと、心強さと」が交差して複雑な気分になる3月ですね。この時期どの指導医にとっても一番辛いのは、せっかく仲良くなった研修医(一生懸命教えた?)が、それぞれの道に向かって旅立っていくことかもしれませんね。もちろん自分も幾度となくそうやって送り出してもらってきましたので文句は言えないのですが。自分が送り出された側といえば、一番記憶に残っているのは恩師 徳田安春先生から両国の土俵があるちゃんこ鍋屋さんでの激励会です。「私の様に臨床・教育・臨床研究の3本柱をバランスよく指導できる人材になって欲しい」と、新渡戸稲造先生の【武士道】の書を渡されながら言われたのを思い出します(しかし未熟な自分にはいまだに何故、イナゾウ先生の武士道であったのかは未だに感得できておりません)。自分の様になんの才能も特技もない人間は、確かに地方国立大で実験や基礎医学の研究で世界レベルを狙うよりは、あまり着目されてこなかったニッチな領域を得意分野として、バランス感覚で勝負する方が逆に希少価値が出るのかもしれないと考えて今に至るわけです。だって、本来大学医学部の使命の3本柱は、臨床・教育・研究であると言われていますもん(研究と臨床はいいとして、教育は・・・頑張れ日本!
)。そんなこんなの理由があって、あまり着目されてこなかったこの診断エラー学の研究を赴任と同時に始めました。第一回、第二回はウラ診断学の話をしましたが、今回のテーマは【認知バイアスを乗り越えろ!】です。前回、将来的には偽陽性などのOver diagnosisなども含まれる可能性もありながら、現段階での診断エラーの定義は(診断の遅れDelay、診断の誤りWrong、診断の見逃しMiss)1であり、知識の不足と言うよりはちょっとした思考過程の歪みを起こす認知バイアスこそが原因の主であるとされるのでした1)。診断学の認知バイアスは欧米を中心に非常に注目されて研究されており、既に100以上の認知バイアスが提唱されています。
ここで架空の症例で分析して見てみましょう。今日は研修医である自分の送別会があり絶対に早く仕事を終えたい状況です。いつもの怖い看護師さんが勤務に入っています。慢性膵炎で繰り返し救急搬送歴がある飲酒中のホームレスの50歳男性が、16時45分(申し送り時間15分前!!)に腹痛を主訴に搬送されてきました。異臭もあるし、ひどい酩酊です。どうせまたいつもの膵炎だと考えてやや放置気味にしていたところ結局は大動脈解離の診断でありました。
さて、この症例。申し送り時間前というだけで強烈なバイアスになりえますね!「事件は会議室ではなく,申し送り直前に起きてるんだっ!」と声を大にして叫びたいです。この様な疲れや時間に焦っている場合は肉体的・精神的に一番楽に処理できる思考に引っ張られやすくなるというHassle Biasの影響を受けやすいです。もしかしたらアルコールやホームレス、搬送歴などの要因からこの患者さんに陰性患者を持ってしまった為に判断が鈍った可能性もあります。この場合は本能的感情で判断が左右されるVisceral Biasと呼ばれるバイアスが当てはまります。また前回の診断名を容易に連想したことによるAvailability Bias(想起しやすいものを考えてします)や、他の鑑別疾患を考慮することをやめてしまったPremature Closureと言うバイアスがあったのかもしれません。この様に、一つの診断エラーのケースでも深く分析すればするほど様々な認知バイアスが複雑に交絡かつ重複していることがわかりますね。ある内科医の集団を対象としたある研究では一つの診断エラーに対して平均6つ以上の認知バイアスの影響が関与していると報告されているそうです*。私がやっている臨床医の最も記憶に残る診断エラー症例を解析した研究でも概ね同様の結果が出てきております(論文化乞うご期待!)。自分のあまりカッコ良くない部分を振り返るのにはとても勇気が必要な作業ですが、臨床医としての実力をあげるためには自分の弱点を知る作業が極めて重要です。おっと、書いていて気づきましたが、もしかしてあの時、恩師が稲造先生の「武士道」を餞別にくださった意味は、プロとして自分を内観して成長せよということなのかしら。
■参考文献
Graber ML, Franklin N, Gordon R. Diagnostic Error in Internal Medicine. Arch Intern Med. 2005;165(13):1493–1499. doi:10.1001/archinte.165.13.1493
みなさま こんにちわ。早いもので、もう2月。
寒いです。毎日何かに追われているので、春がきたらバンコクに旅行に行きたいと(PC、メール、携帯全てOFFで)と切望しております。
さて、2月号のドクターズマガジンが出てましたので、こちらで原案を載せておきます。
-----------------------------------------------------------------------------------------
冬の出雲。地名はまさにその地の空気を表しているとはよく言ったもので、かなりお天気が悪いです。僕の基本スペックはオツムが少し弱く、ノー天気、極端な南国男の気質なので、この時期は春が音を立てて訪れるのをじっと待つ修行的季節です。さて、前回は診断エラー学の話で、周囲からもこの読者数○万という最大級の医師向け雑誌でついに陸の孤島しまねという地方からニッポンの何かに対して発破をかけ始めたと、勇気もらえるコメントを頂きました。ですので、今回はすべての医師が日常的に遭遇する診断エラー(診断の遅れDelay、診断の誤りWrong、診断の見逃しMiss)1と認知バイアスについて踏み込んで見ましょう。
臨床を頑張れば頑張る医師ほど必ず遭遇する診断エラーですが、できるだけ遭遇したくないですね。そう一番簡単な克服方法は、臨床から完全撤退すること!(ゴメンなさい!事実です)。現実的なレベルでは、自分の苦手な領域には一切手を出さないこと!がしかし、これもまた円滑な医療を提供するために、臨床を続ける以上は非常に難しい問題であります。しまねの様な日本の最先端を走る高齢化トップリーディングエリアでは遠く離れた場所まで高齢の患者さん達を紹介しまくるのも実質不可能で費用対効果が悪すぎます。
勉強したらいいではないか?!正論ではそうなのかもしれないのですが、それは表の診断学。それだけでは済まないのですね。そう、ここは裏側の診断である診断エラー学を学んでみるのが重要です。
何事も克服するためには原因を知ることから始まりますね。では、診断エラーに遭遇する原因をどのように考えたら良いでしょうか?一つの例として、3つの要因が絡み合って影響しているという考え方があります。これは医師のストレス、診療の時間帯、勤務形態、設備や人手などが原因であるとされる状況要因。次に過少(ないし過度も)の病歴・検査・診察などから得られる情報の収集過程とその解釈が問題があるとされる情報収集要因。最後に統合要因といって認知バイアスという直観(直感)が医師に与える強烈な負の影響などが複雑に相互作用していると考えられています2。特に最後の認知バイアス、これはもう今の時代 Must Knowです。これは2002年にダニエル・カーネマンが応⽤してノーベル経済学賞の受賞に結びついた「Thinking, Fast and Slow」の考え⽅が、近年臨床医の思考過程と診断プロセスを説明するのに応⽤されているものです3。速い思考のSystem 1=直観的診断と遅い思考のSystem 2=分析的診断がお互いに相補的に使い分けられながら的確な診断に結びついているのではないかと考えられています。例えば「突然発症の人生で一番の激しい頭痛」とくれば、クモ膜下出血を想起しますね。ベテラン医が瞬間的に下すこの直観的診断は⾮常に芸術的であるだけでなく費⽤対効果が極めて⾼いのでが、欠点として一度認知の歪みが発生するともはやその思考パターンは修正が難しく、その時の喜怒哀楽などの感情や、忙しさや疲労、環境要因などに強烈に影響を受けるために診断エラーに直結しやすいことがわかっています。このようにエラーに至る場合の直観を特に認知バイアス4と呼んでいるのです。これをお読みになっている先生方も臨床をやっている以上は、毎⽇この認知バイアスに多⼤な影響を受けているはずです。
我が国の医療安全の歴史を見ると、患者取り違え事件や消毒液混入などシステムエラーなどが熱心に取り上げられ対策の検討がされてきました。しかし僕が行なっている診断エラーの研究の一つ「本邦の医療訴訟3200判例の解析からみる診断エラー」5では、医療訴訟判例の多くで医師の診断エラーが関与しており、それらが与える社会的インパクトは極めて大きい事も分かってきました。それにも関わらずこれまであまり着目されてこなかったことからも伺えるように、なんとなく医療の臭いところに蓋がされて熟成するまで放置してきていたような気がしております。
誰しも自分のネガティブなところをなるべく見たくないと思いますが。自分がどのような時にその認知バイアスに影響を受けてしまうのか?自分はどのような時に診断エラーに遭遇しやすいかについて意識しながら臨床と対峙することはとても重要です。カッコ良くは無いですが、どうすればそれらを防ぎ克服することができるかについて内省するウラ診断学を学ぶのも、なかなか楽しく、実臨床に直結していて有用だなぁと感じています。
■参考文献
1) Graber ML, Franklin N, Gordon R. Diagnostic Error in Internal Medicine. Arch Intern Med. 2005;165(13):1493–1499. doi:10.1001/archinte.165.13.1493
2) Kahneman, Daniel (2011). Thinking, fast and slow (1st ed.). New York: Farrar,Straus and Giroux.
3) Bordage G. Why did I miss the diagnosis? Some cognitive explanations and educational implications.Acad Med. 1999 Oct;74(10 Suppl):S138-43.
4) Croskerry P, Singhal G, Mamede S. Cognitive debiasing 1: origins of bias and theory of debiasing. BMJ Qual Saf. 2013;22 Suppl 2:ii58-ii64.
5) Watari T, et al Malpractice Claims Related to Diagnostic Errors in Japan. 11th International Conference, New Orleans, USA. 10/8-11, 2018
こんにちわ
さすらいのホワイトプレーヤー です(嘘)。
年末年始・・基本はこれまで他の病院・医師が休むからこそのジェネラリストの出番のごとく働き詰めでやってまいりました。
インフルエンザ診療、感染症が好きな先生ほど、本当に辟易しているのではないでしょうか?
自分は寝ていないとあまりにも不機嫌になり、判断に影響が出やすいことを、救急を断らずに受け続ける戦国無双の修行期間に48時間連続ERなどをやっていて、本当に苦い思いばかりをしました。驕りではなく、8時間勤務だったら絶対にしないような判断ミスもいっぱいしてきたと思います。
当時のヤサ男の考え
頑張って勤務して欲しいという需要に精一杯答えることがカッコいい≠患者さんにとって良いこと
であることを知りました。当時はさらに正義感に燃えていたのですね。
若さゆえの過ちというやつですね。
さて、今回は診断エラーの観点からの小話を、、
パイロットの知り合いはそれはそれは厳しい厳しい睡眠と健康管理が義務付けられているそうです。
彼曰く、それはなんでも【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】であるからだそうで、当たり前の義務であり権利であると。
確かに飛行機に乗ることが多い自分としてもいつもあの強風と雪の出雲縁結び空港に着陸させてくださり大変感謝しております!!
そこで、気づきました。
【人の命を預かる極めて責任の重い仕事】って・・・
僕らじゃん!! 診断の付いていないド緊急の業務や処置をすることが多い、マジ僕らじゃん。直結しまくってるじゃん!
そこで思う訳です。寝てないことと診断エラーはどうだろうと。
2018年にLancetからオモローな【際どい】論文が出ました。1)
34時間以上の連続勤務をしている医師は休みをちゃんととっている医師より460%も診断エラーが多い!!
また前日の睡眠時間が6時間に満たない外科医はよく休養をとった外科医の170%もSurgical damageを与える可能性が高いそうです。
正気ですか?まじですか!?ここまで多いのですか!!
でも、自分のこれまでの反省や経験とすごく一致する・・・確かにそうかもしれません。
2005年当時はまだ医師が患者に与える有害性のことなどの研究ができていなかった時(文化があまりなかった時)に、NEJMから当直と研修医の交通事故の研究が出ていました。患者さんへの有害性は研究できないけど、医師の車の交通事故は研究できますもんね。また医師だって車の運転をするパイロットになる時もありますので、パイロットさんも36時間勤務とか連続勤務したらどうなるかという論文は探せませんでした(飛行機と車一緒にするなと怒られそう)。
これから見てもわかるようにExtended Work shiftの医師は車の衝突事故がOdds 比2.3も高く、ヒヤリハットの事故直前がOdds 比5.9も高くなります。
比較的複雑な思考過程を要しない車の運転ですら、明らかに当直明けはデンジャーな訳でありまして、これが認知バイアスや感情や疲労がもろに影響を受ける臨床と診断であればなおさらなかと感じます。そう、睡眠と診断エラーは必ず直結してます。経験的に、感覚的に、数値的に。
パイロットさんの飲酒や睡眠も大事ですが、本来寝ていない疲弊しまくっている臨床医をたっぷり寝かせる事がより命に直結していると思います。
働き方改革が医療者にとって、国民の皆様にとってどのような展開を見せるか。新しい時代が楽しみでなりません!!
こんな内容は、Dr's マガジンの「しまねからこんにちわ」の題材に持ってつけかなと思っています。乞うご期待。
1) A sleep prescription for medicine, Lancet. June 8, 2018 http://dx.doi.org/10.1016/ S0140-6736(18)31316-3
2) Extended work shifts and the risk of motor vehicle crashes among interns. N Engl J Med 2005; 352: 125–34
みなさまこんにちわ。医療の質・安全学会にお呼びいただいたのでお話ししてきます。
DEM 通信1