怒りをあらわにする頼朝の袖をひいたのが、政子だった。
「あなたもかように、ひかれて、いまにおわしましょう」
おもえば、さんざんたるいきこしの袖をひいてきたのが、
政子である。
頼朝にとっての政子が
静御膳にかさなってみえたとき、
頼朝はその場所にもう一度すわりなおした。
政子にとって、
静御前の境遇は
また、己のものであった。
血を血で洗い、
義経をも、義経の子をも、
この世からついえた。
その繁茂のうえになりたった、
政子と頼朝でしかない。
泡沫か・・・。
つぶやいた頼朝の胸にあの日の政子の姿がよみがえってきていた。
政子だけが、頼朝の光明だった。
義経の光明が頼朝に小さな光をともした。
己が生きたことを照らし出す
政子の姿と
静御前の姿が
潤む光のなかで、ひとつにかさなってみえた。
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