第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

SSCFCその3「浮腫」

2016-09-29 10:10:29 | SSCFC

皆様こんにちわ。

今回、久しぶりに映画を見にいきました。ハドソン川の奇跡です。医療者として超緊急時の対応などで自分の判断は良かったのか良くなかったのかの葛藤でいつも悩まされますが、まさに自分のジャッジでアウトカムが大きく変わる瞬間の緊張感は痛いほど共感しました。さて赴任して一ヶ月、趣味は走ってストレス解消をすることですが、子供たちを寝かしてから妻の許可を取って行く(申し訳ない!)映画館のレイトショーが唯一のリラックスタイムです。

 

さて、今週のSSCFC3は浮腫でした。診断を当てる事に着目するのではなく、診断の過程をわいわい楽しむカンファです。ちょっと今回のは難しく設定してあります。

次回の希望は「めまい」です。予習は不要。

 

【106A38、108I67、107D54、98A37】

50歳の女性が足の甲のむくみを主訴に島根大学医学部病院 医学生ミラクル外来を受診。

【主訴】足のむくみ

【現病歴】

2ヶ月前より、歩行時のふらつきと両側下腿の浮腫を自覚していた。2年前から慢性的な食欲不振と吐き気が出現し、この3ヶ月で体重が5kg現症した。複数の医療機関を受診し、貧血、自立神経失調症等の診断を受けて対処療法として鉄剤とベンゾジアゼピン系の抗不安薬を内服している。6ヶ月前に両下腿を中心に、温度や痛みなどの感覚が鈍い事と軽度の浮腫に気付いたが経過を見ていた。ここ数週間で浮腫が増悪して朝に改善を認めなくなった為に受診。

・追加病歴:

発熱・発汗は自覚していない。便の異常は認めていない。尿はやや泡が立つように感じている。ほぼ同時に両側下腿が浮腫んできた。また本人は気付かなかったが、一緒に来院した夫より本人の声が枯れてきているように感じた。旅行歴なし。性活動歴問題なし。

【職業】事務作業で日中はずっと座っている事が多い

【社会歴】酒・タバコなし

【既往歴】貧血?自立神経失調症? 手術歴無し。

【内服薬】鉄剤、抗不安薬

【家族歴】父親 結核、母親 糖尿病性腎症で透析、姉 肝硬変で他界

【現症】JCS0、GCS15、162cm, BW43kg、BT36.8℃、HR 80、BP 臥位110/74、座位102/60, RR18。

HEENT:口腔内乾燥なし、眼瞼結膜やや蒼白。眼球結膜黄染なし。やや舌が腫れぼったいように感じるが定かではない。

Lung:清明、心音:心尖部でLevine 2/6の収縮期雑音を聴取。腹部所見:腸音正常、

肝臓を肋骨弓下2横指触知。CVA叩打痛なし。全身のリンパ節は触知しない

四肢:両側下腿にfast pitting edema。脳神経:両側下肢遠位を中心に温痛覚の低下を認める。

【検査】

CBC:WBC 6000、Hb9.0g/dL、Hct27%、PLT25万

生化学:HbA1c 5.3、TP5.0g/dl、Alb 2.5g/dl、BUN 8mg/dl、Cre0.6mg/dl, AST 30I/L, ALT 20I/L, Na 142mEq/L, K 3.8mEq/L、CRP0.3mg/dL、CH50 35IU

尿検査:尿蛋白3+、糖-、潜血-、尿蛋白4g/ 

追加検査:何をしますか?

【胸部XP】心拡大なし、肺野清明

【心電図】低電位

【腎生検・直腸生検】Cong red染色で陽性


研修医とチーフレジデントとの仁義なき下克上レクチャー 開催します

2016-09-26 00:48:50 | 総合診療

皆様 こんにちわ。

私は色々とやることがあり、てんてこまいまいな毎日ですが、元気にしております。

出雲に引っ越してきて50日 2人の外国人を含む合計7人の友人が出雲に遊びに来てくれました。

で、次は大事な友達(後輩達)が出雲まで会いに来るとの事だったので、チャンス!僕は、ただでは生きて返しません。

何か熱いものを教えていけと言ったら、ボランティアでのレクチャーや講演を快諾くれました。

海外の医学部を出て、日本語の国試まで楽しく過ごした【黒船】宮内と、医学生時代からの友達イチローです。二人ともTalk too muchで飽きさせないレクチャーの達人です。

★日本との卒前教育の差や医学生の時点で実習中にもっておいた方が良い視点など普段聞けない役立ち情報満載です。一緒に勉強しましょう!


SSCFCその2: 恥ずかしがり屋の医学生対策 and 「発熱」

2016-09-21 11:45:00 | SSCFC

皆様こんにちわ。

眼がキラキラしている医学生勇士の為に放課後に週1(時に隔週)程度で縦割りの受験勉強ではない横割りの症候学(Shimane Symptomatology Clinical Fight Club)を行っています。

そんな中、いろいろと前から試してみたかった発言するのが恥ずかしい、人前で間違いたくない医学生の為にやっている方法があります。

・・KJメソッドです。かっこいいじゃないですか。KJメッソドという響き。実はカワキタジロウ先生からきています。

これは、3行の切り取れる紙があって演者が聴者に考えてもらいたい内容を30秒から1分程度でパッと書いてもらって

隣の人へ回す。そこからインスパイアされた人がそれとはまた違う事を書くなど、いわゆるブレーンストーミングができます。

しかも、恥ずかしがり屋の日本において極めて有用であることを自覚してます。

鑑別診断を挙げてもらう時などには本当に威力を発揮して、15人も人がいれば、病歴だけで結果的には正診に導いている事が良くあります(検査の情報は不要で確認の為に最後に必要としています。検査偏重とは異なる実臨床に近いですね)

よって、一人だけの意見ではSystem 1 intuitive diagnosis(直感的診断)であっても、それを集合体におけるSystem 2 analyteic diagnosis(分析的診断)を加える事でかなり診断に短時間で近づく事を体感するにはもって来いの方法です。

診断学的に言えば、System3という方法も兄者から唱えられておりますが。それは実臨床現場ではバズーカー並みの威力ですが、こういうカンファでは使ません。

Shimizu T, Tokuda Y. System 3 diagnostic process: the lateral approach.International Journal of General Medicine. 2012;5:873-874. doi:10.2147/IJGM.S36859.

ということで、恥ずかしがり屋の日本の医学生対策T・Wメソッドといって勝手にやってます。

双方にWin-Winの方法だなぁと以前より感じております。

またすべてその場その場で話す内容は変わりますので、その時に不明だった、わかっていない、わからなかった、知りたかった、次回知りたい、などなどを必ずメモしてもらい、いずれこれをまとめて単なる国家試験を解く(キーワードを見つけて正解を選んでいく)という勉強以外に医学生が本当は知りたいけど日本で医学生向けに注目されていない臨床教育などを発表していきたいと思っています。

 

医学生の質問集、それは未知なる領域の、夢の宝が満載です。

 

【104I47、101A19、99G20】 SSCFC Vol2の解答

45歳の男性が島根大学医学部病院 医学生ミラクル外来を受診された。

【主訴】発熱、倦怠感を主訴に来院

【現病歴】

2週間前から倦怠感、食欲不振と発熱を認めていた。1週間前から右手関節と左膝関節に痛みを感じるようになった。発熱は夕方から夜にかけて認めており、寝汗を書くこともあったという。吐き気や嘔吐はなかったが、食事摂取量は普段の半分位に落ちており、体重も4kg減少したとの事であった。

・追加病歴:海外旅行には行った事がない。性交渉歴は特に問題がない。職業は事務職。生食歴は特に問題が無い。数ヶ月前より忙しくて、皮膚科に通っておらず、アトピー性皮膚炎が増悪していた。丁寧に問診をすると、そういえば1ヶ月前に歯科治療を受けたが特に問題は無かった。周囲に同様の症状はいない。

【社会歴】酒・タバコなし

【既往歴】アトピー性皮膚炎

【内服薬】なし

【家族歴】父親 結核 

【現症】JCS0、GCS15、170cm BW 72kg、BT37.8℃、HR 90、BP 130/64、RR18

HEENT:口腔内乾燥なし、眼瞼結膜蒼白は無いが赤い小斑点数個あり。

Lung:清明、心音:心尖部で最強点Levine 4/6の収縮期雑音を聴取。腹部所見:右CVA叩打痛あり。四肢:左手関節と右膝関節に熱感、発赤、腫張を認める。皮膚・四肢伸側に重度のアトピー様所見、一部掻爬により出血あり。

【検査】

CBC:WBC 10800、Hb13g/dL、Hct36%、PLT35万

生化学:TP8.0g/dl、Alb 3.7g/dl、BUN 16mg/dl、Cre0.8mg/dl, AST 30I/L, ALT 20I/L, Na 135mEq/L, K 4.3mEq/L、CRP6.2mg/dL、


追加検査は何をしたいですか?

血液培養:未着

ESR(赤沈)68mm↑、RF因子陽性、抗CCP抗体陰性

【胸部XP】心拡大なし、肺野清明

【心電図】正常所見

【心エコー】別紙参照


指導医ということ

2016-09-12 12:50:07 | 総合診療

 皆様こんにちわ。

悩めるパッション上級医です。なぜ上級医をという言葉を使っているかというと、今まで勘違いしていました。

国が定める指導医という定義(もちろんいろいろな学会が色々な指導医を自由に作っていますが)では、厚生労働省医政局長から、医師の臨床研修に関わる指導医講習会の開催指針にそって行われた講習を全て修了した人を初めて臨床研修指導医と呼ぶということを初めて学んだのです。

今回はそのワーキンググループをなどを通して学んだ事を、つらつらと自分が思うままに思い出として書いておきます。

 

当初から3日間も参加することに心の重苦しさを感じていた指導医講習会でしたが、私が参加した会は緊張をほぐす為に自らが参加し能動的に学ぶ為に、多数のグループワーキング、シミュレーション、ブレーンストーミングが用意されて工夫されていました。個人的に午後の【眠くならないレクチャー】と【フィードバックの方法】の講義からの学びは多かったです。

 

医師は大なり小なり教育に携わっており、認めると認めざるとも言わず指導医的な仕事は多分にしている事がおおいものです。普段忙しい診療の合間で研修医の需要と我々が与えるべき供給のバランスを考える事はまずありません。

研修医はConsumer(消費者)であり、よりよい学びを求めております。自分の若い頃もそうであったと思います。

では何が、そのバランスを崩す原因となるかにつていは、教える側と教わる側のギャップがあると思います。

例えば、教える側はその分野の興味が強く、自分の知っている事は重要であると感じ、その全体像を把握しており、全てを教えたい傾向にあります。

逆に教えられる側は、その分野への興味はまちまちで、重要性が分からず、全体像がまだ見えていない為に、要点だけをわかりやすく学びたい傾向にあります。

このギャップは極めて大きく、これを理解しないとスレ違いの恋愛へ発展する事が確実視されます。 

今までの経験から、研修医が求める学び(臨床・研究・教育いずれでも良い)ができる指導医が在籍する場所には自然とと若い人材が集まってきているように(活気とでもいいましょうか)感じてきました。多くの皆様も実感されることではないかと思います。

例えば、消費者が自分たちの作った自信満々のチョコレートを買わないからって、消費者のせいにしていては建設的な将来性のある仕事はできません。やはり需要供給曲線の一致、つまり『神の見えざる手』が働いていると感じます。提供者側が需要を見抜く力が今後の淘汰されるかされないかのキーポイントになるかと思っています。

当たり前過ぎるくらい当たり前の事実であり、我々はその事実をないがしろにしすぎているのではないでしょうか?

例えばですが、短期間しか来ない医学生や研修医はお客さんでしょうか?(実はConsumerは試食して美味しいチョコレートは高いお金を払ってでも購入します)

自分達の科や病院に来てくれない研修医は本当にその科の研修に興味が無いのでしょうか?(もしかしたら当直時のコンサルトのポイントや、専門的手技以外の事はとても学びたいかもしれません)

私は最近では北海道や種子島などで勤務したりしていたので、全国的に全く同じような事を聞かれるのですが。。。

医学生が選んでくれない、人が集まらない、研修医が逃げていく・・・そのような言葉を我々が発しているのであれば、我々は自戒すべき瞬間、つまりは変革のチャンスだと思います。地理や立地、病院の古い良いなどのハード面は変更ほぼ不可能ですので、人・考え方・姿勢を変える事でチャンスを作るべきなのかもしれません。

家庭医でスポーツドクターの小林先生曰く、「スポーツでも勉強でも、人は、先人に教えてもらった事をそのままの教え方で教えようとする」傾向があるそうです。

サイエンスとしての医学がこれだけ発達している昨今で、サイエンスとしての教育学だけが昔のままであり、指導法も昔と全く変わらないということは理論上絶対無いはずです。

より良いものを柔軟に取り入れ応用していく事が今後の指導医として必要なセンスになるのかもしれません。

つまりは、若い世代の責任(やる気がない、年齢の差?)にするのではなく、おそらくは我々自身が変革の時であり、医学生や研修医が本当に求める教育や指導を再考し、自分をレベルアップさせる絶好の機会ということを、この講習会を通じて感じました。

最終的には、自分達の後続に人材が連なり、その人材がさらなる後続を自然に指導していく文化の構築。遠回りの様な気がしますが、一番効率の良い方法なのかもしれません。


Shimane Symptomatology Clinical Fight Club始めました。その1 「失神」

2016-09-07 08:22:34 | SSCFC

皆様 こんにちわ。

僕はのうのうと日本の偉大さを噛みしめつつ、若者と戯れつつ楽しんでおります。

さて、熱心な医学生達からどうしてもという依頼があり、症候学のワークショップ(一通りの主訴が終わるまで続く予定です)を業務終了後 放課後に特殊訓練??を行なう事になりました。

どうしたら、熱心な医学生を大事にして、さらに自分も熱心になれるか、またあまり医学の勉強に興味が無い医学生も巻き込んで行けるかなどもつらつらと考えながら、マーケティングの原理であり、【医学生の需要と供給を考える事】が一番大事だと常日頃思っております。

それは、今まで土日にボランティアで接してきた医学生達は熱心な人が多く、日曜日にわざわざ学びに来るような人達は、いわゆるSelection biasであったと思います。その経験から、下記の事を着目してみようと思います。

医学生が心惹かれる言葉・・国試の問題 →よって国試の長文臨床問題をそのまま拝借しケースカンファ用にModify

医学生が好むスタイル・・Interactive→よってホワイトボードのみと会話スタイル

医学生が好むアウトカム・・その後すぐに明日から使える→分からない事・知らなかった事を記載して持って帰る、できればその場でスライドや配付資料があると得した感がある?

医学生が好む難易度・・自分のレベルよりちょっと難しい→難しいことをユーモアたっぷりにシンプルに話す事につとめる

医学生に大事な内用・・試験に出る、理解が進む→病態・生理・薬理に注目する

医学生が好まない事・・人前で意見を言う→ここが一番難しく、雰囲気作り。

これらを、どうするか医学生勇士達と考えた上で自発的な勉強会

Shimane Symptomatology Clinical Fight Clubを始める事になりました。

略してファイトクラブ・・って、なんやねん。。神髄はやはり闘魂です。

合計18ー20数回になると思います。今後のいろいろな発展を考えて、問題症例のみを提示しておきます。中身は集めてまたどこか公的な場で発表できるかと思います。

------------------------第一回----------------------------------------

【107E58-60】Revised 

79歳の男性、施設職員と島根大学病院内医学生ミラクル外来を受診された。

【主訴】失神?ふらつきを主訴に来院

【現病歴】

・5年前に妻を亡くし、独居生活。隣町に住む娘が週に1回程度は様子をみにきていたが、数ヶ月前から徐々に物忘れが進み、金銭の管理、内服薬の管理が出来なくなってきていた。食事は給食サービスを受けていたが、服薬管理など心配した娘が3週間前から老人ホームに入所させた。以降は介護職員が食事と服薬等の管理をきちっと行なっていた。しかし、入所して数日後位から、起立時や歩行時によろめき落ちるようなふらつきが認められて心配した職員に連れられて受診となった。

・追加病歴:

・トイレから出て立ち上がってからその瞬間に意識がなくなるようなこともあったが、休んでいると1分以内に改善したような気がする。また食事中や、起坐位が長いと同様の症状を呈することもある。

・施設なので詳細はみていないが、排尿の回数、便の異常(回数・色・性状)、発熱や咳、痰などの症状なかった。

・内服薬は10年前から近医より処方を受けており、特に変わっていない。

【既往歴】高血圧:60歳、糖尿病:60歳、認知症 詳細不明 先月

【内服薬】利尿薬、β遮断薬、抗血小板剤、SU剤、ACE阻害薬

【家族歴】父親 脳卒中、 母親 糖尿病

【現症】JCS0、GCS15、165cm BW 67kg、BT35.8、HR 36、BP 128/64、RR16

HEENT:口腔内乾燥なし、眼瞼結膜蒼白なし。

Lung:清明、心音:S1,S2正常、心雑音なし。腹部所見:正常、神経所見:Barre徴候陰性、Rombergテスト陰性、指鼻試験陰性。

【検査】

CBC:正常 

生化学:血糖126mg/dl、HbA1c 6.5、TP7.0g/dl、Alb 3.8g/dl、BUN 18mg/dl、Cre1.2mg/dl, AST 38I/L, ALT 32I/L, Na 135mEq/L, K 4.6mEq/L Ca 8.2mEq/L

【胸部XP】心拡大なし、肺動脈拡張なし、心膜肥厚石灰化などなし、肺尖部に陳旧性炎症性変化

【心電図】

【心エコー】明らかな弁膜症は認めない、EF 65%、Asynergyはなし。

ということで、カンファの内用は:未公開

医学生諸君:あなたはこれからどこまで広く、そして深く考えますか? 

 

 


医学生・研修医の為の心音の聴き方

2016-09-05 23:18:16 | 総合診療


皆様こんにちわ。

先日は、当院総合診療科のI教授が放課後に医学生にボランティでイチロー2という心音聴診の体得ができるマシンを使って教えているのを拝見して、大変感銘を受けました。

今までは、実際の患者さんで所見がある人を、指導医から研修医と受け継がれるベッドサイド教育でのみ継承されてきた心音の聴診です。

そういう【秘技伝承的】なチャンスが乏しいと、心臓の聴診をしないままに、否、聴診すらしないように医師として成長してしまう可能性も秘めております。継続性が乏しく、指導する側に大きく依存する。それがベッドサイド教育の弱点でもあります。しかし、このイチロー2を使えば、ほぼ循環器フィジカルの所見は網羅し、並びに頸静脈波形まで出るのでクォリティーとリアリティが高く、医学生でも必ず、Ⅲ、Ⅳ音を理解して聴取できる様になると思います。

私もやや混乱していた内容をスッキリと説明されており、I教授のこういう講義を放課後にマンツーマンで聞けて、心音聴診を医学生の時代にマスターしていればさぞかし研修医時代は楽しかっただろなぁと思います。

私の今の夢の一つは、自分に関わる医学生・研修医の皆様のフィジカル力を挙げて、実際の診察を楽しんでもらうこと。勿論、何事もわかれば楽しいからこそ、分かる必要があると思います。是非是非皆さま足を運んで頂きたいと思います。

折角なので、心音聴診で自分が苦労した点やポイント的な事を転載しておきます。


医学生・研修医の為の心音の聴き方のミソ Dr Tari Ver1.0   以降:時間がある時に更新して行きます・


1 僕らは500-3000HZが聴きやすい。特に低い音は聞こえにくく(だからⅢ、Ⅳ音の聴診は難しく感じる、しかもベルを使わないと無理、膜だけの聴診では不可能)、Ⅳ音は50-60HZであるためにもはや訓練しないと聞こえません。英語の発音と一緒で自分が心音を真似ることが出来るようになれば、認識できるようになり耳に入ってくるのではないかと感じています。
 
2 ベル型➠低音成分の聴診に使い、膜型➠高音成分の聴診に。なので膜型は、胸部に圧痕がつくぐらい結構強めに密着。ベル型は隙間ができない程度に【ソフト】に押し当てます、ベル型のイメージ的には小鳥を聴診する感じで。これができないと3音、4音は聞き取れません➠ココを医学生・研修医の間に練習しましょう。
 
3 心音はⅠ、Ⅱ音と過剰心音Ⅲ、Ⅳ、クリック音程度しかありません。ごちゃごちゃ考えず、そして恐れずに。
 
4 Ⅰ音はM弁(+T弁)、Ⅱ音はA弁(+P弁)の音とざっくりと理解しましょう。つまり、心音聴診はⅠ音とⅡ音に始まり、Ⅰ音・Ⅱ音に終わります。
 
5 Ⅰ音は心尖部で、Ⅱ音は心基部2LSB,2RSBで聴きやすく音も大きい。この部位における音の違いを体に染み込ませる。Ⅰ・Ⅱ音の区別がつきにくい場合(脈が早い場合が多い)のポイントは脈を触知しながら!脈は必ずⅠ音と同時か、Ⅰ➠Ⅱ音の間に触れるはずです。
 
6   Ⅲ音とⅣ音を聞き分けられるようになる。勿論ココでも基本はⅠ音とⅡ音の関係が重要で、心尖部で丁寧にベルで評価すること。Ⅱ音前後の関係をみる➠オッカサンとオトッツァンですね、これは有名なので割愛。下記の図参照。
 
7 Ⅱ音の分裂とⅢ音の鑑別で迷った場合、自信を持って見抜く方法:Ⅲ音の場所は心尖部のみで聴取する為に他部位で聞こえたらⅡ音の分裂の可能性が高い, タイミングはⅡ音の後にある、ベルのみで聴取するすればⅢ音である。Ⅳ音も同様に心尖部、ベルを用いる。もっと確実にⅢ、Ⅳ音を聞きわけるには①左側臥位、②下肢挙上、③呼吸変動を利用する。
 
8 心雑音はざっくり理解すれば良いのです。Ⅰ音とⅡ音の間は収縮期、並びにⅡ音とⅠ音の間は拡張期でした。
次の2✕2テーブルで理解できます。クリアカットに①場所、②時期:収縮期、拡張期でざっくり鑑別します。
 
つまりは、雑音の最強点の場所とⅠ、Ⅱの同定を行った上で、収縮期、拡張期どちらにあるのかを判断するのみ。
 
 
9 心雑音の大きさを記載出来るようにする:つまりは外国語と一緒で他人とコミニュケーション取れるようにする。
ポイントは、Ⅳ以上はスリルがある事がハッキリとした境界となっています。なので触診が重要なのですね!
 
【Levine 分類(レバイン分類)】
Ⅰ:非常に弱い→微弱な雑音で、注意深い聴音でのみ聴取可能
Ⅱ:弱い→聴診器を当てれば即座に聴取可能
Ⅲ:普通→中等度の雑音で、明瞭に聴取可能。振戦は伴わない。
-----------------Thrillの壁と呼ぶことにする------------------------------------
Ⅳ:強い→耳に近く聞こえる強い雑音。振戦(thrill)を伴う。
Ⅴ:非常に強い→聴診器を胸壁から離すと聞こえないが、聴診器で聴く最も強い雑音。振戦(thrill)あり
Ⅵ:聴診器なしで聴取可→聴診器を胸壁に近づけるだけで聞こえる(胸にくっつけなくても聞こえる)。振戦(thrill)あり

留学先としてのアジア

2016-09-01 20:45:53 | 総合診療

出雲大国での初日。

色々な方にご挨拶に行きたいのですが、中々かなわず。個人的に見学させて頂いたシュミレーションセンターの巨大さにもはや民間病院では不可能な機材が揃えられており驚愕しつつも心踊りました。 

今後このようなシュミレーション教育の勉強や卒前卒後教育への応用とその研究も検討したいと考えPubmed と医中誌をみて見ました。アイデアが今後山程出てくると思います。今後ここでもその内容を写真で紹介したいレベルです。

さて、今日は色々な方に何故バンコク?という事を良く聞かれた為に、やはり正確な言葉で表現しておく必要があることを実感しました。以前のものになりますが、おそれ多くもメディカルトリビューン誌のエッセイに掲載して頂いたものを一部訂正してここに転載しておきます。

題名は【留学先としてのアジア】です。

https://medical-tribune.co.jp/rensai/2016/0529503634/

所属も新しくなったので、心機一転、昨年までの事を総括してみたいと思います。

過去には囚われず、されど未来を恐れず、このブログのタイトルも微妙に変更致します。

出雲的キャッチーなものが頭の中に浮かぶまでは(いや、出雲なので御降臨か?)そのままでいくとしましょう。

----------------------以下 メディカルトリビューン誌より-----------------------------------

初めて旅行で訪れたバンコクの街は、多種多様な人種と国籍が入り混じった国際都市であった。Mahidol大学臨床熱帯医学大学院で学び始める約1年前のこの日、不思議と僕はこの多国籍で熱気を帯びた街で勉強する事になるだろうと感じていた。僕の留学の理由は極めてシンプルだった。日本では診る事ができない希少疾患を診る事、多国籍な医師達と共に学ぶ環境に身を置いて競争をする事、臨床研究の手法を体得する事の3つだった。

 Mahidol大学はタイのランキングで1,2位を争う大きな学閥組織で、臨床熱帯医学の分野では卒後実務経験のある外国人医師に対するprofessional schoolがあり、歴史が長く好評を得ている。僕が参加したコースはDiploma in Tropical Medicine and Hygiene (DTMH)の6ヶ月間と、現在は引き続きMaster of Clinical Tropical Medicine(1年コース)に在籍中である。DTMHは主に熱帯医学の臨床的知識や技術の習得に特化しており、ミャンマー、カンボジア、フィリピン、バングラディッシュ等の熱帯地域のアジア諸国だけではなく、ロシア、イギリス、イタリア、ドイツ、オーストリア等の各国から集っており、まさにバンコクの街を象徴するかのような無国籍かつカオスな環境で研鑽が行われる。顕微鏡を用いた研修、臨床的なレクチャー、ケースカンファレンスやそれらの試験以外に、フィールドワークと病棟回診等が濃密に用意されてありミャンマーやラオスの国境付近での診療や情報採取なども行う。Mahidolの世界で最も優れた長所の一つは、自分の所属するHospital for Tropical Disease(300床)にデングやマラリア、レプトスピラ病といった実際の患者が入院している事だ。教科書を読み、講義で聞いただけでは定着しない知識や、五感で感じなければ体得できない身体所見や症状等は『試験の為だけの短期記憶』ではなく貴重なエピソード記憶として自分の脳裏に焼き付ける事ができた。回診で実際に患者を診察し、他国の同期の医師達と、毎晩酒を飲みながら一緒に学んだ経験は人生で代え難い貴重な時期になった。とりわけ、自分は日本人としてプレジデントという数十名の医師達のリーダー職を担う事になったが、その経験は文化と言語が全く異なる人間達と心底分かり合い仕事を一緒に進める為には、本質を見抜き、小さな事にはこだわらないという姿勢が大事だということを気づかせてくれた。

勿論海外において闘う武器は英語であるが、英語は単なる道具である事に変わりない。各国の医師が自信満々にそれぞれ独特のアクセントで議論している姿をみれば、発音が変だのと誰も気にしていない。その点、日本人の潜在意識下に存在する英語の発音に対する苦手意識は僕も含めて露骨に目立つ。だからこそ、ネイティブを主体とする場所よりは、このように様々な国から集まっている所の方が少なくとも日本人には向いており、またより面白いと思う。

 海外留学といえば、私もこの経験をするまでは北米や欧州が一般的だと思っていたが、まさかのまさか今後の時代はアジアにあると思うに至った。食事や文化が近く体調面も維持しやすく、生活費も安くまた日本食チェーンも多い。医局派遣で行く研究留学も確かに良いのではあるのが、目的が明確かつ可能であれば、入学して卒業するまで色々な国の医師と切磋琢磨し、実際に競争をして学ぶのも悪くないと感じている。最後に一番悔しかった経験を述べると、日本の医学部を出た医師よりも、インドやフィリピン、シンガポールなどで学んだ医師の方が実臨床において世界的に評価が高く、また実際に通用する実力を持っている事であった。それは仮に各国の研修医や医師を連れて一緒に回診すれば一目瞭然だろう、素人でも分かもしれない。日本国内では意外と思われるかもしれないが、どの外国の医師に聞いても感覚としてそう思っている事が日本人として辛い。実際に日本が誇る東京大学でさえ、世界からみればあの小さな領土の国立シンガポール大学(NUS)や中国の北京大学に世界大学ランキング等の評価ではかなわない時代であり、今後もアジア各国の追い上げと追い抜きは加速するだろう(勿論、単なるランキングではあるが)。

勤勉性とモラルに長けている日本人医師が今後世界の舞台で活躍する為には、高名な黒川清先生や我が師徳田安春先生が幾度も発言しているように、理由は何であれとにかく一回外に出て空気を吸って、外から自己を、そして日本という国家やシステムを自分の目で見つめなおす事なのかもしれない。自分自身の強みや弱みだけではなく、日本の研修制度や、研究スタイル、臨床技術においても、それらを明確に認識する事が長所を活かし、短所を改善する事につながると考えている。例えその留学先が、アフリカでも、南米でも、東南アジアという地においてでも、世界は若人へ門戸を開いている。