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真実を追うドキュメンタリーディレクターが真実を隠そうとする矛盾を描いた『由宇子の天秤』

2021年11月14日 23時27分49秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:119/242
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【要素】
ヒューマンドラマ
ドキュメンタリー制作
性犯罪

【元になった出来事や原作・過去作など】
なし

【あらすじ】
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追う
ドキュメンタリーディレクターの由宇子(瀧内公美)は、
テレビ局の方針と対立を繰り返しながらも、
事件の真相に迫りつつあった。

そんなとき、学習塾を経営する父(光石研)から思いもよらぬ
"衝撃の事実"を聞かされる。
大切なものを守りたい、
しかし、それは同時に自分の「正義」を揺るがすことになる―。

果たして「"正しさ"とは何なのか?」。
常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、
究極の選択を迫られる…。

ドキュメンタリーディレクターとしての自分と、
一人の人間としての自分。
その狭間で激しく揺れ動き、
迷い苦しみながらもドキュメンタリーを世に送り出すべく突き進む由宇子。
彼女を最後に待ち受けていたものとは―?

【感想】
なかなかにダークな雰囲気が漂うヒューマンドラマ。
真実を追い求める立場にある人が、
自ら真実を隠そうとする設定がおもろかった。

あらすじにもある通り、
この映画を観て思うのが、
"正しさ"とは何なのかということ。
ドキュメンタリーディレクターとして働く由宇子は、
当然仕事では真実を追い求める立場だ。
女子高生のいじめ自殺事件は、
その背景に亡くなった被害者が学校の教師と関係を持ってしまった事実がある。

由宇子は生徒側と教師側、
両方からの取材を元に、
真実をありのままに伝えようと奔走する。
彼女が言った
「どちらの味方にもつけないけれど、光を当てることはできる」という、
あくまでも中立を守ろうとする姿勢は、
ドキュメンタリー制作者としてのプロ意識を感じるところだ。

ただ、テレビ局側はより話題性を持たせたいのか、
編集の仕方に口を挟むのだが、
それは真実を捻じ曲げることになりかねない。
だから常々、由宇子はテレビ局と対立していた。

ところが、由宇子は父親からある事実を聞かされることで、
自身の「真実の追求」という姿勢に揺らぎが生じる。
他人のことに関しては、
あれだけ真実に対してストイックになれたのに、
いざ自分の身に降りかかると、
そうも言ってられない。

もし、父親の告げた内容が公になったら、
自分も父親も、
経営する学習塾も、
そこに通う生徒も、
由宇子の作る番組も、
それに関わったスタッフも、
みんなが不幸になってしまう。
真実を公表することによって失うものがあまりにも大きすぎるのだ。

ここはものすごく人間臭いところ。
他人に対しては、どれだけ偉そうなこと、
調子のいいことを言えても、
いざ自分が同じ立場になると、
途端に静かになってしまう人はけっこういる。
別に悪いことではない。
人間誰しも自分が一番かわいいから。
そんなことを嫌でも考えさせられる映画。

その流れの中で、
本作では"4つの衝撃"が待ち受けている。
いや、数は人によって違うかもしれないけど(笑)
暗く重く静かに進んで行く中で、
次々と発覚する事実から受ける衝撃は、
この映画の見どころかと。

あと、キャストの演技も素晴らしい。
特に、瀧内公美と光石研は、
いろんなドラマや映画で拝見しているけれど、
コメディな役もシリアスな役も幅広く演じられて、
好きな役者さん方です。

映画『由宇子の天秤』オフィシャルサイト

映画『由宇子の天秤』オフィシャルサイト

 


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