第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

こうすれば3音・4音が聞き取れる 小鳥タッチの重要性の考察

2019-03-21 10:14:11 | 総合診療

みなさまこんにちわ。

さて、若者によく相談されるのが、S3、S4を聴取することができない、聞き取りが難しいとのことを聞きます。

今回は、私なりの解釈で彼らが聞き取れない要点をまとめてみましょう。下記です(個人的な私見です)

 

ホワイトプレーヤー メソッド 

1 小鳥タッチはできているか?(もちろんベルです!!)

2 場所は正しいか?(心尖部、できれば視診でわかる心尖拍動の場所は最適!)

3 S1、S2の同定は確実にできているか?(脈を触れながらか、インチングテクニックを使用しましょう)

4 体位は適切か?(やや前かがみ、や左側臥位にするとぐっと聞こえるようになります、さらには息を軽く止めてもらい雑音を減少させると良いです)

5 Ⅱ音の分裂と鑑別できているか?(小鳥タッチからグッと抑えると明らかに消えるのは、確実にS3・S4なのです!)

 

あたりかと思います。中でも、相談されて実際に聴かせてみると実はココが全くできていないというポイントの第一位が小鳥タッチなのです。

当然ながら、ベルを用いて触れるか触れないか、隙間ができるかできないくらいの極限の力で、「まるで小鳥を聴診するように」聴くことが最も大事なのであります。意外ですよね?

でも学校ではならいにくい、いや習ったとしても臨床現場では全く忘れている大事なポイントです。

 

例えば臥位で聴診器自体の重さだけでも、S3・S4は消えてしまうような感じがわかってもらえるでしょうか。

また、もともと100Hzを下回るようなLow Pitchで低い圧のような・・音とも言えないような音をヒトの耳は聞き取りにくいようにできています。

なので意識的に聞き取ろうと集中することが当初は必要です。

なんとなく聞いていては、聞こえないので、S1の前に、S2の後にあるかを意識しながら聴く必要がでてきます。

チコちゃん曰く「ぼーっと、聴いてんじゃねえよ!」ってことですね。

 

英語のLとRを聞き分けるためには、自分の舌の使い方を理解して、初めて聞きわけられるようになるのと似ています。

つまり、この過剰心音は、S1、S2のタイミングや、その同定ができて初めてできるものです。ここを研修医の先生は理解されていません。

 

また、体位は左側臥位や座位であれば前傾姿勢にしてもらいます。また過剰心音が聴ける場所はもちろん、心尖部ですよ!! 特に、視診でわかるくらいの心尖拍動がある場合はまさにそこにベルの聴診器で、小鳥タッチをするわけです。

 

それでも聞こえにくい場合は、外来などの元気な方の場合は呼吸を一旦かるく止めてもらうと確実にそしてぐっと聞き取りやすくなるわけです。

またS3・S4を聴取したらそれが本当にS3・S4なのか確認する方法は簡単です。その場でベルをグッと皮膚に押し込むとトタンに聞こえなくなりますその場合は確実にS3・S4です。

また2音の分裂は場所と、息どめ、また上記の原理を用いれば分類可能です。やはり、その基本は、音への理解と細かいですが、上記の工夫になります。

なにより小鳥タッチの感覚なのです。

 

あまりPhysicalなんて全然役にたたないよっ!って上級医に教えられてしまうと、ほんとうにその後の若者の医師人生は習得しようとする情熱や機会が減ってしまうのが残念なのですが(ちょっと上の指導医のNegative impactは絶大なんですね)、

下記のMcGee 先生の本にあるように、 S3を聴取した場合ににはEF<50%の推定に役にたちますし、若者が好きなBNPレベル上昇の判断にもLR+10.1とめちゃ役に立ちますし、術後の肺水腫やMIなどの合併症なんても

非常に有用で、勿体ないです。

 

 

 

最近、大学にいるとあまり昔みたいに回診してオモロー体験をする機会がぐっと減りました。やはり、現場で研修医や学生と回診して【遊ぶ】のが大事だなぁと思います。

でも、人生はトレードオフなので、僕にはその分、全体のために自分がやるべき事を集中して今はやらないと(Physical教えるひとなんて他にたくさんいますもんね)。そして、全体のためにやらなければいけないことは、確実に自分のなにかと引き換えに完遂目指して実行しないといけません。結果を出さないといけませんので。

だから、こういうところに自分の秘めた思いを記載しておくことで、後で学生さん達にポリクリ中に見せるようにしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 


See one, do one, teach one. している研修病院。

2019-03-19 15:50:02 | 総合診療

みなさまこんにちわ。

先日は島根が誇るSee one, Do one, Teach oneの研修病院 益田日赤にてDelivery Education(デリエデュ:シモではない!)に行ってまいりました。

 
今回は、絶対聞けるようになる過剰心音S3, S4の聴取の方法でした。Low pitch の圧のような音は意識して訓練しないと絶対に聞こえるようにならないので(それさえすれば絶対にできるようになる)まず理解することが大事なんですね!
 
また島根県内の研修病院として人気がある益田日赤の研修内容をなぜ(熱心な人たちに)人気があるか、調べに行ってまいりました。
 

非常に感銘を受けたのが、驚くほど研修医の議論のレベルが高く(島根の英雄 岩田健太郎先生の書籍や盟友坂本そう先生の救急など熟読しており)、どちらかというと医師の臨床能力を高めるための基本の考えたを忠実にやっている印象でした。ここにおられる、指導医の岡本先生のジェネラルマインドの姿勢が本当に素晴らしく、さらには研修医への無限の情熱と愛を感じます。さらに驚くべきことに院長先生が(ふらっと)研修医室に訪れてこられて一緒に勉強されて帰るとのこと。。こうでなければいい教育はできないので、本当にカルチャーがあるのだなぁと、大好感を持ちました。
 
研修医の先生がメインにresponsibilityをもらいながら活躍している患者さん/疾患の層は幅広く、胆管炎、膿胸、肝炎、肝膿瘍、肺炎、Psycongenic problem、腎不全、高齢者の心不全などなど、非常に良い経験をされていて僕が育った環境にとっても似ていて嬉しかったのでこれからちょくちょく遊びに(こちらも本気で勉強して学びに参ります)行かせていただこうなと思いました。
 
 
懇親会は、イケスからとりだして、目の前でまだ動いている生きているイカの刺身が本当に美味しくて。。
 
 
昨今では、Spoon feeding(教わることが当たり前的な)とJumping education(一つの領域の手技に走って数年で専門的なことだけをしたい)という流れがあると思いますが、やはり最も個のレベルを高め、集団のレベルを高める方法はSee one, do one, teach oneであると思います。そう、大事なことはやはり研修医同士でおしえあうカルチャーであるのですね。そういう大事なことを再認識させられた夜でした。もちろん、Why?? How?? どうやって乗り越えるか?を考え続けて、自分で勉強できる姿勢が身につきさえすれば、研修医はどこまででも成長していけます。そういう若者を数多く見てきました。
 
ハーバード大学、スタンフォード大学、ジョンホプキンス大学などのDistant learningも山ほどあるし、無料のCoursera, Edexなどいくらでも勉強し放題です。
おそるべし現代社会。インターネットと質の高い分かり易すい医学情報がこれだけ溢れるようになった昨今、もうほとんど田舎に住むなどの地の不利はなくなってきています。
 
益田いいですね。本当に。
 
 
 
 
 
 

東京城東病院 春の大同窓会

2019-03-18 12:27:38 | 総合診療

この1週間は撮影や講演などの出張が多く、懇親会に出ることで書き物系の生産性が落ちてしまっていましたが、自分のメンターに会いまた人生を相談できたことで新しくモチベーションを頂きました。GCSRTの方はAdvanced Epideimiologyの選択コースとCapstorneという研究計画書のフィードバックを受けたものを直して明日までに再提出しないといけません

(診断エラーの研究を提出したら、中国の同期からこんな危険な情報取れないから意味がないとケチョンケチョンに・・落ち込む。
欧米では普通に研究されてるんだけど・・こんなん無理って言われても、アジアカルチャーでしょうか。)
 
思えば、このお店で一番最初に徳田先生と二人きりで、「東京城東病院に一人で行って総合内科を開始したら楽しいですよ!」
と強く強くご推薦をいただき(苦笑)、時々メンタリングを受けてました。
 
今や偉くなってしまった我らが志水太郎先生がリーダーとして来て下さり、この時期に今の自分の力となっている組織運営やチームビルディングのテクニカル的な重要なことをココで吸収し成長せていただいたと思います。
 
紆余曲折ありますが、そう考えればとかなり楽しかったし、今があるのは間違いなくここの思い出があるかのだろうと思います。
 
結論、やはり自分も師匠のように笑顔で後続を励まし勇気づけ(道なき道をススメ)、感謝して任せて見守れるような指導者になりたいと思った春の訪れでした。
 
 
 
 

選択必修でAdvanced Quantitative Methods in Epidemiology が始まりました

2019-03-06 00:00:03 | Harvard medical school

みなさまこんにちわ。

なんだかんだ、毎週の講演出張明けの毎週の当直と明けの初診外来・再診に、顔面に極端な疲労が見え隠れするアラフォーです。

さて、いろいろな試練や苦難はいつもなんとかヒーヒーいいながら乗り越えてきたのですが、2月今回はさすがに自分が全力を出しきれなかったことに

やや落ち込んでしまいました(お金の件です)。自分だけのことだけやればいいのでであれば楽だなぁと心の底から思ったり。

でも医師としての仕事や教育のためには頑張れるのですが、自分のためだけとかになるとどうにも後回しになってしまうので

そういうおせっかいで人のために時間を使ってしまう自分が嫌になったりならなかったり。。。

結論、再び立ち上がりました。この半年でいろいろと挑戦してGrantを集めに行きます。

さて、毎日の業務で流れてしまっていますが、いつのまにかGCSRTも架橋にはいり選択必修が始まってしまいました。

しかも楽しみにしていた表題のコースです。参考図書はありませんが、尊敬する津川先生のサイトが一番勉強になります!試験どころの一番の参考書です。

 

世界中をつなぐ全体の授業は3月イベントは下記のようになっております。

Sample Size and Power Calculations

Assignment Prep Work for Journal Club Webinar is not marked as done.

Casual Design Review Lectures 1-3

Journal Club

Causal Design Quiz (Lectures 1-3)

Capstone: Revised Proposal Due - NO EXCEPTIONS

 

それで、Advanced Quantitative Methods in Epidemiologyの授業は10コマ

Lecture 1: Introduction to Evidence Based Medicine
Lecture 2: Role of Observational Studies for CER
Lecture 3: Steps of Systematic Review
Lecture 4: Introduction to Meta-Analysis
Lecture 5: Clinical Practice Guideline Development
Lecture 6: Using Screening Results to Support Clinical Decision Making
Lecture 7: Introduction and Elements of a Decision Problem
Lecture 8: Structuring and Analyzing Decision Problems
Lecture 9: Introduction to Cost-Effectiveness Analysis
Lecture 10: Cost-Effectiveness Analysis

ですとのこと。

そろそろ本腰いれて、勉強していかねばなりません。いかんせん、人のためにあまりにもいろいろと引き受けすぎているので

やはり軽く受けてしまうのが悪いのですが、本当に大事なものを見極めて、緊急でないけれども、成長のために重要なことは最優先したい!と決意して。

今日は眠いので明日からがんばります。

 

 

 

 

 

 

 


しまねからこんにちわ Vol.3

2019-03-05 16:53:07 | 診断エラー学

みなさま、こんにちわ。

春の空気が新鮮で、少しずつ自分もエネルギーが満ちてきております。色々大変なことはあるのですが、数年以内に道を開くと決意して。

さて、今月もDrマガジン記事をUPしておきます。よろしければ御失笑ください。

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あぁ、少しずつ心が躍りだす出雲の春が近づくとともに、「いとしさと、せつなさと、心強さと」が交差して複雑な気分になる3月ですね。この時期どの指導医にとっても一番辛いのは、せっかく仲良くなった研修医(一生懸命教えた?)が、それぞれの道に向かって旅立っていくことかもしれませんね。もちろん自分も幾度となくそうやって送り出してもらってきましたので文句は言えないのですが。自分が送り出された側といえば、一番記憶に残っているのは恩師 徳田安春先生から両国の土俵があるちゃんこ鍋屋さんでの激励会です。「私の様に臨床・教育・臨床研究の3本柱をバランスよく指導できる人材になって欲しい」と、新渡戸稲造先生の【武士道】の書を渡されながら言われたのを思い出します(しかし未熟な自分にはいまだに何故、イナゾウ先生の武士道であったのかは未だに感得できておりません)。自分の様になんの才能も特技もない人間は、確かに地方国立大で実験や基礎医学の研究で世界レベルを狙うよりは、あまり着目されてこなかったニッチな領域を得意分野として、バランス感覚で勝負する方が逆に希少価値が出るのかもしれないと考えて今に至るわけです。だって、本来大学医学部の使命の3本柱は、臨床・教育・研究であると言われていますもん(研究と臨床はいいとして、教育は・・・頑張れ日本!

)。そんなこんなの理由があって、あまり着目されてこなかったこの診断エラー学の研究を赴任と同時に始めました。第一回、第二回はウラ診断学の話をしましたが、今回のテーマは【認知バイアスを乗り越えろ!】です。前回、将来的には偽陽性などのOver diagnosisなども含まれる可能性もありながら、現段階での診断エラーの定義は(診断の遅れDelay、診断の誤りWrong、診断の見逃しMiss)1であり、知識の不足と言うよりはちょっとした思考過程の歪みを起こす認知バイアスこそが原因の主であるとされるのでした1)。診断学の認知バイアスは欧米を中心に非常に注目されて研究されており、既に100以上の認知バイアスが提唱されています。

ここで架空の症例で分析して見てみましょう。今日は研修医である自分の送別会があり絶対に早く仕事を終えたい状況です。いつもの怖い看護師さんが勤務に入っています。慢性膵炎で繰り返し救急搬送歴がある飲酒中ホームレスの50歳男性が、16時45分(申し送り時間15分前!!)に腹痛を主訴に搬送されてきました。異臭もあるし、ひどい酩酊です。どうせまたいつもの膵炎だと考えてやや放置気味にしていたところ結局は大動脈解離の診断でありました。

 

さて、この症例。申し送り時間前というだけで強烈なバイアスになりえますね!「事件は会議室ではなく,申し送り直前に起きてるんだっ!」と声を大にして叫びたいです。この様な疲れや時間に焦っている場合は肉体的・精神的に一番楽に処理できる思考に引っ張られやすくなるというHassle Biasの影響を受けやすいです。もしかしたらアルコールやホームレス、搬送歴などの要因からこの患者さんに陰性患者を持ってしまった為に判断が鈍った可能性もあります。この場合は本能的感情で判断が左右されるVisceral Biasと呼ばれるバイアスが当てはまります。また前回の診断名を容易に連想したことによるAvailability Bias(想起しやすいものを考えてします)や、他の鑑別疾患を考慮することをやめてしまったPremature Closureと言うバイアスがあったのかもしれません。この様に、一つの診断エラーのケースでも深く分析すればするほど様々な認知バイアスが複雑に交絡かつ重複していることがわかりますね。ある内科医の集団を対象としたある研究では一つの診断エラーに対して平均6つ以上の認知バイアスの影響が関与していると報告されているそうです*。私がやっている臨床医の最も記憶に残る診断エラー症例を解析した研究でも概ね同様の結果が出てきております(論文化乞うご期待!)。自分のあまりカッコ良くない部分を振り返るのにはとても勇気が必要な作業ですが、臨床医としての実力をあげるためには自分の弱点を知る作業が極めて重要です。おっと、書いていて気づきましたが、もしかしてあの時、恩師が稲造先生の「武士道」を餞別にくださった意味は、プロとして自分を内観して成長せよということなのかしら。

 

■参考文献

Graber ML, Franklin N, Gordon R. Diagnostic Error in Internal Medicine. Arch Intern Med. 2005;165(13):1493–1499. doi:10.1001/archinte.165.13.1493