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ただのセールスマンが運び屋になる話だけど、ベネディクト・カンバーバッチの体を張った演技に圧倒された『クーリエ:最高機密の運び屋』

2021年10月10日 14時59分05秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:33/210
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
サスペンス
ヒューマンドラマ
キューバ危機
スパイ

【あらすじ】
東西冷戦下、米ソ間の核武装競争が激化。
世界中の人々は核戦争の脅威に怯えていた。
そんなとき、CIAとMI6のエージェントが1人の英国人に目を付けた。
その男、グレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)は
東欧諸国に工業製品を卸すセールスマン。

彼が依頼された任務とは、
販路拡大と称してモスクワに赴き、
GRUのペンコフスキー大佐(メラーブ・ニニッゼ)から受け取った
ソ連の機密情報を西側に持ち帰ることだった。
あまりに危険なミッションに恐れをなし、
ウィンは協力を拒否するが、
世界平和のために祖国を裏切ったペンコフスキーに説得され、
やむなくモスクワ往復を引き受ける。

だが、政治体制を超えた友情と信頼で結ばれた男たちは、
非常な国家の論理に引き裂かれ、
過酷な運命をたどることに―。

【感想】
これは、、、面白かった。。。
一介のセールスマンが突然運び屋を依頼され、
最後は捕まってしまう悲劇を描いた映画で、
ぜひオススメしたい。
MI6やCIAも出てくるけど、
ジェームズ・ボンドもフェリックス・ライターもいません(笑)

全然違う職種の人がスパイになる話ではあるものの、
コメディやアクションではない。
濃厚なサスペンスでありヒューマンドラマで、
しかも実話をベースにした話。
主人公のグレヴィルを演じた
ベネディクト・カンバーバッチの演技に脱帽だった!

舞台は1962年。
キューバ危機のときの米ソおよびイギリス。
キューバ危機というのは、
旧ソ連がキューバに核ミサイルを配備し、
アメリカと核戦争を起こしかねない一触即発の事態となった出来事。

それを回避するために、
秘密裏にソ連側の情報をリークするペンコフスキー。
そして、その情報を持ち帰るグレヴィル。
モスクワのツテを失ってしまったMI6とCIAは、
一般人ならバレないだろうとグレヴィルに運び屋を依頼するのが、
今作の始まり。

実話ベースの映画は史実から逸れることができないため、
淡々と進むことが多い。
でも、この作品は内容が内容なだけに、
常に緊張感を持って観ることができるんだよ。
しかも、そのスリリングな展開だけに終始しないのが
この映画のいいところで。
運び屋を担う上でのグレヴィルの心境の変化、
およびペンコフスキーとの友情もあってよかったんだよねえ。

グレヴィルは仕事も家庭も両方大事にする人で、
基本穏やかな性格。
でも、途中から筋トレを始めたり、
妻に激しく求めたり、
些細なことで子供を叱ったりと、
これまでの彼じゃない行動が目立ち始める。
それだけ、運び屋としての仕事がストレスフルで、
いつ家族と会えなくなるかわからない危険と隣り合わせってのが伺える。

また、ペンコフスキーとの友情も感動的。
ペンコフスキーが捕まった後、
MI6もCIAも彼を見捨てようとする。
「プロだからこそ、人は利用するだけ」と。
でも、現場で何回もペンコフスキーと交流してきたグレヴィルにとって、
それは人ならざる行為。
国同士は敵対していても、
そこに生きる人々みんなが憎み合っているわけではない。
お互いに平和を望み、
家族を守りたいという気持ちがあった。
だから、グレヴィルはペンコフスキーを救うために、
危険を顧みず、
それまで半ば嫌々やっていたスパイ活動を自ら志願する。
「今こそ俺を利用しろ!」と。

そして、この映画で一番注目したいのが、
収容所に入った後のベネディクト・カンバーバッチ。
彼はリアリティを追求し、
数シーンのために頭を丸め、
体重も10kg減らしたほど。

ペンコフスキーが西側にリークした情報は
実に5,000以上もあったそうで、
史上最大の情報価値と言われているとか。
史実なので言ってしまうけど、
グレヴィルは後に釈放されるも、
ペンコフスキーは処刑されちゃうんだよね。
平和を願ってのこととはいえ、
祖国を裏切ったことに変わりはないから、
彼の運命は当時としては仕方ないことかもしれないけど、
悲しいな。

ただの素人の運び屋が主人公という、
それだけで興味を引く設定ではあるけど、
それ以上のスリリングな展開と国を超えた友情が
素晴らしい映画だった。

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