今日は大変勉強になる眼科救急のモーニングレクチャーをいただきました。これは、大学以外で当直などをしている時にきっと研修医の先生たちも実践的でやくにたつはず。渾身のレクチャーなのでレジュメをずっと復習していただきたいなぁと思います。
さて、研修医のO先生から質問をいただきました。眼の症状が主訴でなく吐き気だけとか、頭痛だけとかいうAtypical & uncommonなPresentationできた場合どうMiss or Wrong diagnosisなく急性緑内障発作を引っ掛けたら良いか?といった質問なのですが、極めて現場に即しているGood clinical questionです。急性緑内障発作は早期に的確に拾い上げなければならない眼科emergency 疾患トップ集団になります。
一般的には、Risk factor を考えると良いですね。診断学的に精度を上げるためには下記のところかと思います。
【バックグラウンドどしてこんな人が】
・ 家族歴
・年齢 >60 歳
・女性
・遠視?(この辺りの情報をRoutineで拾うことはない)
・内服薬 (コリン作動性、抗コリン、抗ヒスタミン、βブロッカー、利尿剤、 向精神薬、覚醒剤、ST合剤(まじスカ?! ) etc. などなど
・偽落屑症候群(pseudoexfoliation syndrome): 瞳孔縁や水晶体表面に白いフケ状物質が付着している状態(見ないですよね)
・人種:圧倒的にアジア人の疾患です(Euro, Africanは少ない、確かにドイツ人のER医の友達が見たことないって行ってました・・)
つまり、日本での診療では、頻度的にお婆ちゃん、時にお爺ちゃんが来院して
【こんなプレゼンテーションでやってきた】
激しい目の痛み or 頭痛 or 吐き気と嘔吐
でやってきた.
しかし、これは眼圧が急激に典型的に上がってきた場合であって、眼圧の上昇の程度でマイルドであった場合ほぼ無症状で来院する可能性があります(慢性閉塞隅角緑内障的etc)
なので、どうやったら急激な眼圧上昇とその周辺症状を医師は気づくことができるかをUpToDateからまとめました。残念ながら
#結膜の発赤に気づく→これはできる!
#角膜浮腫や濁りに気づく→これはできる!
#対光反射が鈍い中等度散瞳(4〜6 mm)→これも意識すればできる!
#浅い前房→ここを一般医が瞬間的に気づくことができるとは思えない
ということになります。
まとめます。
年配女性が激しい目の痛み や頭痛 や吐き気と嘔吐などで来院したら、鑑別の疾患の一つに急性緑内障発作を加えて、無料で早くできる結膜の発赤、角膜浮腫や濁り、対光反射の左右さなどをまず視る。
としてみました。
しかし、経験的にも、Typical なpresentationのAtypicalな疾患は簡単に診断がつくのですが、急性緑内障発作がどれくらい典型的でないpresentationでくるかがポイントです。そこを臨床家は知りたいですね。
例えば、このような先行研究がありますした*2。
In only 39.5% was the diagnosis correctly made by the referring practitioner and a misdiagnosis resulted in a mean delay of treatment of 5.8 days.
急性緑内障発作の診断の前に初診医がつけた疑い病名です
3年間で38例例の急性緑内障発作のうち診断が初診の時点での判断であっていたのは39.5%で、平均5.8日後に正確に診断がようやくついたようです。診断のが絞り込まれさらに症状が出揃いプレゼンテーションがはっきした人だけを診察する後医は名医とはよく言ったもので、プレゼンテーションが吐き気だけとか、顔面痛だけとか、頭痛だけとかの場合は極めて難しいようです(やはり上記のことを確認する姿勢で可能な限り0に近づけることが必要です)。
やはり吐き気だけ?や頭痛だけの時も急性緑内障発作であることがあるのですね〜(恐ろしいことに)、そしてその頻度はさらに低くなるでしょう。
ということでこの論文のまとめです。
"The presentation of acute angle closure glaucoma may be atypical”
研修医からの質問、一般医が典型的でない症状の急性緑内障発作をどうすれば見逃さないか?の答えに対して、典型的でないのが典型的と知っておくことかもしれません。
結論として、これはぶっちゃけて、経験とか勘とか、ピットフォールにはまらないための慣れというか、そういうトレーニング無くして厳しいと感じます。
ということで今日は、朝から素晴らしいレクチャーで学び深い内容でした。今から、心のふるさと湘南厚木にレクチャーに出雲から参ります。
*1 Acute Angle Closure Glaucoma, UPTODATE
*2 Misdiagnosis of Acute Angle Closure Glaucoma, Age and Ageing 1996:25:421 -423