第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、出雲、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

Saying Goodbye to Lectures in Shimane Med-schoolなんちゃって。

2017-09-29 21:18:29 | 総合診療

みなさま、こんにちわ。

あまりにも出張や講演やWSやレクチャーや締め切りに終われる始末で、毎日眠くて9月はしんどかったです。

授業の準備も好きですが、本気でやると学会発表よりも真面目にやるので時間が取られます。

前回も書きましたが今の医学生はミレニアム世代であると言われています。

生まれたころにはインターネットがすでに開発され、思春期には携帯やスマホは当たり前、You tubeやネットサーフィンで欲しい情報を簡単に手に入れて学んできた世代に、200分も座って黙って聞くのは耐えられないと思います。

我々の時代とはそだってきた環境が違うからすれ違いは否めないのであります。

先行研究でもそのようなミレニアム世代に興味持ってもらい、自学自習を促すにはどうしたら良いか?

今回は、ミレニアム世代の裏手をとって自分のスマホとパソコンを自由に使って医学部一年生に煩雑な症例から診断を考えてもらう早期診断学実習を行いました。(なんと医学生のスマホ普及率100%でした!)

①まずは症例の情報のキーワードのリストアップを行います。

②そのキーワード達から考えられる鑑別診断を全て携帯・スマホで調べて可能な限り多く挙げさせる。

③その過程で少しでもわからない言葉や情報はをKJ法で100個以上集める。

④それを各基礎医学の領域(解剖、生化学、解剖、病理など)に分類してカウントする。

⑤自分たちは今、何がわからなくて、そしてその知識や技術はいつの授業で習うかを自覚し、今後の授業への取り組み姿勢を考える。

このようなことを実験的に行って見ました。

世界的にはミレニアム世代、日本ではゆとり世代と言われている彼らですが、誰一人寝ることなく、いやいやとてもとても熱心で眼が輝いている若者達です。

先行研究からはミレニアム世代には、スマホやインターネットをフル活用する。オーディオをビジュアルをフル活用する。インタビュー形式で授業を進める、そしてレスポンスシステムをフル活用する。

治療ではEBM,EBM言われて久しいですが。教育の世界でもEBE(Evidence based Education)を教員も学びながら実践していかねばならない、そう考えさせられました。

 

 

1) Saying Goodbye to Lectures in Medical School-Paradigm Shift or Passing Fad? N ENGL J MED 377;7 August 17, 2017 


医学部の教育

2017-09-13 08:50:57 | 総合診療

みなさまこんにちわ。

最近は月の半分も出張やお話の機会が続き体が疲弊しているのと、中々走れないのでデブまっしぐらです・・。

 

さて、本学の取り組みが日経メディカルの取材を受けてデカデカと愛する島根大学医学部の教育内容を紹介していただきました。

学内ではボスを中心に教育改革の機運も盛り上がり、熱心な仲間の先生達も数多くできました。

 

ブログをあまりにも更新していないので、今日は下記を添付する事で今の気持ちを代弁してみます。

If you have the evidence to show one treatment is better than the other, you would naturally use that treatment. So if we know that there are methods superior to lecturing, why are we lecturing at all?

これだけEBM、EBM と言われているのに、なぜEvidenceがある教育手法を本邦は取り込みにくいのか?この矛盾には苦笑いです。

自分の意見ではドイツの基礎実験医学を輸入した大講義制の呪縛であると思います。明治時代よりこの構図は全く変わっていません。これに関してはまたいつかここに述べます。


“What we know about learning in general is different than it was decades ago, our medical students are of a generation that has grown up differently when it comes to technology and the impact that has on their ability to receive and retain information.”1)

そして、ミレニアム世代の若者は今の大学の上層部の先生達の時代には予想にすらしなかった未知の学習スタイルでの学びへ急激に変化しています(インターネットやスマートフォン、ipadのようなビジュアル、音、大量の情報を集約して理解する)。なので、それに適した教育の質というのが問われる時代2)です。その12個の対策を練った読み物が秀逸です(日本の大学から取れなかったので、Harvard IDで読み放題)

 

1)Straumsheim C. Become a doctor, no lectures required. Inside Higher Ed. Septem- ber 26, 2016

2)David H. Roberts, et al. Twelve tips for facilitating Millennials’ learning, Medical Teacher, 34:4, 274-278, DOI: 10.3109/0142159X.2011.613498

 

日本で医学部の構造と教育システムが変わっていくには時間がかかります。

一つは日本の医学部の教員は極めて多忙である事(驚いたことに、自分の初期研修時代を超えます・・)。他国に比べて人数が少なすぎる事。教員の多くが実験医学の研究者である事。

数えればきりがないのですが、できない、難しい、誰が責任とるではなくどうすればできるか?それを考えることはやはり大事です。

 

持論では大講義を担当する教員一人が意識する程度で簡単に可能であると信念を持ってます。先週NEJM 3)からこういう文献が世に出ており援護射撃をくださり心から応援してもらっております。

【単なるレクチャーは死すべきか?⇨今のままであればそうであるが、ちょっとした工夫ができればイケる!】

So is the lecture dead? If “lecture” refers to the traditional picture of a professor standing in front of and talking at a large group of students who are passively absorbing information, then yes, we believe medical schools should be largely abandoning that teaching format. But if it describes largegroup interactive learning sessions with students who have prepared in advance, with frequent questions directed at the audience, time set aside for group discussion, and use of audience-response systems (to poll students on a question to assess for understanding, for example)

それは、クリッカーを用いたり、頻回の質問形式にしたり、スモールディスカッション形式にしたりする。

なんと、これはすでに本学赴任後に自分が大講義の授業の中で全部試行錯誤しながらtry and try してきたことです。

そう、ノウハウがあれば教員一人で出来ます。ただ、そういう教育をしたことがない、受けたことがない、見たことがないと中々難しいという感想も教員から聞きます。

Evidenceを用いるかどうか?信じるかどうかは全国のお悩みの大学教員のみなさま、自分次第です!

3)N Engl J Med 2017; 377:605-607August 17, 2017DOI: 10.1056/NEJMp1706474

 

大講義制の授業をするしかない環境でも、工夫することで学習効果を高めて学生が寝ない授業を行うのは可能である。

ということで、まとめますと明日はそのようなことを10分だけ話に病院総合診療医学会に行ってきます。