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江戸時代においてすでに“予防医学”の考えを持っていた素晴らしい医師を描いた『赤ひげ』

2021年09月18日 22時25分01秒 | 映画


【個人的な評価】
「午前十時の映画祭11」で面白かった順位:11/14
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
時代劇
医療モノ
小石川養生所
黒澤明
三船敏郎

【あらすじ】
保本登(加山雄三)は、
幕府の御番医になるため、
3年の長崎遊学を終えて江戸へと戻った。
しかし、配置されたのは、
貧しく重い病に苦しむ患者たちが集まる小石川養生所だった。

所長の“赤ひげ”(三船敏郎)の下で働くことになった保本は、
ことあるごとに赤ひげに反発する。
だが、死を目前にした患者を前に
「現在我々に出来ることは貧困と無知に対する戦いだ。それによって医術の不足を補う他はない」
と語る赤ひげに畏敬の念を抱き始める―。

【感想】
「午前十時の映画祭11」にて。
1965年の日本映画。
黒澤明×三船敏郎のコンビ作品の最終作。

とにかく加山雄三が若い。
僕が物心ついたときにはすでにおじさんだったけど、
公開当時はまだ28歳。
メチャクチャイケメン。

185分と長尺(黒澤明監督の映画は長い多いけどw)で、
途中休憩入るぐらいだけど、
いやはやこれは面白い。

時代劇×医療モノっていうと、
『JIN−仁−』が思い浮かぶけど、
SF要素はないガチの時代劇。
江戸時代にあった小石川養生所という
貧困層の病院みたいなところが舞台。

ここで生活する患者たちや赤ひげとの交流を通じて、
長崎帰りの若手医師である
保本が成長していく様を描いたヒューマンドラマだ。

とにかく患者たちの経歴が凄まじい。
小さい頃に大人の男たちにイタズラされ、
男性不審になり、
発狂して3人殺害した女性(香川京子)。
妻の不倫相手の男が、
まさか自分たちの娘と夫婦にさせられてしまったという
末期の膵臓癌の六助(藤原釜足)。
付き合っていた彼女には実は相手がいて、
気づいたら彼女がそいつとの子供を産んでいたという
やるせない過去を持つ佐八(山崎努)。

すごいのはそんな彼らとの交流だけではない。
「経験になる」と言われ、
六助の死の瞬間を見届けさせられる保本。
さらには、麻酔のない時代の開腹手術で、
手足を固定されて、血が飛び、
腸が出てくる女性の姿も目の当たりにする。

他にも、遊郭でぞんざいな扱いを受けていた
12歳の少女おとよ(二木てるみ)との関わり合いなど、
今の時代では考えられない設定の数々に驚く。

しかし、長崎で医学を学んで調子に乗っていた保本は、
医療の現場を見て、
赤ひげのやり方や考え方を学び取り、
医療の何たるかを考えるようになる成長っぷりはすごく印象的だ。

また、赤ひげも赤ひげで素晴らしい医師である。
彼は体だけでなく、
心のケアもできる、
とても人情深いキャラクターとして描かれていた。
顔は怖いし、
ヤクザなこともしてるけど(笑)

しかも、江戸時代だから余計そうなのだろうけど、
「医術とは言っても情けないものだ。我々にできることは貧困と無知との戦いだ」と説く。
つまりは、そもそも病気やケガをしない環境づくりを念頭に置いているんだ。
まさに現代でいう“予防医学”といったところか。

ちなみに、この映画はちょいちょい笑えるシーンもあって、
そのひとつが赤ひげによるバトルシーン。
彼は腕っぷしも強く、
遊郭の用心棒たちをひとりでボコボコにしてしまい、
さらには相手の骨を皮膚から出しちゃうぐらいのダメージを与えているのが、
ちょっと笑える。
いや、強すぎだろって(笑)

現代の医療モノは救助や蘇生、
治療などの技術的な面を見せる作品が多い。
でも、それが満足にできない江戸時代、
またこの映画を作った1965年という時代だからこそ、
ここまでキャラクターを深掘りができたんだろう。

日本人なら一度は観ておいて損はない。

午前十時の映画祭11 デジタルで甦る永遠の名作

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